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進路
しおりを挟む受験に入った玲良と穂高。進路についてはなかなか話そうとしない玲良に穂高は問いただす。
「玲良の志望校聞いた事ないんだけど」
「………まだ迷ってるの」
「俺と一緒の大学に行こうぜ?」
「そこは滑り止めよ」
「…………くっ!頭良過ぎる彼女はムカつく」
穂高は、医学部のある大学に絞り込み、県内外周辺で地元から通える大学を目指すと決めていた。だが、玲良はそれさえも定まっていない、というのだ。
図書室で、参考書を開き会話をしながら問題を解いていく辺り、頭脳の作り方は違うと思われる。
「成績変わらないじゃないの」
「変わるじゃねぇか、万年2位と常に学年トップとの差は開きっぱなしだっつぅの」
「細かいわね…………私は師事したい教授の居る大学で志望校決めるつもりなの……少なくとも6年はね」
「だから、それは何処だよ」
「……………いっぱいいて決まらない……アメリカにも居るし………」
穂高は、県内外には留まらない、玲良の志望校に驚く。
「遠距離恋愛する気か?」
「…………簡単に会えない距離ならそうなるかなぁ……医学部よ?恋愛している暇なんてあると思ってる?」
「………………別れる、と?」
「………かもしれない」
「……………帰る」
鞄に無造作に参考書やノートを突っ込みコートを羽織った穂高。玲良はただ見送るしか出来なかった。
「仕方ないじゃない………私も夢叶えたいんだもん………穂高君の志望校じゃ、師事したい教授居ないのよ……」
滑り止めに受けるつもりではいるが、穂高と通う事はないだろう。だから言いたくなかった。センター試験も近く、その結果次第で玲良は穂高との決別を選んでいた。
何度も身体を合わせ、玲良も穂高が好きになっていたが、穂高に合わせていては自分の夢は遠くなってしまうのだ。
玲良が目指す医療は小児外科。穂高は産婦人科だ。師事する必要の医療も違う。
「医者になったら、手助けするから………待ってて、なんて言えないけど………ごめんなさい……」
図書室での一件から、玲良も穂高も距離を取っていた。受験が終わる迄、玲良は穂高に話掛ける事無く、卒業式を迎えてしまった。
「穂高君」
「…………おぉ、如何した?何か久々に話すな、玲良」
穂高の教室に行き、卒業式前に話がしたくて呼び出した玲良。
「今日、マンションに行ってもいい?話あるの」
「……………あ………いや……ごめん、今日は無理……クラスの皆で俺のマンション集まるから……明日は?」
「…………昼過ぎから夕方迄なら時間取れるから、それでいい?」
「泊まってってもいいぜ?」
「今、お父さん帰ってるから無理よ」
2ヶ月程話せていなかった玲良と穂高だが、お互い口調も表情も変わらないまま話が進む。
「アメリカから帰ってるんだ」
「うん、私の卒業祝いとか、その他諸々の用事で」
「………分かった………じゃあ明日の午後な」
「うん、ありがとう………式始まるから行くね」
「今度は答辞だけど、出来るな……ドジるなよ」
「…………ははっ……しないわよ………入学式に、遅れた私の代弁してくれた事、感謝してるのよ?今度はしっかりやらなきゃね」
「………覚えてたのか」
「えぇ、私と目が合ったじゃない。嬉しかった………私が考えた挨拶、棒読みで心篭ってはいなかったけどね」
「うるせぇよ………見惚れてたんだから許せ」
「…………っ…………仕方ないなぁ……許してあげる」
見惚れたと言われ、嬉しくて涙が出そうなのを堪えた玲良。卒業式で感極まり涙が先に出た、と言えば誤魔化せるだろうが、嘘は言いたくない。微笑んで踵を返すのが精一杯で、玲良は教室に戻って行った。
違和感はあったが、穂高は玲良の意図が読めなかった。2ヶ月の空いてしまった会話の無かった学生生活に、穂高の勘が外れたのだ。
☆☆☆☆☆
卒業式が終わり、翌日の午後玲良が穂高のマンションにやって来た。
「お邪魔します」
「おぉ………あれ、何か荷物多くね?」
「………うん………この後、お父さんと一緒にアメリカに行くの……なかなか会えなかったしね……荷物、玄関に置かせてくれる?」
「…………そんなぐらいはいいけど、どれくらい?」
「…………お土産、買ってくるね……何がいい?スニーカーなんてどう?好きだったよね?」
夜、アメリカに行くという玲良は珍しくパンツスタイルのボーイッシュな姿だ。そして、帰国時期も言わない玲良。
「あぁ、好きだけど………」
ツカツカと、室内に入る玲良はベッドに座る。
「…………時間無いの………手短に言うね」
「…………おい………別れる、なんて言うんじゃないだろうな」
昨日からの玲良への違和感が、穂高の中で不安に変わる。
「…………好きよ……例え、そうなったとしても」
「………止めろ……聞きたくねぇよ!!」
「………聞いて…………私……アメリカに行ったら帰る日は決まってない………アメリカには旅行じゃないの………医療の勉強をお父さんや他の先生から教わって来るつもり……フェローシップを受けて、小児外科医になって来る………お土産は手渡せないから送るね………」
「止めろ!!」
「…………だから………私の事は………忘れ……」
「止めろって言ってんだろ!!」
「……………お、思い出に……じゃないけど……最後かもしれないから……抱いてくれない…………かな?」
ベッドに座り、服を脱いでいく玲良。しかも涙目になりながら全裸になり、仁王立ちする穂高を抱き締めた。
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