117 / 126
コルセアと再戦
116
しおりを挟むルカスはマークと共に、モルディアー二の城に帰省した。
「マシュリー!」
「ルカス様!………お会いしたかった……」
「抱き締めたかったの間違いじゃない?」
抱き締めて、お互いの温もりを感じるのは、約3ヶ月振りだ。その間、『皇太子妃懐妊』をひた隠しにさせていたルカス。
「意地悪です、ルカス様」
「ゴホンッ!」
「………あぁ、父上、母上、ご挨拶遅れ申し訳ありません」
ルカスはマシュリーから身体を離し、皇帝と皇妃の前で頭を下げた。
「…………で?何度か話しは聞いていたが、コルセアとの国境の街人は避難はさせておいた。だが、此方に来るという情報は確かか?」
「操作しました。それを信じるかは、コルセア国王の匙加減ですが、更に確証させる餌を撒こうかと」
「…………それは?」
「皇太子妃懐妊祝賀祭です」
「…………内密にしておいてくれ、と言ったのはコレか!」
「附属付で、皇太子妃はジェルバ国王女と付けます」
「…………なるほど」
「ジェルバからコルセアへ戻るとしても、アガルタ経由で帰るでしょう。コルセア、アガルタ国境を挟む様に大きな川がありますし、橋を新たに作ったとしても、俺達がモルディアー二に着く方が早く、その間に此方は準備が出来ますからね」
「ジェルバはもう攻めないとみているのだな?」
「念の為に将軍2人は待機を」
皇帝は、頷いて立ち上がった。
「ルカス、任せる………場合によっては国境内に入られるかもしれんが、コルセアが来るなら追い返せ!2度と来れない様にな」
「はい!」
♡♤♡♤♡
百合の間。久々のマシュリーとルカス。マシュリーは精神だけのルカスにはほぼ毎日会ってはいたが、実体の温もりは久々だ。百合の間に入るなりイチャイチャ始め、カレンは冷たい目で、若い侍女達はうっとりと見ている。
「あ、そうだエリス」
「はい」
「マークが、エリスに会ったら伝えておいてくれ、と言った言葉があったんだが、今伝えていいか?」
「……………あ、はい」
「『愛してる』だとさ………今日はあいつも久々だろうから、エリス休みにしていいぞ」
「!!………マ、マークが………」
ルカスによりマシュリーは抱き締められ、エリスに伝言ではあるけれど、マシュリーはルカスの口から、別の女に『愛してる』という言葉を口にされ面白くないのか、ふくれっ面だ。顔を手で覆い、照れているエリス。仲間の侍女達にも冷やかされている。少し膨らんだエリスのお腹は、幸せの象徴だ。
「カレン、休ませてやってくれ………今日は……明日以降は、今迄通りエリスが無理せぬ程の仕事をな」
「畏まりました………エリス、マーク様の所へ行ってらっしゃい」
「ありがとうございます、ルカス様、カレン様…………申し訳ありません、姫様」
「…………久々ですもの、わたくしは大丈夫よ」
一礼するエリスには、笑顔で見送るが、エリスが百合の間を出て行くと、マシュリーはふくれっ面に戻る。
「ルカス様」
「マシュリー、悪阻はまだある………のか?」
ルカスは、マシュリーのお腹を擦りながら、顔を覗き込むと、ふくれっ面のマシュリーに言葉が吃る。
「ルカス様、マーク卿からの伝言ですし、エリスは悪阻も酷くて、なかなかわたくしの世話等出来ず、久しぶりに会ったのは存じていますが………でも、ルカス様のお口から、他の女性に『愛してる』等と聞きたくありません!!」
「…………あぁ……ごめんごめん……これでもかなり、マークには世話になってたんで、エリスの顔を見たら言わなきゃな、とずっと頭の片隅にあったんだよ…………心が篭ってる訳ないだろ……それに………アレはマークへの仕返しでもあるから………」
「仕返し?」
「…………日頃の嫌味の数々の仕返し」
「ルカス様が原因ではないですか」
「…………カレン、皺増えたか?」
「「ルカス様!!」」
その夜、房事はしないが、百合の間でそのまま夜を過ごすマシュリーとルカス。入浴や食事以外は常に寄添って、お腹を擦りに来るルカスに、マシュリーは言葉でなくても、愛情は伝わるのだと知った。
「今………4ヶ月?」
「そうですね、入りました………悪阻、ていろいろな症状があって、驚いてましたわ」
「………そうか………あまり、母上を困らせるなよ」
「…………まぁ……困らせてる方が仰っいます?」
「俺がマシュリーを困らせてるのは、特に夜の話だろ?」
「……………そ、そうですが……」
「この子が、俺達の房事に参加する訳じゃない」
「……………ルカス様………んんっ…」
押し倒されそうになり、逃げようとしたが、支えられてそのままベッドに寝かされ、キスをされたマシュリー。
「…………マシュリー、愛してる」
「………わたくしも………」
「………………」
「??」
甘い雰囲気になり、いつもなら雪崩込み貪るルカスだが、それを我慢している。
「あぁ!!…………房事したい!!」
「………プッ………我慢ですよ、ルカス様」
本来ならば、出来ない事はないのだが、激しく抱くルカスには内緒にしているマシュリー。歯止めが効かないルカスの事だから、お腹の子が心配で堪らなかった。
12
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
乙女ゲームの愛されヒロインに転生したら、ノーマルエンド後はゲームになかった隣国の英雄と過ごす溺愛新婚生活
シェルビビ
恋愛
――そんな、私がヒロインのはずでしょう!こんな事ってありえない。
攻略キャラクターが悪役令嬢とハッピーエンドになった世界に転生してしまったラウラ。断罪回避のため、聖女の力も神獣も根こそぎ奪われてしまった。記憶を思い出すのが遅すぎて、もう何も出来ることがない。
前世は貧乏だったこら今世は侯爵令嬢として静かに暮らそうと諦めたが、ゲームでは有り得なかった魔族の侵略が始まってしまう。隣国と同盟を結ぶために、英雄アージェスの花嫁として嫁ぐことが強制決定してしまった。
英雄アージェスは平民上がりの伯爵で、性格は気性が荒く冷血だともっぱらの噂だった。
冷遇される日々を過ごすのかと思っていたら、待遇が思った以上によく肩透かしを食らう。持ち前の明るい前向きな性格とポジティブ思考で楽しく毎日を過ごすラウラ。
アージェスはラウラに惚れていて、大型わんこのように懐いている。
一方その頃、ヒロインに成り替わった悪役令嬢は……。
乙女ゲームが悪役令嬢に攻略後のヒロインは一体どうなってしまうのか。
ヒロインの立場を奪われたけれど幸せなラウラと少し執着が強いアージェスの物語
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる