26 / 46
頼もしき兄
しおりを挟む「羽美!」
「………お兄ちゃん!」
「早く乗れ!」
「うん」
会社へ迎えに来た航。
「警察行くぞ」
「…………うん……」
昼休憩中、航に連絡した羽美。
『晃司が、会社に来たみたい』
『何だと!』
『警察に連れてって』
『仕事終わる頃迎えに行ってやる』
それで、そのまま警察に直行するのだ。
「何でアイツが来るんだよ」
「分からない………後輩が言うには、会社には入れなかったからその子に話掛けてきた、て」
「でも、アイツ何でお前とその子の接点知ってんだよ、あのビルに何百人と居るだろ」
身体を震わせながら、羽美が考えられる事を口にする。
「スマホ買い替えた時、会社でたまに自撮りしてたのを見せた事あった記憶あるの………その子との自撮りもあったから……」
「記憶無くなる迄殴りてぇ……」
「暴力沙汰はやめてよ?」
「やるかよ、願望だ………煙草吸うぞ」
「禁煙は?」
「出来るか!」
航は羽美を悲しませる人間を絶対に許さない。航は学が無い分、荒れていた。その腹癒せで妹の羽美は虐められた事もある。それが航の怒りの矛先となり、虐めた者達へ制裁をしていた負の連鎖だ。
それからというもの、航は羽美のナイトに徹している。彼女も居たが、羽美が何事にも優先で長続きはしない。
『羽美を幸せにする男が現れる迄は、俺は結婚しねぇ』
と、口癖になっている。
だからこそ、今の彼氏の律也にも、警戒心が強い。
「で?………言ってあんのかよ、あの男に」
「あの男?」
「森本だか、速水だか、名前偽証の奴だよ!」
「理由ある、て言ったでしょ?名前偽証は……籍は速水だって言ってたんだから……仕事上の名前だけよ………律也さんにはまだ言えてない……晃司の事は少し以前に話したけど」
「…………何て?」
「特に何も………付き合った男が悪かっただけ、てぐらい」
「一応話しておけよ、逃げ場になるならな」
「…………お兄ちゃん……」
「会社の近くに住んでるんだろ?……ただその逃げ場だ!」
今迄の羽美の交際相手は年齢は羽美と同じ歳か、1、2歳差。だが律也は4歳年上で、航と同じ歳だ。それだけでも包容力も考え方も違う。航が見てもチャラチャラした印象は無かったのと、羽美が律也に本気だと見えたから見守るだけだ。しかも、社会的地位もあるのは確認している。
「着いたぞ」
「うん」
警察署に着き、ストーカー被害の件で担当と面会を求めた羽美と航。
「小山内 羽美さんね………接近禁止命令はそのままです」
「解除とか出来るのか?」
「勿論、解除になってませんよ…………出来ませんし……あれ?おかしいな……」
「おかしい、て何がだよ」
「お兄ちゃん、言葉遣い悪いよ」
「あぁ?大ッキライな警察署に来て、頭下げて被害届出しに来たんだ、それもまた来る羽目になったのが、どれだけ腹立つか分かるか!羽美」
「すいません、兄が……」
「ま、まぁ……今は真面目に料理人されてますから………ですが、取り下げたい、と相談あった、とありますね」
「「え?」」
羽美も航も身に覚え等は無い。
「そんな訳あるか!俺はそんな事しねぇ!羽美に恐怖心与えた男だぞ!」
「…………それは分かりかねますが……事実記載ありますので」
「冗談言うなよ………どれだけ禁止命令が出る迄我慢したと思ってやがる………殴りたいのも我慢して我慢して……やっと落ち着いたんだぞ………」
「取締は??」
「…………う~ん、話からでは会ってないのですよね……」
逮捕は難しい、とその一点張りの警察。最後迄、航は抗議したが無理だった。
「クソッ!公務員は頭硬すぎて嫌になるぜ……」
「私はお兄ちゃんが暴れなくてホッとしてるけど………」
「…………暴れそうだったがな……」
「駄目」
.•*¨*•.¸¸♬
「親父からだ………もしも~し………え?ビールと日本酒?何で、いつも配達あるじゃん、俺発注出してんぞ?」
父からの電話だ。
「は?…………何で配達切られんだよ!………取引も切られた?他の店は!………何だよそれ!」
「お兄ちゃん?」
電話を切る航。
「酒屋行って帰るぞ、羽美………」
「何があったの?」
「…………取引してた酒屋に取引切られたんだと」
「…………え?……まさか白河酒造?」
「…………そのまさか………何だ、羽美思い当たる事でもあるのか?」
「…………うん……とりあえず、白河酒造以外の酒屋さんで買って帰ろう、お兄ちゃん」
嫌な予感ばかり的中するものだ。白河酒造は羽美の両親の店を妨害してきた、律也の父勝真の予想を的中した。
「ちょっと、電話するね」
「何処に?」
「律也さん」
「イチャイチャすんなら、俺が居ねえ所でやれ!」
「違うよ!白河酒造の事は会社に関係してるから報告しなきゃ」
「…………何?」
「白河酒造は令嬢を、律也さんと結婚させたがってるの………業務提携の話もあるから……それには私の存在が、白河酒造には邪魔なのよ」
「…………金持ちのやる事はえげつないぜ」
「………もしかして……」
「まだ何かあるのかよ!」
「晃司の存在も知られた?」
「…………やめろよ……そんな憶測」
車の窓を開け、煙草に火を着けようとライターを手にした航が、空焚きして火をつけられない。
「だって……私を調べれば、晃司の事も分かるでしょう?」
「…………白河酒造がやったって言いたいのか!」
「わ、分からないけど………辻褄が………合うし……」
「呼び出せ!お前の彼氏!」
煙草に火を着けれないので、諦めた航は煙草を折って、車内に放り投げたのだった。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる