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実戦

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 急にサイファが家から居なくなると、心配掛けるだろう、とラルドーから言われ、アニスの家に一言伝えに行ったサイファ。

「行って帰ってくるのに、一週間ぐらい掛かるそうだから、学校に言っといてくれ。」
「………分かった。………戻ってくるよね?」
「多分。…………だよな、おっさん。」
「………それを決めるのは君だ。」

 サイファの後ろに控える、デカイ図体の男は威圧感があるのだが、サイファはその威圧感等気付かないぐらい平然としている。

「…………おばあちゃん……行かせていいのかな……。」
「………ロートシルトならいいんじゃないかい?アーヴァインが行ってるんだろ?」
「……………。」

 アニスの祖母が玄関の方に来ると、ラルドーは会釈をする。
 見ていたのは祖母だけ。
 サイファとアニスは祖母を見ていたから気が付いていない。

「…………サイファ、気をつけて行っておいで、無理するんじゃないよ?」
「分かってるよ、行ってくる。」

 サイファはラルドーと、アニスの家から離れていった。

「………時間がない、走るぞ。着いてこいよ。」

 ラルドーは、猛スピードで走り出す。

「………え?…………ちょ!おっさん!…………は、早っ!」

 サイファは着いて行くのが精一杯で、息切れも激しいのだが、ラルドーは息切れもしていない。
 一時間程走ると、ラルドーは止まる。

「………………情けない……体力無いなぁ。」
「………はぁはぁはぁはぁ……俺……は…………マラソ…………より、短……距離の………が……向いて…………んだ………。」

 肩で息をし、もうヘトヘトのサイファ。
 街中からかなり外れ、山道の入り口で立ち止まった2人。

「ここからは、国境越えだ。獣も強盗も出やすい。一晩ここで野宿したら、また走るぞ。」
「歩かねぇのかよ!」
「…………早くロートシルト国境に着きたいんだよ。サンドールは治安はそれ程良くない。国境超えたら歩く。」
「…………そんな治安悪いかなぁ……。」
「街中は大丈夫なんだが、田舎になればなるほど、賊民の街や村があるんだよ。ロートシルトは裕福な国だからな、国境周辺はロートシルトに行こうとする奴も多い。」
「………入れるのか?」
「その心配は不要だ。俺と一緒ならな。」
「?」

 火を起こし、夕食の準備を始めたラルドー。
 手慣れた手付きで、次々と料理も作っていく。

「ほら、食べろ。」
「…………うまそ~。」

 渡された肉も、スープもサイファはがっついた。

「アーヴァインは料理あんま上手くないからな。………俺は既に君ぐらいの歳には、世界中飛びまわってた。故郷に帰れるのは年に数回だけだ。」
「おっさんの故郷はどこ?ロートシルト?」
「………………もう、今はあってないようなもんだ……。俺の出身はイヴリース。亡命したがな。」
「………それって最近なのか?」
「30年ぐらい前だ。」
「……………。」

 ガサッ。

「…………!!この剣を持て………来るぞ。」
「……え?」

 森のの茂みから、数体の狼。
 阿修羅ではない剣を、ラルドーから渡されるサイファ。

「俺、剣持ってる。」
「………その剣に血の味を教えるな。生きていたいならな。………来るぞ!」

 ザザッ!ザザザザッ!

「!!!」
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