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残虐な残骸②
しおりを挟む「何か臭ぇ………。何の臭いだよ……。」
巣の岩場を時折洗練を受けながら、歩き進めたサイファ達は、洗練より悪臭に堪えられなくなっていた。
「………生臭いので、血と何かの死体でしょう………獣の死体なら良いですがね……。」
歩き進める度に、臭いが強烈になっていく。
イヴリース側ではない、アルザス側から臭う悪臭。
岩場を抜けると、森が広がり木々には木漏れ日が降り注ぐ。
「緑豊かな森なのに、何故こんなに臭うんだ?」
「………………ア、アーヴァイン…………あ、あれ………。」
「どうした?」
一緒に来た兵士の一人が何かを発見し、一同はその指した方向を見る。
ぴちょん……………ぽたっ。
木に打ち付けられた無残な人間の死体。
腸を抉られ、顔は涙の流れた痕。
血がまだ乾いておらず、木の死体は血の水溜りになっていた。
「うっ……………えぇぇっ!!」
何人も顔を背け、気持ち悪さから嘔吐する。
サイファもまた然り。
「む、酷いな…………。」
「生きたまま、木に打ち付けられたのだろうか………だが、臭いは彼じゃない。コレはまだ2日か3日ぐらい………おそらくまだありそうですね。」
「あ、あっちにもあるな………。後ろから仕留められてる………。アレもまだ新しい。」
アーヴァインやソロ、ドラドは平然と会話をしている。
見慣れているにしても、客観的な判断が、サイファには怖かった。
「な、何でそんなに平然と…………。」
「旅してると、獣肉とか捌くので、血肉は見慣れてるんですよ。麻痺ですね、麻痺。」
「臭いで何となくそうだろうなぁ、と思ってたので、覚悟してましたしね。」
サイファが何とか嗚咽を堪え、アーヴァイン達に聞くと、答えも平然だった。
「しかし、この状態は魔が集まりやすくなりますね………。浄化した方がいいのだが………ここは既に敵地、浄化したらバレますね。」
「…………だな、今は俺達の居場所は知られたらマズイ。」
「で、でもこの人達かわいそうだろ?」
「えぇ、かわいそうですよ。弔いたいのは山々ですが、もしコレが見せしめのような殺しなら、弔った【犯人探し】でまた同じようになりかねません。」
「ソロと同意見だな。先ずは、ネオフィールドのラファエロをどうにかしなきゃ、同じ事が繰り返しかねない。」
「………………。」
「サイファ様、我慢ですよ。シヴァ様もこういうのを許さない方ですが、状況判断でシヴァ様も我慢される筈です。」
「…………悔しい………。何でこんな簡単に殺せるんだよ………。」
サイファの悔しそうな顔を見るのはアーヴァインも辛かった。
「いい反面教師ですね、サイファ様。」
「え?」
「貴方が王になった時、貴方はこういう行為をしない、と心掛けてくれそうなので、安心です。」
「ま、こんな事するような君主なら、俺達付き合わないしな。」
「さぁ、長居は不要です、戻りましょう……吐瀉物は、土で隠した方がいいですね。」
そうして、また鳥の落下物を受けながら、飛空艇に戻ったサイファ達だった。
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