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恋焦がれる相手
しおりを挟むふと、アーヴァインが建物から出ていく。
「……………父さん?」
「…………あぁ、アーヴァインは会いに行ったんだろう……コーラルに。」
「………行ってもいいですか?」
「………見ておいで。」
アレクセイの許可を取り、アーヴァインの後をつけるサイファ。
建物直ぐ横の石に手を当てるアーヴァイン。
「…………コーラル………。」
よく見ると胴体はない、膝から下しかない石を慈しむアーヴァイン。
サイファは初めて見るアーヴァインの顔だった。
「挨拶してやってくれませんか、サイファ様。」
「…………え?」
「貴方を守る為に、この場所で足のみ石にされました。サイファ様を抱き、私にサイファ様を頼むと、泣きながら言ったんです。俺の妹で、俺の息子を宿した、たった一人の愛した女。」
「………な、何で足だけ………。」
アーヴァインは、立ち上がり遠くを見つめる。
「…………俺は、サイファ様を抱き抱え、直ぐにアレクセイ様に助けを求めに行きました。その間に策略があったんでしょう……。生きていた者は殺されたり、連れ去られたりしたような痕が……。俺が戻って来た時にはもうコーラルは足を切られ連れ去られていました。………それから探し回りましたが未だに見つかっていません。」
「…………だ、誰がそんな事っ!歴史でそんな話……。」
「…………カムラの黒歴史ですからね、悲惨でしたよ、足や手が石にされた女はレイプされて殺されていたり、男も残虐的な殺され方をしていました。亡くなった者達は弔いましたが、手足を切り離され未だに見つかってない仲間達は如何なったか……。他の国に行っていた仲間は今も探しています。………無事でいて欲しい、亡くなったのならせめて弔いされていて欲しい、と残っている者は皆思ってます。」
サイファは握り拳を作る。
「………俺に何が出来る?…………教えてくれよ……。ずっとずっと、俺の親だったんだろ?拒否ったって、俺の父さんだったんだし、直ぐあの石が父親だなんて切り替えなんて出来る訳がない……。」
「………サイファ様……。」
「そっくりなのは分かるさ!あの人が父親だって!だけど育ててくれた恩だってあるし…………俺が王子?………いきなりお前は王子だって誰が信じるのさ!」
アーヴァインはサイファの方に向き、握り拳を作る反対の手に持つ阿修羅を指刺す。
「………その阿修羅。それはシヴァ様の父上、ラムザ王が作った剣です。使い熟せるのはシヴァ様ぐらいしか居ません。その剣は諸刃の剣。そしてカムラの能力、浄化の能力は、貴方にも備わっています。」
「………え?そんな能力…………あ……。」
普段、アーヴァインから仕上げにまじないと称し、呪文を唱えさせられていた。
身体の中なら力が湧き上がるような感覚で温かい気持ちにさせてくれたあの呪文。
「…………そうです、それがカムラの能力。」
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