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しおりを挟む「遅い!」
「起きて急に言われてもな………ゆっくりしろ、と言ったのはお前だレオン」
従兄相手だが、王太子のレオンに、お前と言えるのはイアンぐらいだろう。
昼食を一緒に、と誘われたのは昼前で、それ迄ベッドに居たミリアーナとイアンが聞いて、準備して来れたのは昼過ぎだ。
「………まぁ、いい……ミリアーナ嬢が治まったか如何かも確認したかったからな……ミリアーナ嬢は大丈夫だった?」
「は、はい………王太子殿下やルチア様には大変お世話になってしまいまして」
料理も既に並ばれ、上座に座るレオンとルチアの前にミリアーナとレオンが座る。
「良かったですわ、私の国の薬だったから、知識を提供出来たのです。私の父の産業ですので、必要でしたらお贈り致しますね」
「そ、それは………」
「ルチア妃、是非」
嬉しそうに受け取る気満々のイアンに、ミリアーナは止めに掛かる。
「イ、イアン様っ!」
「避妊薬は必要だろ?あの避妊薬もルチア妃から?」
「そう………ルチアが持ってきてくれたんだ」
「この国にも必要かと思いまして………」
「で、必要だったな」
ルチアに優しい笑みを見せるレオンは、お互い見つめて微笑み合った。
「はい」
「「…………」」
ミリアーナもイアンも薬の効果を試せて、良かったのか悪かったのか、結婚迄の恋人達には必要である薬だと言う事はよく分かったので、あって助かった。
だが、何故この目の前のレオンとルチアは楽しそうなのか。
「俺達より先に子供作るなよ、イアン」
「…………待っててやるよ、仕方ないからな。だが、結婚したら分からんからな」
「プレッシャー掛けるなよ」
「お前が言ったんじゃないか」
「それにしても、お前が1人の女性にここ迄真剣になるとは意外だったよ」
「何が言いたい」
「遊びで付き合ってた女、全て切ったもんな」
「ゔっ………」
ミリアーナもイアンは慣れているな、と思った。
筆頭公爵で美男子の独身男が未経験である訳はないのだ。
「気になる?ミリアーナ嬢」
「はい?」
「イアンの女歴」
「……………私が言える権利は無いので……」
「ミリアーナ様、これからあったら言えますわよ」
「そうですね、ルチア様」
一夫多妻制の夫婦関係は築けないので、浮気する人も居る。
ミリアーナの父はそういう相手は居なかった様だが、噂が絶えない人がイアンだった記憶があった。
「…………ミリアーナ?」
「あ、いえ………少し思い出した事があっただけです」
「何をだ?」
「イアン様に恋人は沢山みえたな、と」
「…………切ったからな!」
「何も申してません」
「…………もう無い!これからも無い!」
「イアンは必ず避妊薬飲んでたから大丈夫だよ、ミリアーナ嬢」
「後腐れ無い付き合いしてたのはお前もじゃないか、レオン」
「「え!」」
ミリアーナはレオンの女性関係の噂を聞く事は無かった。それに驚き、ルチアも知らなかったのかレオンを睨んでいる。
「ミリアーナ、コイツはな。俺を隠れ蓑にして俺の名前で遊んでた事もあるんだよ」
「言うな!イアン!」
「…………ははぁん………殿下………」
「特に、国外でな」
「言うなぁぁ!」
「お前もルチア妃にこれからあったらしっかり怒ってもらえ…………食ったし、そろそろ帰ろうか、ミリアーナ」
「え?…………で、でも………」
「放っておけ。俺の過去暴露した仕返し」
イアンがレオンと仲が良いという理由が、此処にもあったのだ、とミリアーナは分かってしまった。
「王太子殿下、ルチア様、失礼致します」
「イアン!逃げるな!フォローしろ!」
「嫌だね。明日また登城する」
恩を仇で返す様な気がしたが、イアンとレオンの関係は崩れる感じには見えなかった。
王都のマーシャル公爵邸へ帰って来たミリアーナとイアン。
たった1日しか経っていないのに、凄く長く感じた1日だった。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様」
「何か変わった事は?」
「いえ、特には。犯罪者の護送は恙無く完了致しました」
「ご苦労………ミリアーナ、グランゾート侯爵夫人とリリシュ嬢の事で話をしておかなければな」
「は、はい………聞かせて下さい」
王城では聞ける時間が無かったので、ミリアーナもマーシャル公爵邸に帰ったら聞こうと思っていた。
寛ぐ為のマーシャル公爵邸のリビングで、寛げる話でもない、継母と妹の事。
罪状は分からないが、ミリアーナは継母の証言とリリシュの証言に、同情等沸かなかった。
「お父様と愛し合ってたら違ってたのでしょうか」
「……………さぁな……だが、愛し合っていたとして、変わらないだろうな、と思う物はある」
「何でしょうか」
「ミリアーナへの嫉妬と、君の母君への嫉妬。あと金と地位への執着」
確かに、グランゾート侯爵夫人の金と地位の執着の強さはミリアーナもよく分かる。それと依存性。
「離縁したからグランゾート侯爵領も変わってくるさ」
「ルーシャス、弟はまた小さい子なので、お父様は頑張られると思いますが、お義母様のしてきた代償で民達から反感が出なければ良いな、と」
「……………以前、ミリアーナを保護した、と邸の侍従達に話したら、皆大喜びだった。そして領の街人も、ミリアーナへの信頼も厚かった。それに引き換えリリシュやグランゾート侯爵夫人の信頼は無きに等しい。だから大丈夫さ」
「……………そう願います」
そしてそれ以上、ミリアーナはグランゾート侯爵夫人とリリシュの話は聞く事を止めた。
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