【完結】淫乱売女悪女は愛を、束縛執着男には才色兼備を

Lynx🐈‍⬛

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我慢した2年

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 静まりかえった校舎内。玲良は三者面談の為に、祖母と学校に来ていた。

「おばあちゃん、ごめんね……付き合ってもらって」
「何言ってるの……玲ちゃんの大事な進路じゃないの………お父さんは戻ってこれないからねぇ………本当に何してるんだか」

 廊下に並ぶ椅子に並んで座り、玲良の付き添いに祖母が居る事が、また目立つのだ。

「纐纈さん、随分と年取った母親ね」
「…………祖母だけど?」
「そうなんだぁ………纐纈さんは、両親にも好かれてないのねぇ」
「なっ!………玲ちゃんのお母さんは亡くなってるのよ、お父さんは海外赴任で帰って来れ………」
「お婆ちゃん放っておけばいいから……親しくない人に、家族の事話す必要ないでしょ?」
「………本当に、生意気……そんなんだから、誰も友達居ないのよ」

 高校の女生徒、同学年全員は玲良に冷たい。入学後から今迄、虐めはエスカレートしている。同中学の元友人達からの嫌がらせは無くなってはいたが、この2年で玲良は警察にお世話になっていた。痴漢にあった時の女性刑事がよく間に立ってくれて、調べた事だったが、玲良の嘘の噂の元凶は美奈だったと知った。
 美奈は中学卒業間近に、好きな男の子が居て、告白をしていたらしいのだが、その男の子は玲良が好きだと、判明したという。

『あの美奈、て子の逆恨みの様よ……事件性は正直言って、書類送検程度の案件があるぐらいなのよ…………担当刑事からあの子やあの子の家族には注意してもらってるから、嫌がらせがまたあったら教えてくれる?』

 大量の宅配注文や、家屋への落書き等、指示を出したのは美奈だという。そして、玲良が通う高校の女生徒に接触し、玲良への虐めを頼んだというのだ。だが、高校側の方から注意喚起は流れてはいるものの、隠れて玲良への嫌がらせは続いていた。

「別に………友人だと思っていた子から簡単に嫌がらせをする様な関係になりそうな相手なら必要無いし」
「負け惜しみね」
「負け惜しみと言うなら、私よりいい成績を取ってから言ってくれる?」
「…………くっ……」

 玲良の成績は落ちた事はない。常にテストは学年トップの成績だ。女生徒は何も言い返す事が出来ず、立ち去って行った。

「何て子なの!玲ちゃん、ずっとあんな子達に虐められてたの!?」
「おばあちゃんは気にしないで、彼女達の嫌がらせは対処出来るから………怪我させられる事も無いし」
「…………でも、今迄我慢してたんでしょ?」
「………私は、高校卒業する為なら如何だっていいから」

 ガラッ……。

「ありがとうございました…………纐纈さん、お待たせ……入って」

 玲良の三者面談の順番になり、教室に入る。

「纐纈さんの成績に関してから、志望校の合格範囲には入れるでしょうけど、油断はしないように」
「………分かってます」

 15分程の面談を終了し、校舎の廊下を祖母と2人で歩く玲良。しかし、まだ廊下で談話していた先程の女生徒がまだ居た。

「クスクス」
「ふふふ………」

 女生徒達が玲良と祖母の方を見て微笑っている。その不適な笑みがまた腹立たしい。その彼女達の笑みから悪意を感じた玲良は、無視をし続け去ろうとした直後、卑猥な言葉が浴びせられた。

「知ってる?あの人、体育館倉庫裏で男誘ってヤってんだって~?」
「私は理科室でもヤってる、て聞いた~」
「……………」
「早く帰ろう、お婆ちゃん」
「…………え、えぇ、そうね……」

 玲良は祖母に聞かせたくなかった。高校で玲良の扱われ方がどんなのかを知らせたくない。

「逃げるみたいねぇ、図星だから?」
「………なっ!」
「お婆ちゃん!!………言わせておけばいいの!彼女達は悪口言いたいだけだから」
「玲ちゃんがそんな事する筈な………」
「知らないのは身内だけってね~」

 だからといって、彼女達はその現場を見ていたのか等分からない。玲良自身していないのだから。

「へぇ~、君達は見たの?それ」
「「!!」」

 玲良と女生徒達の間に割って入る声。その声の主は、階段を降りてきた一人の男子生徒。

「………知らなかったなぁ……頭脳明晰の真面目そうな纐纈さんが、そんな事していたのなんて、見た事もないけど?」
「わ、私はを見たって子から聞いたのよ!」
「私は、相手した男の子から聞いたわ!」
「アホらし………んなら、見てないのと知らないのと一緒だ……だから、君達は纐纈さんに成績勝てないんだ」
「……………っ」
「まぁ、勝てないのは俺もだけど」
「そんな、富樫君は頭いいじゃない!」
「万年2位だが?1位は纐纈さんだけど?この扱いの差は何だろうね…………纐纈さん、こんなんに構わなくていいよ、帰るんだろ?」

 その男子生徒は、玲良を庇う様に立つと、行かせようと手で合図を出した。彼の名前は、富樫 穂高。玲良とは別のクラスの優等生だった。
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