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しおりを挟む「ユウミ」
「っ!」
出られない部屋に来るシュゼルト。
佑美を守る為の部屋だと言うシュゼルトだが、監禁されているしか思えない。
「今日、俺を見つめてたよな?」
「目が合っただけでしょ!」
「…………まぁ、見つめてたでも、目が合ったでもいい………俺の都合の良い解釈するだけだ」
「こ、子供の姿で言わないで!」
この子供の姿のシュゼルトは、純真無垢な可愛いさがある。
それなのに、紡ぎ出す言葉は意地悪で、佑美を翻弄する。
「何だ?戸惑っている様に見えるが?」
「き、気のせいじゃない?」
誤魔化そうとすると、言葉が吃る。
「少しは思い出したか?」
「……………何故、そう思うの?」
「俺を前にすると緊張してるだろ」
「っ!」
「嘘が吐けないのは、転生しても変わらないな」
「それなら、元の世界に還してよ!」
「俺には無理だ」
「無理?」
「……………力が足りない」
そのシュゼルトの言葉が重い。
還して、と言えば還してくれるのか、還したくないのか複雑な表情をしていたシュゼルト。
それは、佑美の転生前のアマリエの記憶が佑美に無いからだろう。
「私………やり残した事があるの!」
「それは何だ」
「私には仕事があって、放置したくない!会社も無断欠勤だし!」
「カイシャ?カイシャって何だ?」
「会社は会社よ………働いて給料貰って、生活するの。食べる為に、生きる為に」
佑美には人間の世界を、暮らしを放置出来ない。恋人とも話合わないとならないだろうし、会社を無断欠勤しているのも不義理だ。
行方不明という扱いにはなってはいるだろうが、会社にも恋人にも心配されているだろう。
「必要あるか?そんな事」
「そ、そんな事………って………私には大事なんだよ!行方不明になって探されてる筈なんだから!」
「…………まぁ、そうだろうな……ユウミが住んでたあの建物をレックスが爆発させて、ユウミ以外の人間も紛れ込んだし、そいつ等は治療して還したが、お前は駄目だ」
「…………え?か、還る方法があるの!」
「っ!…………お、おい!」
還る方法があるなら還らせて欲しい佑美は、シュゼルトに詰め寄って、シュゼルトの服を掴んだ。
「お願い!還して!」
「俺はその方法を知らん!ルシフェルに頼んだ!」
「ルシフェル?て誰?城に居る人?何処に行けば会えるの!」
「ルシフェルは天界だ!此処には居ない!俺達を探してはいるだろうがな」
「探してる?俺達、て私も其処に入ってる?」
「…………ルシフェルの目的はアマリエ………あ、いや、ユウミだからな」
「私?」
「…………俺が連れてきたかったのはアマリエの魂だからだ。転生して、ユウミになった身体を人間界に還したいと言うルシフェル。還したくない俺………うわっ!」
佑美はそれを聞いて、勢いあまりシュゼルトを押し倒した。
「ルシフェルって人に会わせて!」
「嫌だね」
「お願い!」
「嫌だから嫌だって言ってるんだ!お前は…………アマリエはルシフェルに殺されて、人間界に転生させられたんだぞ!ルシフェルに!」
「…………こ、殺された……?」
「…………言いたくなかったが………ルシフェルはお前の兄貴だ………腹違いのな」
「…………お兄………さん……に殺されたの?私………」
佑美の力が抜けたので、押し倒されたシュゼルトは佑美から抜け出し、佑美を逆に押し倒して覆い被さった。
「俺が、お前をルシフェルに会わせたくないのが分かったか」
「……………な、何で私は殺されたの?」
「……………俺を庇ったんだよ」
「シュゼルトを庇った?…………じゃ、じゃあ……ルシフェルは貴方を殺そうとした、て事?」
「あぁ………そうだ」
「……………天界ってよく分からないんだけど……神様とかそういう類いの世界?」
「綺麗事吐かす奴等だが、案外薄情な奴等だぞ………潔癖で、他種を毛嫌いする…………アマリエにもな」
「わ、私は天界の人間だったの?」
「半分は…………」
「半分?」
「天王が人間の女とデキてアマリエが産まれた。ルシフェルとは母親が違う」
アマリエの記憶が無いから実感が湧かない佑美。
佑美としての家族はもう居らず、転生前の家族はまだ違う世界に生きていて、佑美は複雑な気持ちだった。だが、佑美は---。
「…………会いたい……」
「会わせたくないって言ってんだろ!」
「っ!…………い、嫌っ!今は………嫌ぁぁぁぁっ!」
シュゼルトにはこの話をしたくない理由がある。
アマリエの記憶が無いのに、植え付ける様な知識で佑美を困惑させたくなかった。
思い出しては欲しいが、佑美としての自我が強いままではアマリエが出て来ない。
同一人物として、アマリエであった事を思い出して欲しかった。
無理矢理、シュゼルトに唇を塞がれ、服を引き裂かれた佑美は、直ぐに身体が反応する。
「シュ………シュゼルトっ!……今はそんな………気分になれない!」
「濡れてるぞ?」
「っ!…………ち、違……」
「違わない」
子供の姿でも退かせない佑美。
魔界の王というだけあって、人間の身体の佑美では力の差があった。
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