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20 *イアン視点
しおりを挟む「ミリアーナ、君に渡しておく………我慢が出来ないだろうから使ってくれ」
「…………?………っ!」
2人きりにさせて貰ったイアンは、ミリアーナの枕元迄来ると、梁型をミリアーナの手に持たせた。
何を渡されたのか、とミリアーナもぼんやり手の中を見て直ぐに察知する。
「俺は、グランゾート侯爵夫人とリリシュ嬢の事で行かなきゃならない………必ずまたミリアーナの傍に戻るから、それ迄コレで慰めていてくれ………聞こえたかもしれないが、ミリアーナを治めるには、体液の交換が必要らしい………賢い君なら分かるよな?………今夜、俺は君を抱く」
「っ!」
息も粗く、疼き続くミリアーナの身体を、今にでも無茶苦茶に、でも愛しく抱いてしまいたい衝動はイアンは常に続いていて、イアンも熱が下半身に集中し、痛いぐらいだった。
「なるべく早く戻る………もし、まだ君が俺を受け入れられないのなら、戻って来てから教えてくれ…………無理矢理、君を抱きたくない」
「…………わ………かり……ま………し……た……」
必死に声を出すミリアーナの甘い声。聞くだけでもうイアンは限界だった。
「っ!…………申し訳ない!限界だ!ミリアーナ、使って少しは治めておいてくれ!」
「っ!」
本当はずっと傍に居たいのに、抱けない苦しみは地獄でしかなく、イアンは部屋を慌てて出て行く。
「今から絶対に人を近付かせるな!漏れ出る声も聞くのも禁じる!」
「必死に堪えたなぁ、イアン」
「先に処理に行かせてくれ!」
「直ぐに牢獄に来いよ、イアン」
「分かってるよ!」
暫くして、イアンも落ち着いて、牢獄に着くと罵り声が響いていた。
この声は勿論、グランゾート侯爵夫人とリリシュだ。
『リリシュを出しなさい!娘は何もしてないでしょう!』
『お母様だって、無実に決まってるわ!不当よ!離縁もあり得ないわ!』
「黙れ罪人共」
苛立ちの中にも冷静さを備え持ち、イアンはグランゾート侯爵夫人とリリシュを交互に睨んだ。
取調べるのに、向かい合った独房に、イアン、レオン、そしてイアンの部下達が立っている。
「まぁ!罪人だなんて!マーシャル公爵閣下!何をどう見て私を罪人と申すのです!」
「サンチェスは?」
「会場を調べてる………リリシュ嬢の媚薬の投薬場所は分かったが、入手方法が分からないからな」
「無視なさらないで!」
「…………煩いな……夫人………あぁ、もう夫人では無いのだな、離縁は成立した事だし」
「私はグランゾート侯爵夫人よ!」
綺麗に着飾っていた筈のグランゾート侯爵夫人は暴れたのか髪も乱れ、化粧も取れ、ドレスはすす汚れている。醜態を晒した行動に加え、これから更に醜態を重ねる事だろう。
「レイナ・コム・ドーソン………だったか?今の名は」
「その名を呼ぶのは止めなさい!私はグランゾート………」
ガシャン、とイアンはグランゾート侯爵夫人の前の鉄格子を蹴った。
「それでは女と呼ぶ。お前はもう爵位も無い罪人………敬意等お前に使うのも烏滸がましい」
「っ!」
「ミリアーナを誘拐した容疑は、もう証拠も集めてある。お前がグランゾート侯爵邸の駒を使い、ミリアーナ誘拐を手引した。そして回り回って、グランゾート侯爵家に関係の無い奴を雇い、ミリアーナを監禁………そうだな?」
「し、証拠…………?そんな証拠ある訳ないわ!」
「お前の駒全て、投獄しているんだがな」
「……………え……?う、嘘……」
「お前は金を散財し、グランゾート侯爵領の財政も底を付き始めたのを隠す必要があった………それが、自分の娘に使う金の浪費が嵩み、ミリアーナに本来使う金を巻き上げては、娘に使う事で、娘を財政が裕福な家に嫁がせようと考えた」
「……………」
グランゾート侯爵夫人の顔色が血の気が引くかのように、冷や汗が溢れ出していた。
「そこで、俺がミリアーナに一目惚れし、婚姻の申し出をした事に乗っかろうとしたんだろう?俺は准王族。世論は当人達を無視し、王太子派とマーシャル公爵派が出来ていて、考えようによっては、俺を政権争いに勝たせ、娘を王太子妃にすれば、一生遊んで暮らせる、とでも思ったか?女」
「っ…………」
「お母様………お母様!私は王太子妃になるわ!マーシャル公爵様の妻になって、お母様を楽にさせてあげる!」
リリシュの戯言もここ迄来ると、突っ込む事も面倒になってくるイアンは、リリシュを無視し続けた。
「生憎、俺は王位継承権なんぞ要らんし、公爵位で充分なんでね、国の運営なんて王太子が頭を悩ませてやっていけばいい」
「おい………イアン……お前、何て事言うんだ……」
「本当の事だ………それでお前はミリアーナを誘拐し、行方不明にしておけば自然と娘と俺が結婚させられるとでも思った様だな………お前自身、結婚商売で売られた結婚だったんだから」
「っ!…………そ、そんな事迄調べたの………」
「愛情なんて無い結婚で、やっと後継者を産めて、益々お前の欲望は、金と地位になった。男爵だったお前の父の地位は、貴族では最低地位で、領地等小さな村だけ、親戚筋のグランゾート侯爵は裕福な領地だ………結婚商売にさせられた事も嫌だったんだろうな……だから、旧姓を言われて激怒する」
「だから何だと言うの!地位を………金を求めて何が悪い!」
貴婦人らしくなくなっていくグランゾート侯爵夫人に、リリシュは見たくない様子だった。それをリリシュ自身に同じ様な考えを刷り込まされていたのだ。自分を見ている気にでもなったのだろう。
「グランゾート侯爵家に男子を産んであげたのよ!後継者は出来たじゃない!だから、もう要らないのよ!グランゾート侯爵もあの娘も!私のリリシュの邪魔だったのよ!勉強も、教養も、何をやらせてもリリシュより上手かった………直ぐにリリシュなんて見向きもしなくなる!ただ顔だけ良い馬鹿な娘を、賢く出来ないなら地位に縋るしかないでしょ!いい気味だったわ!行方不明にしている間中、ありとあらゆる男達の…………」
ガシャン、ガシャン!
「ひぃっ!」
グランゾート侯爵夫人が言おうとした言葉に、イアンの怒りは最高潮となる。
何度も鉄格子を蹴り、剣も抜き、鉄格子の隙間から剣をグランゾート侯爵夫人に突き刺す勢いだった。
「黙れ!これ以上ミリアーナを辱めるとお前の喉にこの剣を突き刺すぞ!」
「ひ、ひぃぃぃっ………お、お助けを………王太子殿下!」
「…………俺に助け求められてもねぇ………悪いけど、お前の罪は消す気ないよ。死罪にならないとは思うけど、此処に居るマーシャル公爵に判決前に殺されたくなかったら、ミリアーナ嬢の事を貶さない方が身の為だよ」
レオンもグランゾート侯爵夫人を擁護する事は全く無かった。
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