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デイルの過去と積年された恨み

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 コルセア国王とデイルのは似ている様で似ていない。
 コルセア国王は、モルディア皇国の滅亡を望むのは、モルディア皇国のが欲しいのと違い、デイルはモルディア皇国に利用され続けられた後の恨みだ。
 モルディア皇国の皇族は神力を持つ。その神力全てを滅ぼしたいデイル。

「積年の恨み、そしてマシュリーを奪った恨み……………絶対に許さん」

 そのは、デイルの出生に関係があった事は今はデイルしか知らなかった。
 デイルの父は今や行方も分からない。叔父であるジェルバの国王とは扱いが違い、デイルもまた、その境遇に身を置かれていた。同じ2代前の国王を祖父に持ち、大叔父が王太子になった頃より前から、冷遇されていたデイルの血脈。それはデイルの祖父に問題があったのだ。
 およそ100年前の事、モルディア皇国からの侵略で、幼い頃であった為、王族のを差し出せ、とモルディア皇国から言われ、デイルの祖父が差し出された。祖父は奴隷となり、の宝石、モルディア皇国により『虹色の涙』と称された物を搾り取られる。だが、デイルの祖父は大人になりジェルバに帰って来た。を隠すように数札持ち帰り、そのは祖父、父、デイルに継承されてきたのだが、ジェルバ国に帰って来た祖父には、民だけでなく王族達も歓迎はされなかった。逃げてきたというその祖父に、またジェルバに報復の様に侵略されまた民を奪われるのではないか、と牽制し冷遇されていたのだ。
 王族でも貴族でもない娘と結婚し、子供をも産まれたが、その産まれた父にも祖父同様に蔑まされてきたのだ。だが、悪いのはジェルバではない、と信じていたのは祖父が持ち帰ったの存在があったからだ。
 その本は『虹色の涙』の研究資料。ジェルバはモルディアに利用されている。欲しがる分だけ涙を出させられ、死ねば解剖され、最後迄として扱われずに生命を終える。そんな研究資料を祖父がジェルバに持ち帰ったのだ。研究資料は全部ではないかもしれないが、あまりにも残酷でデイルが、父から引継いだ時、益々モルディアに恨みを積重ねた。
 そんな暗黒な気持ちを持ちながら、幼少期を過ごすデイル。王族も貴族も冷たく城には入れなかったデイルに、ジェルバの世継ぎ、ザナンザに会う機会が来る。同じ様に金の髪、金の瞳の美少年。将来有望の王子と顔立ちが似ているが、境遇の違いに嫉妬するデイル。歳も近く、2人で居ると必ず比較された。

『デイルは、いつもこの街を見て何を思う?』

 ザナンザは、迫害を恐れながら国の王になる為に何が出来るかを常に考えている男だった。デイルがザナンザに出会う前から、父からを見ていたデイルは、ザナンザの甘い考えに付いていけなかった。

『………狭いな……て思うぐらい』
『私は、いずれこの壁を取壊し、迫害がされない国にしていきたい』
『無理だろ、俺達は……強くなきゃ………』
『そうだよね………だから手伝ってよ、デイル……同じ王族なんだし』
『…………え?』
『おかしな事言ったかい?だって、曽祖父は同じ人だ、はとこなんだから…………周りではさ……何かと言われたりしてるみたいだけど、君は君だろ?』

 ザナンザは、とよくデイルに言い聞かせていた。親族だという事よりも、友人として付き合える仲にはなったが、デイルから見ればザナンザは優し過ぎたのだ。

『デイル、私に何かあったら、マシュリーを娶ってくれよ』
『…………マシュリー?………あぁ、王女か………会った事ないのに、決めれるかよ』

 だが、ザナンザはマシュリーを連れて来る。一目で気に入ったデイルは、翌日から手紙や贈り物をマシュリーに渡す。しかし、始めの頃は喜んでいたが、徐々にマシュリーはデイルを避ける様になる。それがデイルから見ると照れているだけだと思っていた。年頃になり、デイルはマシュリーとの結婚を打診する。

『ザナンザ、そろそろマシュリーと結婚したいんだが』
『…………う~ん、まだマシュリーは幼いから………』

 と、ザナンザはマシュリーの話しを濁す様になっていく。ザナンザやデイルが青年になる頃には、デイルの祖父の事は風化され、もう口にする者は居なくなり、デイルも城に入っても、冷たい目線は無くなっていた為、国王にもマシュリーとの結婚をお願いしに行くが躱されてしまう。
 そんな頃、デイルはザナンザとマシュリーとの会話を聞いてしまった。

『1度、しっかりデイルと話し合ってくれ、マシュリー………嫌なら嫌、とはっきり言わないと、デイルには伝わらない』
『嫌です!会いたくありません!嫌いなんです!気持ち悪くて、怖くて……』
『私も、断わるに限界なんだよ………先日、父上にもお願いして来てたんだ、はっきり断らないと結婚させられるぞ!?いいのか、マシュリー』
『絶対に嫌っ!!お父様にお伝えします………お兄様にもご迷惑お掛けして申し訳ありません』
『…………全くだよ…………思い込みが激しい男だから、最近私も付き合いを考えたくなってきている……だが、彼も王族だし、また迫害される様になったら、は第一に守らなければならない……だ』

 デイルはザナンザの言葉が突き刺さる。友人として付き合っていたのではないのか、と。表向きでは温厚で、空気の読める気の利く男が、妹の前でデイルの祖父の事を言った様に見えたのだ。貶された様な気がして、デイルはザナンザを蔑んだ。そして、国王に進言する。

『見物の為に、今度のアガルタへの【輸出】現場をザナンザ様に見てもらえばいいとおもうのですが、如何でしょう。次期王になる方ですし、アガルタの使者に顔を見知ってもらった方が良いかと』

 と、そしてアガルタへ、宝石の希少価値リストを渡し、アガルタとの交渉をするデイルとデイルの父。

『ザナンザは………ジェルバ跡継ぎ1人が居ればいい………連れてってやってくれ………アガルタ国王に献上させてもらう』

 そして数年後、ザナンザはデイルの企みも知った上で、拉致される前に自ら生命を断ったのだ。デイルに遺書を送られて来たのは、ザナンザが亡くなった翌日。

『君が何を企んでいるかは、私はもう知っているが生憎だったね………私は、君の思い通りになる前に先に。君がジェルバを去るなら、……だが、君のしていた事を国の民は知る事になるだろう』

 マシュリーに知られる訳にはいかなかった。デイルがジェルバを出たのは、ザナンザが亡くなった数日後だった。
 だが、ザナンザの遺言にある、という結果は。ただ、ザナンザは妹を守る為にを着いたのだった。
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