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才色兼備は嫌われた
しおりを挟むざわざわざわざわ。
「アレ?」
「そう、アレ」
入学式の数日後、既に全校生徒に玲良の事は知れ渡り、玲良に好意的に話し掛ける生徒は誰も居ないまま、日々を過ごす羽目になった。同中学生の生徒が居れば、まだ良かったかもしれなかったが誰も居ない。そして、元々大人しい性格の玲良が自分から誰かに話し掛ける事自体、難しい事だった。
「纐纈さん」
「…………はい?」
同じクラスの女生徒が、玲良に声を掛ける。
「入学式の日、男と電車の中でシてた、て本当?」
「………シ、シてた……て………私、痴漢にあっただけで………」
「綺麗な顔してるもんね、纐纈さん」
「誘ったんでしょ~?」
「誘ってなんか………」
「私達に彼氏出来ても、奪うなんて事しないでね?」
明らかに嘘の噂を信じてしまっていた女生徒達と、それを聞き耳立てる生徒達。すると玲良に冷ややかな目線を送る女生徒と、好機な目線を送る男子生徒達が居た。
「そんな事するつもりなんてないわ」
「分からないじゃん」
「色目使わない保証、何処にあるの?」
「そ、そんな事言われても……」
多勢に無勢の状況で、玲良を庇ってくれる人間等居らず、授業と授業の間の休憩時間になると、誰かしら嫌味や嫌がらせを受ける様になっていった。だが、玲良はこの高校に通う必要があった為、必死で堪えていた。
チャイムが鳴り、教員が入って来る。散り散りになる生徒達は自分の席に着くと、教員の一声で、騒然となった。
「先日の実力テストの結果が出たぞ~、このクラスから学年1位が出た」
「誰ですか~?」
「俺?」
「ナイナイ」
入学してから1ヶ月は経っている。もう玲良以外の生徒達は、それぞれ気の合う友人同士のグループか出来ていた為、明るく賑やかな笑い声が飛び交う。
「学年1位は纐纈さんだ」
ざわっ!
「結果表配るぞ~、出席番号順で呼ぶからな」
「カンニングしたんじゃない?」
「それか色仕掛けで問題教えて貰ったとか?」
玲良が呼ばれ、取りに行くと女生徒がわざと足を机から出し、玲良を転ばせようとしていた。
「…………」
「…………ちっ!」
だが、玲良は避けて歩く。思い通りには玲良はさせるつもりも無かった。テスト順位は掲示板に張り出され、玲良のクラス以外の生徒達は新たな嘘の噂を流されてる。『カンニングした』『色仕掛けで問題を予め教えて貰った』等と。如何しても玲良を陥れたい様子の女生徒達に、言い返す事もなく暴力的な事さえされなければ気にする素振りを一切見せなかった。泣いたり言い返したりすれば、それこそ面白がるか、エスカレートしていきそうで、ひたすら我慢をしていた玲良。
「…………靴が無い……」
靴や上履きを隠される事もあり、教室を離れる時は全て鍵付きのロッカーに入れる様にもなってしまったが、それでも敢えて何も言わずただ淡々と学校へ通う。そして再び満員電車で痴漢に合わない様に、雨の日以外は最寄り駅から乗換駅迄は、自転車で通う事に変わってしまったのだ。そんな生活をしていく中で、一番変わってしまった事が玲良にある。それは、同中学の友人達だ。仲良くしていた友人達は、玲良からの連絡をブロックし始めたのだ。
「………お願いします……これ下さい」
「はい………2890円です………3000円お預かりします」
ある日の事だ。最寄り駅周辺に服を買いに出た玲良が、仲良かった友人達と美奈を駅で見掛けた。連絡し誘うとしても繋がらない電話。番号を変えた訳でも無さそうな友人に声を掛けようとした玲良。
「久しぶり、美奈、彩香……皆……」
「……………」
「?………如何したの?何で何も言ってくれないの?」
「近付かないでくれる?纐纈さん」
「…………え?」
近付いて行く玲良と、逃げようとする友人達。訳が分からず、不思議そうな顔をする玲良に、彩香という友人が冷ややかな口調で言った。
「アンタ、援交してるんだって?」
「私もソレ聞いた~」
「私は男を取っ替え引っ替えして、同クラの子の彼氏奪ったって聞いた~」
「入学式の日に痴漢にあって、嬉しそうに触られてたもんね」
「え!私は美奈に助けを求めてたよ!」
「誰がアンタの事信じるのよ!アンタ高校でも、男に色目使ってる、て聞いてんだからね!」
「っ!!」
美奈にドン、と押されよろめくと、美奈を見る。だが、美奈は玲良の目が気に食わなかったのか、大声でまくし立てる。駅前の昼の繁華街だ。知らない人の方が多いが、公衆の面前で美奈は言って良い事は決して言わなかった。
「ちょっと頭と顔が良いからって、お高く止まってんじゃないよ!うち等の事、ずっと馬鹿にしてたんでしょ?いい気味だわ、今も高校で誰一人とも友達居ないんだってね!虐められてさっさと中退しちゃいなよ!誰もアンタの将来を応援する人なんて居ないんだから」
「み、美奈………」
「ふん!行こう、皆………こんな奴の顔見てストレス溜まっちゃった、スィーツ食べに行こ」
「同中の子達にアンタの電番着拒させてるからね~」
「キャハハッ!彩香、親切心で教える事無いって!淫乱売女になんて!」
それからというもの、自宅を知る同中学の子達からの嫌がらせも始まった。大量の宅配注文や、イタズラ電話等、玲良はノイローゼ気味になっていったのだった。
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