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挑戦状
しおりを挟むサイファとシヴァは何度も地域を絞り、浄化をして回って2週間は経とうとしていた。
その間、浄化した場所を移動しながら、弔い残した死体を仲間達が供養していった。
「それにしても、シヴァ様とサイファ様は凄いな………こんなにも広範囲を次々と………シヴァ様、以前こんなに出来なかったよな?」
ノーマンは数人を連れて、死体が残されてないかを隈なく探している。
「カムラの力なんですかね?これも。」
「………だろうな……空気が美味い。森に生えてる果樹も美味くなったしな。」
「このまま、ここに住みたいですね~。」
「だな。」
そんな事を話ながら、日にちだけは過ぎた。
そんな折、シヴァが城に行く、と言い出す。
「そろそろ、ラファエロって奴の顔拝みに行ってくるわ。」
「は?」
「駄目ですよ!!シヴァ様!!」
反対意見多数だったシヴァ。
「まぁ、待て待て。戦いに行く訳じゃない。多分、あいつは俺達が追い出すつもりでいるんだと思ってる。現に、カムラ側から狭めているからな。」
「そう言えば、アルザス側があの森だけ……。」
サイファが思い出す。
西側から城を取り囲むように浄化し、アルザスに向う街だけ残したのだ。
「顔を出して、【お前が殺し損ねた、恋敵が復活してやったぜ】て見せに行くだけ。ジュリアナへの執着心から、俺への殺意を向けさせるつもりだ。ジュリアナは浄化した場所なら安心だからな。」
「一人で行かせないわよ!シヴァ!」
「勿論さ、行くのはアーヴァイン、サイファ………かな。身軽なノーマンも連れて行きたいが……。」
「俺行きますよ、浄化して頂いてますし、何について浄化したかは覚えてませんが……。」
「………………じゃあ試しに行ってみるか、城に……。」
「試し?…………何すかそれ……。」
「………いや…………ノーマン、俺かサイファから離れるなよ?」
「……………はい………?」
シヴァがラファエロに会いに行くのは翌日に決め、夕飯を食べた後、後は寝るだけだった。
シヴァは神殿の祭壇前で瞑想をしている。
サイファは神殿の声を聞かないようにしていた。
何故なら頭の中に響く声が鬱陶しいからだった。
サイファがシヴァに近付くと、気配で気が付いたのか、シヴァがサイファに声を掛けた。
「お前、声聞いてないだろう?」
「………うっ………。」
「慣れておけよ、お前もこの神殿を守る役目にあるんだ。能力を分け与えられ、俺達はこの地を代わりに浄化する役目を与えられた、大事な能力だ。あの死体だらけの森の中で暮らしていきたいか?」
「………え?ヤダ。」
サイファはシヴァの横に座った。
「俺が17年前、兄上から選択を突き付けられ、選んでない世界はあの光景だ。あの光景が全世界、何処に行ってもアレだと、誰が幸せになれる?」
「………兄上、てロートシルトのアレクセイ王?」
「…………意地が悪い男だったろ?よくいいように使わされたよ、道具を扱うようにな。」
クスクスと笑うシヴァ。
「でも、石の姿を見てる顔は悲しそうだった………。」
「そりゃ、弟も妹も石だからな。会いに行かなきゃな……。」
「兄が一緒なのに、親父と母様は兄妹じゃない、て複雑だな……。」
「………まぁな…………さて、寝るかな。お前は少し声を聞いとけよ。」
シヴァはそう言って立ち去った。
「おやすみ………。」
サイファは祭壇を見つめる。
神殿から頭の中に聞こえる声は変わらないが、久しぶりに聞く声は心地良かった。
(…………親父も心地良いから、毎日ここに座ってたんかな………。何か…………急に眠く………。)
サイファは眠りについた。
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