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ラブラブ2ショット

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 医局に戻って来た玲良。数人の医師と看護師も忙しくしている。これなら、本当にの事を聞かれない、と安心していた所に、背後から玲良に声が掛かる。

「玲良」
「……………何でしょう、『富樫』先生?」
「「「「!!」」」」

 医師や看護師は、手を止めて玲良と穂高を見てしまう。

「今更いいじゃねぇか、朝から大騒ぎだ」
「そうはいきませんよ、『富樫』先生……仕事中ですから」
「……………あっそ…………今朝、俺の担当患者が破水して入院したんだが、ちょっと心臓に持病がある患者でな、分娩後の容態が心配な人なんだ……分娩の時間が如何なるか分からないから、帰り時間が分からない」
「誰かに心臓の持病の事で外科医に頼んでます?」
「その時は医局に緊急対処を頼むからいい……ないかもしれないしな……過去2人出産したが2回共に心肺停止し掛かってな……胎児には影響は無いんだが」
「…………そう、妊婦さん出産大変ね」
「だから、帰るの遅くなるから」
「…………内線で教えてくれて構わないのに……」
「顔が見たいから来たんじゃねぇか………分かれよ婚約者フィアンセ
「!!」
「「「「おぉ…………」」」」

 医局の医師や看護師達は、玲良の表情の変化に驚く。

「可愛いねぇ」
「や!止めてよ!職場なのよ!」

 玲良の頬に、手を添える穂高。

「職場一緒でも、癒やしは必要」
「……………んっ!」

 穂高は玲良にキスを落として行った。

「穂高の馬鹿!!」
「はははっ!!………ゴチ!」

 真っ赤になって、外科医局のカウンターの端を握り締め、わなわなと身体を震わせる。人前でキス等した事がなかったのだ、恥ずかし過ぎて、医局内の医師達の顔も見れない。
 名前呼びしなかった仕返しだと、直ぐに分かったが、勘弁して欲しかった。

「纐纈先生~、ラブラブですね」
「羨ましい……あの富樫先生の纐纈先生好き過ぎでしょ、てオーラ」
「あれ、独身の先生達の牽制ですよね、きっと…………」
「…………こ、こら!仕事しなさい!」

 看護師達はチラチラと医師達を見る。もうすっかり玲良への冷ややかな空気は取り払われている。寧ろ、腐女子看護師達の、目の保養になった様だった。
 この一件は直ぐに病院内スタッフ達に知れ渡り、暫く玲良の心休まる日は来ないのだ、と知らしめた。

         ☆☆☆☆☆

 玲良と穂高の婚約騒動が落ち着いて、3ヶ月程経った頃。新たな騒動が起きた。

「玲良ちゃ~ん」
「!!」

 外科医局で、予定しているオペのミーティングを医師と看護師としていた時だった。振り向くと、スーツ姿の穂高の母が外科医局のカウンター越しで手を振っている。

「………お、おば様?」
「やぁねぇ、お義母さん、て呼んでくれて構わないのよ?ウチの馬鹿息子の嫁なんだから」
「ま、です……よ?」
「あら、後藤君じゃない」

 後藤教授にタメ口を叩く穂高の母は知り合いらしい。

「………富樫……何しに来たんだ?」
「あぁ、ウチの病院からここの病院への転院よ………低体重胎児出産になる妊婦の付き添い……今手続き中」
「なら、何故ここに居る?邪魔なんだがね」
「本当ならねぇ、転院する事ないのにねぇ……早く玲良ちゃんが、ウチに新しく出来る小児外科に早く来てくれたら、こんな転院手続き踏まなくていいのに………ところで、孫はまだ?結婚する日決めた?」

 後藤のウンザリする顔を無視し、玲良に催促したのは穂高との結婚と孫。

「…………あ、あの……まだ決めてなくて……」
「母さん!!やっぱりここに居たな!!すいません、後藤教授…………ほら、手続き終わったから、母さんも仕事戻れ!!」
「穂高!!アンタ、玲良ちゃんをもっとその気にさせなさいよ!」
「…………あぁ!煩いババア!!てめぇの病院に帰りやがれ!」
「アンタが継ぐ病院じゃないの!」

 穂高は自分の母親を引っ張って行く。嵐の様な人なのは玲良も後藤も知っているが、他の外科医達や看護師達は驚いたままだ。

「纐纈先生………お姑さん、パワフルですね」
「富樫先生のお母さんだろ?……産婦人科医の………」
「あの親にしてこの子あり?」
「…………も、申し訳ありません、お騒がせしました」

 玲良が穂高の代わりに謝罪する。身内になる者としての謝罪だ。

「まぁ、あの富樫は変わらんからな……ミーティング続けるぞ」

 一方、穂高はロビー迄母を連れて来る。

「早く帰れ」
「仕事振りも見たかったのに、玲良ちゃんの」
「………まだ忙しくて日取りも決めてないし、結婚しても継がないぞ!」
「…………ちっ」
「ちっ、て何だよ」
「だから、孫の催促してるのに」
「…………ピル飲んでるから孫はまだだな」
「……アンタ達のマンション行って、ピル無くそうかしら……」
「おい、考えダダ漏れだぞ」
「……………いつ迄待たせる気?」
「………その点については……もうちょい待ってくれ………アメリカに玲良のお父さんにも挨拶してない……」
「その事なら、あっちは大丈夫!アンタ達の婚約した直後、纐纈さんに了解得たから」
「!!……てめぇ………何してやがる!!」
「結婚式の日取り決まったら教えてくれ、て」

 穂高は青褪めるより、蒼白になる。穂高は穂高で、玲良の父に挨拶しに行く予定で、シフト調整もしていたのだ。それが、母が勝手にやっているとは、誰が思うのか。
 そして、また穂高の頭の中で嵐が巻き起こっていた。
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