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アニスの勘違い
しおりを挟むアニスの家を出ようとしたサイファ達。
「じゃ、暫くサンドールに居るから。」
「サイファ、学校は行かないの?」
「…………あぁ………どうしよ、すっかり忘れてた……。」
「サイファ、ここに居る間は行きなさい。分からない場合は私が教えるから。」
「……………えぇ~~!!」
「同世代の友人は大切な宝よ。母様は学校は行く事はなかったけど、同世代の友人との話は刺激になったわ、良くも悪くもね。」
「………え!!お母様!?」
「…………あ、そうそう母親。」
「ごめんなさいね、挨拶遅れて……気になってたでしょ?19歳でサイファ産んで、直ぐに石になっちゃったから、身体は19歳のままなの。……カムラ国王のシヴァの妃、ジュリアナよ。」
この一瞬で、アニスの不信感は取り除かれたのだった。
「びっくりさせちゃったわね~。」
「………アニスんちに行く時も身内、てしか言わなかったからなぁ……。」
「サイファが悪いんじゃないの。」
「………だ、だって外見19歳の母親、てどう説明するのさ、俺16なのに!」
「…………複雑よね……。」
サイファが住んでいた家に行く道すがら、しみじみと思うジュリアナ。
「…………老けメイクにしようかな……。」
「母様、それ真剣に言ってる?」
「言ってない。………ストロベリーピンクのド派な若作りおばさんになるのは嫌よ。」
「漫才してます?ジュリアナ様。」
「………アーヴァインも老けたよねぇ……。若作りする?」
「止めてくれ。」
「………冗談はさておき、学校は考えなきゃね…。サンドールにまた戻ってくるとは限らないし……。その内辞めなきゃならないかもね、サイファ自身で決めなさい。」
「………うん。」
「…………あと、彼女の事もね。」
「彼女?………アニス?」
「そう、彼女との将来は無いからね、サイファ。」
「…………そうね、わたくしも駄目よ、彼女は。」
「………ちょっと意味分かんねぇ。」
「彼女は、サイファに恋してる。でも彼女は王籍から離れていても能力者の血脈。もしサンドールの民主主義国家が終わったら、彼女の血脈が王籍に戻らなければならない。」
訳が分からない顔で考えている様子のサイファ。
「聞いてなかったのですか?クーデターの話の時の……。」
「民主主義が駄目だったら、の場合だろ?聞いてたよ。」
「この数年の話ではないのよ?分かる?何十年、何百年後かもしれない。でもその時にもしカムラが王位継承者が1人なのに、サンドールが民主主義から王籍に戻らなければならなくなったら?私達は、この世界に与えられた能力を後世に残す義務もあるのよ。王族間の結婚はそれだけ重要なんだから。」
「…………母様だって、王族間の結婚じゃ……。」
「私は継承者じゃなかったから。だけど、彼女は1人娘でしょ?」
「………確か。」
「だから、駄目よ、て言ったの。告白されるかどうかは分からないけど、サイファにその気が無いなら、幼馴染としての距離感を保ちなさい。思わせぶりはしない事。」
「…………うん。アニスに幼馴染以上の感情はないけど、なんか気に食わないなぁ。」
「でしょうね、シヴァもそうでしたからね。親への反抗心で逆に行く事。………でもジュリアナの話はお祖母様も同意見ですからね。」
国を挟んでの結婚の意味にそこ迄重要性があるのは気付かなかったサイファ。
母親のジュリアナが能力者ではないのは知っていた。
浄化の能力も無い、先見の眼の能力も無いのだから……。
そう思うと、叔父のアレクセイの能力は、両方あるのは、サイファには不思議でならない。
「アレクセイ王は?両方あるよね?」
「お兄様のお父様は、ラムザ王だからね。お母様は、ロートシルトの王女で先見の眼があったの。私と同じ母だったけど、私には継承しなかった。」
「どっちも継承、てあり得るの?」
「…………それ、不思議なのよねぇ……。」
ジュリアナは首を傾げるだけだった。
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