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プロローグ
しおりを挟む『見~つけた………番い……俺の番い……』
とあるマンションの一室を一点集中して覗く、闇夜のビルの屋上。
その鋭い眼光は、カーテンの中の人影しか見ていない。
昂る鼓動、途轍もなく心の奥から湧き上がる感情。姿形は変われど、魂が叫んでいる。
その先の人影は、紛れもない番いだと---。
✦✦✦✦✦
「ふぁぁぁぁぁ………そろそろ寝よ……」
監視されている24歳のOL、佑美。
外から見られる事なく、カーテンは閉めていた。
闇夜から熱い視線も送られている事は勿論気が付きもしない。
低層階のマンションに住んでいても、そこは6階の高さだ。侵入者は入り難いだろうし、覗く目線の主は、道路を挟んだ先の高層ビル。
言うなれば、そんな存在を佑美は知る由もないないのだ。気が付きもしない。安心しきっている自宅だ。
部屋の明かりを消した、深夜0時。
その瞬間、高層ビルの屋上の主は、指を鳴らした。
『レックス』
『はい、此処に』
『今、明かりが消えたあの建物の住人を召喚しろ』
『全ての住人っすか?』
『…………1人だけだ!何を間抜けた事を……』
『す、すいません………ですが、俺はシュゼルト様が見ておられた部屋が何処か分からず……』
部下だろうか、命令した声の主だけではない、影は1人では無かった様だ。
主は少年の風貌で、部下は青年の風貌。
しかし、姿は人間とは異なる異形の姿だ。
『…………地上から……6つ上、左から3つ目の部屋だ………若い人間の女だ。失敗するなよ』
『此処は魔界ではないんすよ?ピンポイントで狙えるか如何か………』
『狙えるよな?』
『ゔっ………俺……使い魔なんだけど……シュゼルト様の方が確実………』
『何だって?』
『…………や、やりますよ……』
殺気がヒシヒシと伝わる眼光のシュゼルトにレックスがビビッている。それだけシュゼルトは恐ろしいのだろうか。
『魔界じゃないんだ………それに俺は今、本来の姿じゃない…………番いが居なきゃ戻れないんだ………やっと戻れる………何年待ったと思う』
『失敗しても知りませんからね』
『俺がするよりいい』
『……………いきますよ………』
『やれ』
レックスは高層ビルの屋上から、マンションの6階の佑美が眠る部屋へ、手を翳す。
手の前には大きな魔法陣が出来、マンションへと近付いて行くが、マンション付近で行き交う人間達には気が付かれてはいない。
『おい!的がデカいぞ!』
『……………集中させて下さいよ!魔界とは勝手が違うんすから!歪みが出て………ピンポイントが………』
『お、おい!そんなんじゃ、番いだけじゃなく他の人間巻き込むぞ!』
異世界の魔界という世界の住民らしいが、関係の無い人間を巻き込む気は無かった様だ。
シュゼルトは番いという佑美さえ手に入ればいいのだから。
しかし、レックスはシュゼルトが声を掛けた事で、集中が途切れ、マンションを何故か爆発させてしまう。
『レックス!』
『……………あ……すいません!シュゼルト様!召喚は出来た様ですが、あの近辺の人間も、魔界に送っちゃった様です………』
『アホかぁぁぁぁ!送り還せなかったら如何するんだ!』
『ど、如何しましょう………シュゼルト様………』
『……………天界にバレる前に、何とか還す方法を見つけるか、隠し通すか……』
マンションが爆発して、漸く大勢の人達に気付かれた。
パニックになる街。
そして、2人の魔界の人間。
『天界…………というとルシフェル………バレますって………だって、シュゼルト様は禁忌を犯して迄人間界に来て、番いを探してるんすよ?転生したアマリエ様を………』
『失敗したのはお前だぁ!』
『ひっ!…………命令したのはシュゼルト様じゃないっすか!アマリエ様が転生したのが人間界だって知ってから、いてもたってもいられなくなって、こんな事に………いいじゃないですか、アマリエ様に拘らなくても…………ひっぃぃぃ!すいません!すいません!すいません!』
口が災いの元になるレックスを睨み付け、召喚してしまった人間達の気配を探りを入れるシュゼルト。
『…………魔界に還るぞ、レックス』
『あ、あのままにしておくんですか?』
『俺達が如何出来るって言うんだ。間違って召喚した関係無い人間達を還す事が先だろ』
『…………全く………貴方は碌な事をしない………』
『!』
『…………ひ、ひぇぇぇ!もうバレた!………ルシフェルだぁぁぁぁ!』
『…………ルシフェル………お前、何で此処に来た……』
シュゼルトとレックスの背後から、現れた声もまた異形の者。
シュゼルトとレックスが闇が似合うとするならば、光が似合うルシフェル。
『貴方が、アマリエの転生者に気が付いたので、追って来たのですよ………罪ない人間迄巻き込んで………更なる罰が必要ですね』
『還す方法がありゃ、還す………それとも、お前は知っているのか?還す方法』
『何故、私が結果的に親切になる事を貴方にしなければならないのです?アマリエの事だけでも、腹立たしいのに………アマリエを忘れて下さい。でなければ、貴方の記憶を消去しますよ?』
『嫌だね…………アマリエは俺の番いだ』
『私の妹です』
『アマリエは天界を捨てた!もう、お前の妹じゃない!それに腹違いだろ!アマリエは人間と天界の!生粋の天界の女じゃない!お前と違ってな!』
睨み合うシュゼルトとルシフェル。その2人の間でただオロオロと見つめるレックスが騒ぎが起きている現場の上に居た。
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