誘拐された令嬢は英雄公爵に盲愛される【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
21 / 36

20 *イアン視点

しおりを挟む

「ミリアーナ、君に渡しておく………我慢が出来ないだろうから使ってくれ」
「…………?………っ!」

 2人きりにさせて貰ったイアンは、ミリアーナの枕元迄来ると、梁型をミリアーナの手に持たせた。
 何を渡されたのか、とミリアーナもぼんやり手の中を見て直ぐに察知する。

「俺は、グランゾート侯爵夫人とリリシュ嬢の事で行かなきゃならない………必ずまたミリアーナの傍に戻るから、それ迄コレで慰めていてくれ………聞こえたかもしれないが、ミリアーナを治めるには、体液の交換が必要らしい………賢い君なら分かるよな?………今夜、俺は君を抱く」
「っ!」

 息も粗く、疼き続くミリアーナの身体を、今にでも無茶苦茶に、でも愛しく抱いてしまいたい衝動はイアンは常に続いていて、イアンも熱が下半身に集中し、痛いぐらいだった。

「なるべく早く戻る………もし、まだ君が俺を受け入れられないのなら、戻って来てから教えてくれ…………無理矢理、君を抱きたくない」
「…………わ………かり……ま………し……た……」

 必死に声を出すミリアーナの甘い声。聞くだけでもうイアンは限界だった。

「っ!…………申し訳ない!限界だ!ミリアーナ、使って少しは治めておいてくれ!」
「っ!」

 本当はずっと傍に居たいのに、抱けない苦しみは地獄でしかなく、イアンは部屋を慌てて出て行く。

「今から絶対に人を近付かせるな!漏れ出る声も聞くのも禁じる!」
「必死に堪えたなぁ、イアン」
「先に処理に行かせてくれ!」
「直ぐに牢獄に来いよ、イアン」
「分かってるよ!」

 暫くして、イアンも落ち着いて、牢獄に着くと罵り声が響いていた。
 この声は勿論、グランゾート侯爵夫人とリリシュだ。

『リリシュを出しなさい!娘は何もしてないでしょう!』
『お母様だって、無実に決まってるわ!不当よ!離縁もあり得ないわ!』
「黙れ罪人共」

 苛立ちの中にも冷静さを備え持ち、イアンはグランゾート侯爵夫人とリリシュを交互に睨んだ。
 取調べるのに、向かい合った独房に、イアン、レオン、そしてイアンの部下達が立っている。

「まぁ!罪人だなんて!マーシャル公爵閣下!何をどう見て私を罪人と申すのです!」
「サンチェスは?」
「会場を調べてる………リリシュ嬢の媚薬の投薬場所は分かったが、入手方法が分からないからな」
「無視なさらないで!」
「…………煩いな……夫人………あぁ、もう夫人では無いのだな、離縁は成立した事だし」
「私はグランゾート侯爵夫人よ!」

 綺麗に着飾っていた筈のグランゾート侯爵夫人は暴れたのか髪も乱れ、化粧も取れ、ドレスはすす汚れている。醜態を晒した行動に加え、これから更に醜態を重ねる事だろう。

「レイナ・コム・ドーソン………だったか?の名は」
「その名を呼ぶのは止めなさい!私はグランゾート………」

 ガシャン、とイアンはグランゾート侯爵夫人の前の鉄格子を蹴った。

「それではと呼ぶ。お前はもう爵位も無い罪人………敬意等お前に使うのも烏滸がましい」
「っ!」
「ミリアーナを誘拐した容疑は、もう証拠も集めてある。お前がグランゾート侯爵邸のを使い、ミリアーナ誘拐を手引した。そして回り回って、グランゾート侯爵家に関係の無い奴を雇い、ミリアーナを監禁………そうだな?」
「し、証拠…………?そんな証拠ある訳ないわ!」
「お前の駒全て、投獄しているんだがな」
「……………え……?う、嘘……」
「お前は金を散財し、グランゾート侯爵領の財政も底を付き始めたのを隠す必要があった………それが、自分の娘に使う金の浪費が嵩み、ミリアーナに本来使う金を巻き上げては、娘に使う事で、娘を財政が裕福な家に嫁がせようと考えた」
「……………」

 グランゾート侯爵夫人の顔色が血の気が引くかのように、冷や汗が溢れ出していた。

「そこで、俺がミリアーナに一目惚れし、婚姻の申し出をした事に乗っかろうとしたんだろう?俺は准王族。世論は当人達を無視し、王太子派とマーシャル公爵派が出来ていて、考えようによっては、俺を政権争いに勝たせ、娘を王太子妃にすれば、一生遊んで暮らせる、とでも思ったか?女」
「っ…………」
「お母様………お母様!私は王太子妃になるわ!マーシャル公爵様の妻になって、お母様を楽にさせてあげる!」

 リリシュの戯言もここ迄来ると、突っ込む事も面倒になってくるイアンは、リリシュを無視し続けた。

「生憎、俺は王位継承権なんぞ要らんし、公爵位で充分なんでね、国の運営なんて王太子が頭を悩ませてやっていけばいい」
「おい………イアン……お前、何て事言うんだ……」
「本当の事だ………それでお前はミリアーナを誘拐し、行方不明にしておけば自然と娘と俺が結婚させられるとでも思った様だな………お前自身、結婚商売で売られた結婚だったんだから」
「っ!…………そ、そんな事迄調べたの………」
「愛情なんて無い結婚で、やっと後継者を産めて、益々お前の欲望は、金と地位になった。男爵だったお前の父の地位は、貴族では最低地位で、領地等小さな村だけ、親戚筋のグランゾート侯爵は裕福な領地だ………結婚商売にさせられた事も嫌だったんだろうな……だから、旧姓を言われて激怒する」
「だから何だと言うの!地位を………金を求めて何が悪い!」

 貴婦人らしくなくなっていくグランゾート侯爵夫人に、リリシュは見たくない様子だった。それをリリシュ自身に同じ様な考えを刷り込まされていたのだ。自分を見ている気にでもなったのだろう。

「グランゾート侯爵家に男子を産んであげたのよ!後継者は出来たじゃない!だから、もう要らないのよ!グランゾート侯爵もあの娘も!私のリリシュの邪魔だったのよ!勉強も、教養も、何をやらせてもリリシュより上手かった………直ぐにリリシュなんて見向きもしなくなる!ただ顔だけ良い馬鹿な娘を、賢く出来ないなら地位に縋るしかないでしょ!いい気味だったわ!行方不明にしている間中、ありとあらゆる男達の…………」

 ガシャン、ガシャン!

「ひぃっ!」

 グランゾート侯爵夫人が言おうとした言葉に、イアンの怒りは最高潮となる。
 何度も鉄格子を蹴り、剣も抜き、鉄格子の隙間から剣をグランゾート侯爵夫人に突き刺す勢いだった。

「黙れ!これ以上ミリアーナを辱めるとお前の喉にこの剣を突き刺すぞ!」
「ひ、ひぃぃぃっ………お、お助けを………王太子殿下!」
「…………俺に助け求められてもねぇ………悪いけど、お前の罪は消す気ないよ。死罪にならないとは思うけど、此処に居るマーシャル公爵に判決前に殺されたくなかったら、ミリアーナ嬢の事を貶さない方が身の為だよ」

 レオンもグランゾート侯爵夫人を擁護する事は全く無かった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...