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土曜日の呼び出し
しおりを挟むその夜、拘束される様なセックスはなく、ただ律也に求められるまま抱かれた羽美。
夜が明け、カーテンの隙間から日が差し込む光で、羽美は目が覚めた。
―――幸せだぁ……
律也の腕枕でずっと支えてもらっていた様で、痺れてない筈はないのだ。抜け出そうと腕を退かそうと触れた。
―――起きませんように……と
「………はよ……」
「起こしちゃってすいません、律也さん………おはようございます」
「寝起きのぽやっとした顔……めちゃ可愛い……」
「寝ぼけてます?」
「いや?少し前に起きて、寝顔見てた」
恐らく、『幸せだぁ』と思っていた時だろう。
「………律也さん」
「ん?」
「幸せな夜でした」
「…………朝から頑張っちゃおうかな……」
「それは嫌です………朝の朝食が1日の元気に繋がるので、朝からダラけたくありません」
「朝の運動もいいと思うが?」
腕枕を外し、羽美の身体の上に覆い被さる律也は、暑くなるからか布団を剥ぎ、明るくなっていく寝室で、昨夜の名残りを弛緩する。
「………朝からエロい……」
「朝からスケベです、律也さん」
「男は皆スケベ…………」
•*¨*•.¸¸♬︎
「……………クソッ!何だよ!朝から!」
キスをされそうになり、羽美が目を閉じかけた瞬間、律也のスマートフォンが鳴る。まだ朝の7時だ。
「もしもし!何だよ朝っぱらから!」
『実家に今日来い、彼女とな』
「は?嫌だね!デート中だ!」
『一緒か?今』
「そうだけど」
『来ないなら、こっちから行くぞ、親父とな』
―――常務?
チラチラと、律也は羽美を見ているが、羽美がベッドから出ようと身体を起こすと、押し倒している。
「っ!」
組み敷きられ、胸を揉まれ、電話中なのにまた何をしようというのか。
「行きます!行かせて頂きます!」
「羽美!何を言うんだ!」
『………小山内さんだね、おはよう……朝から悪いが、律也と来てくれる?場所は律也が知っているから………律也、来いよ』
通話も大河に切られ、律也はスマートフォンを投げ付けた。
「羽美!何言ってんだ!」
「別に行けばいいのでは?1つの問題点が解消されるんですよね?その確認もした方がよくないですか?」
「…………面倒くさいんだよ……あの親父の相手は……」
またも朝の運動を2週も阻止された律也。
仕方なく、軽くシャワーを浴び途中ドライブスルーにより、朝食を済ます事になった。
「そういえば、羽美の方は今日の泊まりは何て言ってきた?」
「お母さんに彼氏の家に泊まると…………あの日にバレちゃいましたから」
「お兄さんは?」
「兄には話してませんよ………だって、反対してますから」
「…………やっぱりなぁ……」
「いつまでも子供扱いしてまいっちゃいます」
「いずれ、また挨拶に行くしかないな………とりあえず交際の許可だが」
だが、この関係は何故か始めから結婚がチラつく様な気がする羽美。律也もその話はしてはいないが、律也側からの圧が掛かりそうでならない。
閑静な住宅街に入り、一軒家に着くと車を門に横付けする律也がリモコンを操作し、門が開かせた。
「ようこそ、速水家へ」
ガレージに停まる車は、律也の乗る国産車は1台も無く高級外車が並ぶ。
「凄い外車がいっぱい」
「俺の車もあるぞ、乗ってみるか?」
「え………」
「左2台は俺の……その横3台は兄貴、デカイ黒塗りのリムジンは親父の」
「因みにこの車は?」
「中古で最近買った俺の……あのマンションに置いてたら盗まれるのがオチだからな」
車を降りると家政婦だろうか、玄関を開けて待ち構えていた。
「律也様、お帰りなさいませ」
「ただいま……親父と兄貴は?」
「居間に居られます」
「羽美、入ろう」
「お邪魔します……」
羽美は家政婦に一礼し、律也について行く。
経済新聞や英語で書かれている新聞を読み、律也の父、勝真と兄大河が座っている。
この居間という部屋にしては、吹抜けの天井に迄ある大きな窓、高そうな観葉植物が飾られていて、高級そうなソファで羽美は萎縮してしまう。
「ただいま」
「おお、律也………お帰り」
「お帰りじゃないでしょ、急に呼び出して」
新聞を折り畳み、テーブルに置く勝真と大河。
律也が大河の横に座ると、羽美も『ここに座れ』とソファを叩く。
「し、失礼します」
「まさか、律也の彼女が小山内さんだとはねぇ」
「まぁ、彼女仕事出来ますし、律也は目を付けるでしょう」
勝真も大河も、反対している雰囲気では無いようだ。
「部下にしてなくても、見つけそうだな」
「部下じゃなきゃ、引き抜いて自分の下にさせますよ、きっと」
「勝手に言ってろ………あのさ……何で俺の彼女が、小山内だと知った訳?」
律也はふんぞり返り腕を組み、勝真と大河を見比べる。
勝真は面白そうに、律也を見ていた。
「大河が秘書から聞いたんだそうだ。『森本係長が営業部秘書の小山内さんと会社の前でキスしてた』とな」
「で?親父の意見は?」
「ちょっと、時期尚早じゃないのか?律也」
「所沢 泉が居たんだよ……兄貴のパートナーの事で兄貴を強迫した」
「うん、それも知ってる」
大河がそれも確認済みの様だ。
「なら、何が時期尚早なんだよ」
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「…………何?」
「会食を誘いに来たそうだ、律也をな……約束も取り付けないからか、強行的に誘いに来たらしい」
「白河酒造と言えば、今業務提携の話があるんじゃ……」
「流石、小山内さんだね……その通りだよ」
「来たから何だよ………会っていても断っているさ」
大河は、勝真と顔を合わせる。
何やら良く無い雰囲気に変わった。
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