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結局は……
しおりを挟む「高橋さん、出産後の処理しますね」
義母が、美奈の足下に来る。穂高は美奈の産んだ子を受け取り、美奈の旦那に抱かせる。
「今聞こえたんですけど、抱っこしないんですか?」
「可愛くないから……」
「あらあら、赤ちゃん………お腹空いてますよ?」
「知らないってば!」
義母の言葉に、返す美奈。
「高橋さん、知ってますよね?……今、小さい内に手術すると、成長と共に傷も気にならなくなり、普通に生活出来る子も増えてるんです…………この傷は治る可能性もあるんです……旦那さんみたいなイケメンになるんじゃないですかね?」
穂高が、美奈の旦那の横で話す。しかもプライドが高い美奈の事。知ったかぶりをすると、穂高は見ていた。
「…………手術すれば可愛くなる?」
「まぁ、遅れれば分からないですよ?………遅れたら………は考えない方がいいかもしれませんね……産まれて来るのを待っていたんでしょう?それなら、可愛くしません?………高橋さんの子なら可愛いでしょうね………美男美女ですし、両親が」
お世辞含めて、際どい話を穂高が続けた。美奈は少し落ち着き、搾乳した母乳を、抱きはしなかったが、旦那に任せて母乳を飲ます事に何とか成功する。
「詐欺っぽい事言ってたけど………医者として如何なの?」
「………まぁ、あの女なら信じるんじゃね?……後は、唇顎口蓋裂の手術次第?」
「私がするの?」
「………母さんが紹介状書けばそうなるんじゃね?」
「知り合いの手術は、病院では出来なかったよ?」
「…………て、事で母さん、俺達ん所に回すなよ」
「…………知ってるわよ……まさか、玲良ちゃんの知り合いとはね……」
私情が入る相手の手術は出来ない事になっている。だが、それは生死に関わる事であれば尚の事。唇顎口蓋裂は生死に関わる事ではないにしろ、玲良と美奈には因縁がある為、穂高は許さないだろう。
後日、美奈は子供と一緒に退院し、別の病院で手術をするという。美奈から、穂高の実家の病院に、玲良の働く病院は何処だ、と聞かれたと聞かされ、玲良は教えてもらっても構わない、と伝えた。
美奈から、連絡が入るか会いに来るかは分からないが、暫く玲良は待つ事にした。
「纐纈先生に面会依頼が入ってます」
「面会?………何方ですか?」
「高橋 美奈さん、という女性です」
「…………分かりました」
ロビーで待つという美奈に会いに行く玲良。
「退院したんだね、美奈」
「…………結果的に安産だったし……子供はまだ入院してるけど……」
ロビーの片隅で、無言が続く玲良と美奈。
「………聞いたんだけど……結婚決まったって?玲良」
「あ、うん……美奈も出産の時に会ってるよ………あの産婦人科病院の院長の息子なの……産婦人科医なんだ………」
「…………玲良が、夢叶えてるとはね……あれだけ邪魔したのにさ……………でも、ありがとう……入院先、探してくれたって聞いた」
「……………気にしないで……私が手術に拘っても良かったんだけど、私情挟みそうで……」
本当は、玲良は何もしていない。ただエコー確認しただけだ。恐らく穂高や義母の提案だろう、と玲良は思った為、美奈に話を合わせた。
「入院先の先生は、直ぐには手術出来ないから、検査と成長に見合って日程決める、て……私的には直ぐにでもして欲しいけど、同じ症例の乳幼児が多いって初めて知ったよ……」
「うん………知らない人も多いけど……美奈」
「何?」
「謝っといてよ、自分の子に………気持ち悪い、とか化物、て言った事」
「…………産まれたて、て皆、宇宙人や化物みたいなくしゃくしゃな顔してんだね……ドラマに出てくる赤ちゃん、皆可愛い顔してんのに、それ想像してた」
「…………あぁ、それで……」
「だから、旦那にめちゃくちゃ怒られた………旦那、長男で産まれたばかりの弟や妹見てきたから………私は妹だし知らなくて……産婦人科の先生や看護師にも訂正されたから、私なりに育ててみようかな、てね」
「そっか………赤ちゃん見た後、怒鳴り声が聞こえたから、心配はしてた…………赤ちゃんにだけど」
決して、玲良は美奈を許す事はないだろうから、産まれた子への心配するのみだ。玲良は美奈と友人に戻る気はないのだ。
「………あのさ……玲良」
「如何したの?」
「まだ私達………友達?」
「……………高校の入学式の時に、私達決別したんだよ?忘れた?」
「………あ、あの時は……玲良だけが志望校合格して腹立って……あんな事……」
「あんな事?………あれから私、散々な目にあったのに?………美奈があの時の美奈かどうかは、今の私には分からないけど、それはこれから美奈が私にどう接するか、じゃない?………私からは寄り添う気は今は無い………中学生の時の様な関係になりたいなら、出産時に見せた様な態度なら、私はまだ無理かな…………高橋さん」
「…………っ」
「旦那さんとお子さんとお幸せに……オペ予定がこの後控えてますので、失礼します……こちらの病院に掛られる時がありましたら、またお声掛けて下さいね」
玲良の夢を、人の人生を狂わせようとしかねなかった美奈は、高校の入学式に玲良を助けるどころか、それを同中の友人に広め、従姉を使い、高校内にも噂を広めた事で、玲良は許す事は出来なかった。
結果的に、穂高と親しくなり今に至るが、それを感謝するものの、それを美奈に言うつもりもない。一礼し、美奈をその場に残し振り返る事も無かった。
後程、ロビーでその光景を見ていた看護師から玲良は聞く。あの後美奈はその場で泣いていた、と。『ごめんなさい、ごめんなさい』と連呼し、帰って行ったという。玲良に謝っていたのだろうと思われるが、玲良の心には何も刺さらなかった。
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