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しおりを挟む「ゆ、夢じゃなか…………った……」
あまり佑美にはいい印象は無かったルシフェルが、仁を眠らせて目の前に居る。
「孕んではいなさそうだ………こんな男だと分かっていれば、私は人間界に還さなかった………」
「は、外せない?コレ」
「外せるが、外したらアマリエは如何するつもりだ?」
「警察に突き出す!」
「監禁と拘束で?如何やって逃げてきた、と言われ、どう説明する気だ?鍵を探して外した方が人道的だ」
「鍵の場所が分からないの」
「それなら、その中にある」
「え?」
ルシフェルが仁の鞄の中に隠し持った鍵を見付けていた様だ。鞄は佑美も取れる場所にあった為、仁の鞄を漁る佑美。
鍵を見つけると、佑美は鍵を外し、直ぐに服を着た。
「な、何で分かったの?」
「思考が詠めた………私は、この男に乗り移ろうと魂を同化させるつもりだったのだ」
「な、何故そんな事………」
「アマリエと生きるつもりだからだ」
「は?」
「天界人ではない今のアマリエは、私とは兄妹ではない。結ばれてもいい………だから、アマリエが大人になるのを待っていたのだ」
「…………い、いやいや………あり得ないから!」
一難去ってまた一難、とはまさにこの事。
夢ではなかった事の安堵と共に、佑美を助けたのはシュゼルトではなくルシフェルで、ルシフェルもアマリエの魂を持つ佑美を手に入れようとしていたのだ。
「そんな事はない。アマリエは私と結ばれる運命なのだから」
「あ、アマリエって貴方の妹でしょ!私の前世の記憶が完全に蘇ったら、如何するの!」
「ならないよ」
「ならない?」
「私が術を解かない限りね」
「え?…………でも………断片的だけど……」
シュゼルトと居た時の森の中で、佑美は魂が震えた気がした。直感でルシフェルが兄だと。兄に対する言葉が、佑美に無い言葉が出て来た事がある。
「完璧では無かったのでしょう。大丈夫、私がまた深い術を掛けてあげよう」
「っ!…………嫌よ!そんな事をしたら、シュゼルトを思い出せない!絶対に嫌!」
佑美はこの場から逃げようと、ルシフェルから離れ、走り出した。
「レックス!」
「はい!」
「!」
すると、懐かしい声と共に、シュゼルトではなく、レックスに抱き抱えられた佑美。
その直後、大きな音が挙がると、佑美は数日振りに、見慣れた場所へと来るが、其処で意識が途切れてしまった。
その音が何だったのかは佑美には分からなかった。
力と力が衝突した様な音、そして佑美に対して、何か分からない術が掛けられた包み込まれた感覚。
遠く、果てしなく遠くに呼び掛ける声が、ずっとモヤが掛かり続ける夢に陥りながら、佑美の時は止まるのだった。
✦✦✦✦✦
一方のシュゼルト。
佑美を連れ去られてから、ただ手を拱いていた訳ではなかった。
ルシフェルの動向を監視し、佑美が人間界に連れて行かれた事も、直ぐに分かった。
佑美が幸せなら、シュゼルトも諦めよう、と思った事も数知れず、それでも諦めの悪い男だった。
佑美が住んでいたマンションで、佑美の居所を探っていたシュゼルト。
同行でレックスだけ連れ、ルシフェルを追った。
何故かアマリエの魂の気配が辿れず、ルシフェルだけを追わねば、見付からなかった。
「まだか!まだルシフェルは見付からないのか!」
「待って下さいよ、シュゼルト様…………俺だって必死なんす!」
ルシフェルを毛嫌いするシュゼルトは、ルシフェルの気配さえも感じたくないのだろう。
「み、見付けましたぁ!」
「連れてけ!レックス!」
それが、仁の住むマンションだった。
「ユウミ!」
「い、今隙ありませんよ!」
「何だ、あの男は!」
「俺に聞かないで下さい!」
裸のまま、佑美がベッドに座っていて、シュゼルトが知らない人間の男、仁が居る。
その仁を見据えるルシフェルをレックスが感知し、シュゼルトが見守っていた。
「何でユウミは裸で………あ、あんな姿で出迎えられたら俺だって抱き潰してやりたい!」
「煩いっす!シュゼルト様!」
そんな中、仁は佑美を襲おうとしていた所で、隠れていたルシフェルが現れ、佑美を助け出したので、シュゼルトもレックスを連れて、仁の部屋で気配を消して待っていた。
佑美がルシフェルから逃げ出したその瞬間、シュゼルトは佑美を助け出す為に立ち塞がると、佑美をレックスに任せたのだが、ルシフェルは佑美に何やら呪文を掛け始め、それを阻止しようと、シュゼルトはルシフェルを攻撃する。
「ユウミを逃がせ!レックス!」
「は、はい!」
「……………ぐっ……もう……遅い……シュゼルト……」
「ルシフェル!何をユウミにした!」
「……………い………言うか………貴方に………等………せいぜい…………悩み………苦しめ………」
「ルシフェル!」
ルシフェルは腹を抱え、膝まずき苦しそうにしている。じわりじわりと滲む鮮血は、シュゼルトがルシフェルに浴びせた攻撃だ。
助かるか如何か等、ルシフェルが治癒魔法を掛けない限り、シュゼルトには何方でもいい。
確認する気も無いシュゼルトには、もう1つしておきたい事があったのだ。
それには、佑美を犯した仁の存在。
シュゼルトがその仁を見た一瞬、ルシフェルは隙を付いて、その場から消えてしまった。
「しまった!ルシフェル!…………ちっ……コイツを放置しやがって………仕方ねぇな………悪いがお前、不能にさせて貰うぞ」
睡眠魔法を掛けられていた仁に、シュゼルトは恨みも込めて、性欲機能を不能にし、シュゼルトもレックスの気配を辿り、後を追った。
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