誘拐された令嬢は英雄公爵に盲愛される【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 朝からもまた犯されるミリアーナ。
 そして、また客を取らされていく、と心を折られて3ヶ月。気が狂うこの日々に精神は病んでいっていた。
 翌日の朝から夜ベッドを共にした男に貪られた後、風呂場でも犯され、客を取る為の準備をさせられていた。

「今日も稼げよ、お嬢様よ」
「俺達ゃ、大金持ちになってきたな」
「あぁ、だがそろそろ場所変えねぇと捕まっちまうぜ」

 定期的に場所を移動しているのはミリアーナも分かっていた。
 男達に、毛布で包まれて運ばれた事も一度や二度ではない。そしてその場所はまたミリアーナには分からない様にされる程、男達は警戒していた。
 男達は誰から逃げているのか、そして何故ミリアーナはこの男達に捕まった状態で、犯され続けて生き長らされているのか分からないままだった。

「明日には次の予定地に場所移すからな」
「了解」
「じゃ、客入れるぞ」

 リーダー格の男は、客寄せだけでなく次に隠れる場所探しや他の男達を従わせているのだけは、ミリアーナもこの3ヶ月で分かってきたが、だからといって5人共にミリアーナを犯すので、嫌悪感は常に積み重ねられている。

『ぐわぁぁぁぁっ!』

 しかし、この日リーダー格の男の呻き声を上がる事から始まった。

「な、何だ!今の声!」
「見てくる!」
「あぁ!俺達は逃げる準備を………」

 ドカドカと階段を上がって来る音は1つ2つでは無かった。そしてまた男の呻き声と、怒鳴り声がミリアーナの耳に届く。
 目隠しされたミリアーナに確認する術は耳からの情報でしかない。

 ドカッ!

 思い切り部屋の扉を開けまくる乱暴な音が近付いて来ると、ミリアーナは男達に抱き抱えられる様にしてベッドから持ち上げられた。

「動くな!」
「「「!」」」

 部屋に入室してきた男の声は、ミリアーナが聞いた事の無い声だった。
 その声でミリアーナを抱き上げている男の動きは止まる。

「彼女を下ろすんだ」
「な、何の事ですかい?これは病気の妹でして、何でそんな武装して俺達を取り囲むんで?」
「お前達に、誘拐監禁、婦女暴行の容疑が掛かっている。下ろさなければ生命を奪うぞ?」
「クソッ!逃げるぞ!」
「うわっ!」
「ぐわっ!」

 バシュ、バシュ、と空が切れる音が、ミリアーナの耳元で聞こえた。

「痛ぇ!痛ぇよ!」
「助けてくれ!俺は頼まれただけだ!」
「生命だけは………」
「言い逃れ等させるか!拘束しろ!」
「「「「はっ!」」」」

 声だけでは確信は無いが、ミリアーナは助かった、と思えた。
 誘拐に監禁、婦女暴行だと言われた言葉は、この5人の男達を罰してくれる人が来た、と分かるからだ。

「ミリアーナ嬢ですね!」
「……………ひぃっ………は………あぁ……あ……」
「落ち着いて!助けに来た!大丈夫だから!」
「直ぐに医者を!過呼吸を起こしてます!ミリアーナ嬢、ゆっくり深呼吸して下さい!」

 今、ミリアーナにとって、男という生き物が怖くて仕方ないのだ。
 目隠しを取られ、取ってくれた人物も男で見知らぬ者が剣を腰に装備し、顔を近付かせられたので、ミリアーナは恐怖心から過呼吸に陥ってしまった。

「ミリアーナ嬢!大丈夫だから!」

 しかし、ミリアーナは痙攣を起こし気を失ってしまう。

「直ぐに邸に運ぶぞ!サンチェス!此処の処理は任せた!」
「分かりました、閣下。お任下さい」

 ミリアーナが包まれた毛布の上から、閣下と呼ばれた男のマントを掛けられ抱き上げられると直ぐに馬車へ乗せられた。
 3ヶ月振りの外の空気をまとい、風がミリアーナの頬を撫でていても、気を失っているミリアーナにはまだ気付かれてはいない。

「こんなに痩せて………ミリアーナ………可哀想に………」

 愛おし気に膝上で横たわるミリアーナの顔を見つめる男は、優しく髪を手櫛で漉いた。

「もう安心してくれ、俺が守るから………急いで戻ってくれ!」

 ミリアーナを知っているかの様な口振りの男は、一際大きな邸へとミリアーナを連れて行った。

「ガーブル!医者と直ぐに女性物の服を一通り揃えろ!あと料理長に精の付く料理を作るように言え!」
「はい!閣下!」
「メアリ!優秀な侍女を集めろ!ミリアーナの世話をさせる!」
「畏まりました」

 豪華な調度品に囲まれた部屋へと男はミリアーナを連れて来ると、ベッドへと寝かせた。

「旦那様、侍女達を集めました」
「…………俺以外の男は近付かせるな……俺も近付かない方が良いだろうから、俺とミリアーナの橋渡しをメアリが責任持って担当してくれ」
「ミリアーナ様は………」
「…………恐らく犯されている………心身共に疲れて傷付いているから、男は怖い筈だ………医者も男だろうが、侍女達に囲まれていたら少しは治療が出来るだろう。ミリアーナが気が付いたら知らせてくれ」
「畏まりました」
「俺は、ミリアーナ嬢の父君に書簡を送る為に執務室に居る」
「はい」

 ミリアーナが目を覚ましたのは、暫く経ってからだった。

「…………ん……」
「気が付かれましたか?ミリアーナ様」
「…………こ、此処は………」
「ミリアーナ様をお助けになられた、マーシャル公爵家の邸でございます」
「…………マーシャル………公爵………え……?」
「今は、何も考えずごゆっくりお身体をお休み下さい………脱水症状と栄養失調の為、ご無理をなさらない方が宜しいかと………旦那様であるマーシャル公爵閣下には、ミリアーナ様がお気付きになられた事、お伝えしてまいります」
「……………えっと……貴女は……」
「私は、マーシャル公爵家に仕える侍女長のメアリと申します。ミリアーナ様のお世話をさせて頂きますので何でもお申し付け下さいませ」
「ありがとう、メアリ……………助かった……のね、私………」

 ベッドの毛布から手を出して顔を覆ったミリアーナはポロポロと涙を流し、止める事が出来なかった。
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