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真相を知る玲良
しおりを挟むそれからというもの、何かと穂高は玲良に話掛けるようになった。
「纐纈、辞書とノート貸してくれない?」
「……………また?」
授業の合間に何度も物を借りに来ては返しに来る穂高。穂高が玲良のクラスへやって来ると、女生徒達は玲良を睨む事も増えた一方で、虐めも減ったのだが、最近穂高との噂が後を絶たない。
「見やすいんだよ、纐纈の辞書………勉強の参考になるからさ」
「………次は何?」
「英語」
「…………はぁ……」
玲良は溜息を付き、穂高に辞書とノートを渡す。黒板に書かれた内容に、玲良なりの要点やまとめが更に書き占めてあるのを見たいらしいのだ。
「サンキュ」
「………返してくれたらそれでいいから」
「お礼は身体で……………っと……冗談冗談」
玲良はキッっと穂高を睨む。女生徒達の目線が気になっていたからだ。雑談して自分のクラスに帰る穂高。チャイムギリギリ迄側に居てくれる穂高に、玲良も安心を覚えるものの、何故穂高が玲良に会いに来るのか分からないまま、玲良と穂高の嘘の噂だけは途絶えた事はなかった。だが、信憑性も無い噂だけが飛び交い、時折職員室に呼び出される事も増えたが、学年1位2位の成績の玲良と穂高へのやっかみからくる些細な物だと判断されるだけで済まされた。それだけ、教師達から2人の成績に関して、文句は言われる事は少なかったのだ。
「……………え?」
英語の授業が玲良のクラスで始まる。英語のノートを開くと、穂高の筆跡でポストイットが挟まっていた。
『次の体育の授業、仮病使って♡話がある……体育館裏に来て』
行くか行かないかは玲良次第。体育の授業は玲良は時々サボっている事は知っている穂高。着替えて制服を隠されたり、鋏で切られたりした事もあり、それから体育の授業も出ても、クラスの女生徒達と一緒に着替える事も避け、制服や体操服も隠す事を徹底していた。この日も玲良は体育をサボるつもりだった為、授業が終わった後、体育館裏に行ったとしても支障はなかった。
「富樫君、何?」
「…………お、来たな」
体育館裏に先に来ていた穂高。壁に凭れ掛かり立っていたのを玲良が声を掛けた。
「話って何?何かあった?」
「まぁまぁ…………5限始まる前迄ちょっと出ようぜ」
「………は?」
腕を穂高に掴まれ、体育館裏のフェンスに穴が空いている場所に連れて来られた。
「潜って」
「え!!」
「いいから」
穂高により玲良の頭を押さえつけられ、フェンスの先の垣根を掻き分け、押し込まれると隣接するマンションの敷地内へ入る。そしてそのまま穂高は玲良の腕を掴み、マンション内へ入っていった。
「ど、何処へ?富樫君!!」
「……………穂高、て呼べよ」
「………え?」
「俺も玲良、て呼ぶからな」
エレベーターに乗らされる玲良は、高層階迄上がって来た部屋へと誘われ、穂高はその部屋のベランダへと連れて来た。
「こ、ここは?」
「俺の部屋」
「…………え!!」
「俺さ………玲良の噂聞いて確かめたい事あってな………」
顎を掴まれ、マンションのベランダから隣接する高校の体育館裏を見せられた玲良。
「…………だから知っている………玲良が噂の様な事をしてない、て………」
そして、穂高の方を向かせられる。
「富樫君…………んっ!」
穂高、と名前呼びをしろ、と言っていたからなのか、穂高は玲良の唇を自分の唇を重ねる。息も出来ないただ唇を合わせたキス。舌が割り入れられる訳でもない、ただ唇が重なるキスをされ、息等出来る筈もない。玲良にとって初めて感じる異性の唇の感触。押し退ける事も出来た。だが驚き過ぎて、戸惑いを隠せない隙に、抱き締められた玲良。
「…………と………が……」
長い沈黙で、穂高は僅かに腕が震えている。息を吐いたり吸ったり、と何やら落ち着かない様子だ。
やっと、声が発せたと思いきや、穂高から玲良が予想していなかった事を言われる。
「噂………マジにしない?」
「………え?」
「…………『富樫 穂高と纐纈 玲良は付き合ってる』………て噂」
「し、知ってるけど…………な、何で……」
「…………そうしたら、守ってやれるだろ?」
穂高はそう言うと、玲良をベランダの外へ向かせる。
「いつも、見てた…………玲良が授業サボる時を調べて、噂が本当なのか………俺はこのベランダから覗いてたのさ…………だが、玲良は来ない……来るのは噂を流した女やその女達が連れ込んだ男達………噂で玲良が押し潰されやしないか、と気にし始めてたと同時に、嫉妬してた…………俺の上位の女はどんな奴だ、て…………」
「………………」
ただ、玲良は黙って穂高の声を聞きながら、噂のある体育館裏を見つめていた。体操服を着た同クラスの女生徒が、男を連れて来たのは同時だった。
「…………あ………」
「……あぁ、あいつ等は毎週この時間にあそこでセックスしてるのさ………同時刻に玲良も体育をサボるから、わざと噂を流してたんだろうよ…………」
隠れ蓑にされていた玲良。高校3年になる迄、噂の出処を知ろうとも思っていなかったが、目の前に見える女生徒は、3年になってから始めて同クラスになった女だ。彼女だけではない。嘘の噂の出処は他にも居るだろう。
黙って、体育館裏を見ていると、穂高の手が玲良に肌に触れる。
「!!…………と、富樫君!……な、何を!」
「何を、てナニするんだろうが」
「え!!」
制服のスカートの中を弄られた玲良。既に太腿に穂高の足と、手が触れていた。
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