5 / 46
とある日の残業
しおりを挟む羽美が森本と付き合うようになって数日後の木曜日。
営業部でトラブルが発生してしまった。
先日、羽美が書類作成を手伝っていた高田のミスが発覚し、最終確認で森本も確認する事になっていたにも関わらず、高田が確認を森本に頼む事なく、取引先へ契約書を持って行ってしまったのだ。ミスが無ければ良かったが、そこにミスがあったからこそのクレームだった。
「すいません!係長!」
「俺に謝る前に先方に謝罪して来て!自分が担当なんだろう?契約書の新たな物は、他の者に任せ、先方に送る。今は直接謝罪して来る方が先だ」
不備があり、クライアントの望む物と違えば、電話での謝罪等は誠意が伝わりにくい。事、大きな取引であればある程、金は動く。利益を損する訳にはいかない。
森本は、高田に謝罪へ行かせ、フォローへと回る。
「は、はい!」
「誰か、高田と一緒に行ってくれないか?」
「係長、私も行きます……高田さんの契約書作成を手伝ってますし、内容把握してますから」
「小山内さん、頼めるか?」
「はい………斉木さん、留守頼むわね」
「了解です」
「頼む、小山内さん」
「行ってきます」
森本は会社内では態度は変わらない。分け隔てなく、羽美を部下として扱い、仕事に集中する。
―――やっぱり、私とは不釣り合いな気がするわ
月曜の午前中に、『付き合おう』と言われ、食事した後、濃厚なキスをされてから、特にこれと言って進展もない。
暫く彼氏が居なかった羽美も、急展開になるのは戸惑うが、本当に何も無かった。
連絡先を交換しても、月曜のあのデートの時だけで、この日は木曜日。羽美の乏しい恋愛経験談でも、交際に発展したら毎日の様に何らかの連絡はしてきた。『おはよう』や『おやすみ』そんな些細な事ではあったが、森本からは何も来ない。
ブブブブ………。
「!」
羽美のスマートフォンのバイブレーションでの着信。バックからスマートフォンを取り出すと、タイミングが良く森本からの連絡。
『高田と浮気すんなよ』
「………は?」
思わず、デスクでPCに向かう森本に目を向けると、クスクスと目を細めてほくそ笑む森本。
『冗談だ。終了したら連絡待つ』
羽美がおかしな顔でも向けていたのかもしれない。『浮気』すると何故心配したのかも分からず、森本を見たのだが誤解を生むような事もしていないのに、心外だという目を向けただけだ。
羽美は溜息を溢し、スマートフォンをバックに仕舞うと、デスクから離れて高田と共に、取引先へと向かった。
❆❊❆❊❆❊❆❊❆
取引先との件は長時間取られたが何とか穏便に済ませて貰える事となり、帰社すると終業時間になったからか、残業している社員以外は残って居なかった。
「お疲れ」
「ただいま帰りました」
「高田、報告を………小山内さんも仕事中断させてすまなかったね、急ぎの仕事が無ければ帰っていいよ」
「はい」
しかし、羽美のデスクには山積みされた案件が乗せられていて、任せていた仕事の最終確認やら、雑務が溜まっていた。
―――あ、明日迄の仕事が……斉木に任せていた筈なのに!
そのうんざり感が羽美から出ていた様で、高田から報告されている森本はフッとにやけた。
「………分かった、業務日報記載したら帰っていい……次からは気をつけて」
「は、はい」
高田がデスクに戻り、ひと仕事終えると、羽美の方へと行く。
「小山内さん、帰れる?今日のお詫びしたいんだけど、飯でもどう?」
「ごめんなさい、今日は無理です……斉木さんに頼んだ事がやれなかったみたで……」
「え?手伝おうか?前手伝って貰ったし」
「大丈夫ですよ、今日は高田さん疲れたでしょ?」
「いや、でもこれ処理するんだよね?」
「事務処理ばかりですから、大丈夫ですよ」
「高田、お疲れさん」
森本は『終わったら帰れ』と言わんばかりの威圧感を出すと、高田は渋々と営業部から出て行った。
―――あれ?コレ終わってる……あ、コレも……
上に積まれている物は終わってなかったが、20分程残業を進めて行くと、全部では無かった様だ。
もうその頃には営業部には誰も残って居らず、気が付けば森本も居ない。
「係長、帰ったのかな?一言言ってくれたらいいのに」
「帰るか、馬鹿」
「ひゃっ!」
項に冷たい感覚が走り、肩を震わせる羽美。
森本が羽美のデスクにエコバックを置くと、サンドイッチやおにぎり、サラダ等が入っていた。
「腹減ったろ?飯食いに行くと、そのままホテルに直行しそうだからな」
「ホテ……………何て事言うんですか!」
「お楽しみは明日に取っておく」
「………買いに行ってたんですね……ありがとうございます、係長」
「…………羽美」
「はい?」
「『律也』と呼ばないと、お仕置きするぞ?」
「い、今会社じゃないですか!」
森本は、隣のデスクの椅子に座り、羽美の座る椅子を自分に向かせると、冷たいペットボトルの珈琲を、森本が羽美のスカートの中に押し込む。
「ひゃっ!」
「今は業務時間外」
「で、でも会社………っ!」
「関係無い」
森本は羽美の頭に手を回し、強引に唇を奪う。無理矢理舌で、羽美の口中に入り、上顎を這う森本。
「んっ!」
「…………」
森本はスカートの中に入れた珈琲をデスクに置くと、今度は手でスカートを捲り上げ、太腿を擦った。
「っ!」
キス中に言葉が出せる訳はなく、ただキスで酔うしか出来ないまま、とりあえず森本に抵抗しようと肩を押す。
しかし、森本はその抵抗が想定内だったのか、羽美の片足を自分の座る椅子の肘立ての隙間に突き刺して、太腿と挟んだ。向かい合わせて椅子がぶつかると、もう片方の足さえも、森本の座る椅子の肘立ての隙間に羽美の膝迄引っ掛ける。開脚された足は閉じる事が出来なかった。
1
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる