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屈辱的お茶会
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しおりを挟むルカスは暫くまたジェルバへ行く事になった。その前に、マークとエリスもささやかな結婚式を挙げた。
「招待客も集めなかったのか?公爵家の嫡男の式なのに」
「いいんですよ、俺は父親と継母とは仲悪いですし、立会人でルカス様とマシュリー様が居てくれてたら」
「エリスも良かったの?」
「構いません、私の両親には先日ウェディングドレス姿見せて、自治区で祝ってもらいましたし」
マークとエリスの結婚式は質素なもので、城の礼拝堂で神父を招き、参列もルカスとマシュリーだけなのだ。そしてそのまま仕事に戻るから、エリスは侍女服、マークも普段通りの服装だ。
「貴女達が良いなら……」
「ルカス様は明後日からまたジェルバですし、俺も付き添いますので………実はお2人にはお伝えしておきたかった事が………」
「何だ?」
「「妊娠してるんです!」」
「「……………は?」」
歩くスケジュール帳の様な、計画大事なマークが、恋人のエリスと無計画に子供を作る訳はない筈。それなのに、結婚前に子供を作っていた、という。妊娠に細心の注意をしていたエリスがする様には思えない。
「実は、俺からエリスに頼んでいたんですよ、『ルカス様とマシュリー様の子が出来る前に、子供を産んで欲しい』と………お互いの両親には、もっと前からそうする事を話、説得してました」
「な、何でまた………」
「乳母です、ルカス様………私、姫様のお産みになったお子の乳母になりたくて………私、カレン様みたいになりたいなぁ、て思ってたんです」
「その意志を、俺は早くに知ってましたし、俺もエリスも城に住んでますから、面倒な乳母探しをする手間もなく、尚且つマシュリー様と信頼関係があるエリスなら、ルカス様のお子を任せたい、と」
「「だから、計画的に妊娠を」」
マークらしい利便性優先の答えと、エリスの夢が合致したらしい。あまりにも誘導された気がしてならない、マシュリーとルカス。
「まさか………子供が出来やすい日をマシュリーに教えさせたのも……」
「俺がエリスに聞きまして、エリスにマシュリー様づてに、ルカス様へお話してもらう様に話しましたね」
「…………だから、この前仕事詰め込み疲れ果てた時、『排卵日の日程なら、エリスから聞いてますよ』と言って、俺に仕事切り上げさせたのか!」
「はい…………おかげで楽しんだでしょ?翌日、あんなスッキリとしたルカス様見たの久々でしたし」
「「……………」」
踊らされた、とマシュリーもルカスも思った。マークの計画に、ハマったと思ったら、もう後は戻れないという事に、マシュリーはもう何も言えない。
「だから、質素な結婚式にしたんですよ……エリスの悪阻も辛そうですし」
「え!!」
「隠すの大変でした~」
マシュリーは全く気付かなかった。エリスを隠すように侍女達が動いていたのは気になったが、それ以外マシュリーは気にもしなかった。
「まさか、わたくしだけ知らなかった?」
「申し訳ありません、姫様」
「びっくりしましたわ………でも悔しいわ……気が付かなかった事に………おめでとう、エリス」
「ありがとうございます、姫様」
「マーク卿、エリスを宜しくお願いします」
「はい………マシュリー様…………ルカス様は放心状態ですね………ほら、そろそろ行きますよ、仕事溜めてジェルバに行く気ですか?呼び出し掛かってるんですから、準備もしないと!」
「くそっ!!絶対にお前に仕返ししてやるからな!!」
「…………はいはい……ルカス様単純だから、俺を負かすなんて無理ですよ」
「……………腹黒め」
「ありがとうございます」
「褒めてねぇ!!」
礼拝堂から、百合の間に戻り、マシュリーは侍女達から謝られた。
「「「「申し訳ありませんでした!」」」」
「…………びっくりしましたが、いいですわ……嬉しい事ですし………エリス、子供産まれたら、抱かせてね」
「…………はい!」
ジェルバへ再び旅立ったルカスを見送ったマシュリー。ジェルバへ行ったのは、アガルタ国が壊滅に近い、と報告が上がったからだ。ツェツェリア族が数人、アガルタから逃れて来たという情報も入り、偵察に行くというルカス。レナードも部下を引き連れ、コルセアへ向かっている。
また騒がしくなる国境付近の情勢に、マシュリーは心を痛めた。
「今日、ツェツェリア自治区へ行ってもいいかしら」
「本日は午後から、公爵家の夫人の方々がお集まりになるのでは?」
「…………あ、そうだったわね…それ迄に帰れば……」
「ご心配は最もですが、マシュリー様のお母様もお越しになりますし」
「……………そうね、お母様とお話出来れば良いけど」
だが、マシュリーにとっては、あまりその会は好きではなかった。ツェツェリア族に対する風当たりもまだあるからだ。皇太子妃になったマシュリーの母として、ジェルバ国王妃、ツェツェリア知事夫人になり、ジェルバ公爵夫人と呼ばれる様になった母は肩身が狭い様で居心地いい場所ではないからだ。
皇族専用庭園でのお茶会で、初めこそ楽しみにしていたマシュリーだったが、腹の探り合いで、楽しむ事等出来なかったのだ。
「エリスは参加するの?」
「私ですか?」
「マーク卿と結婚したのだし」
「私は侍女ですから………公爵夫人だなんて、柄ではありません………マークもそんな位置に私を置きたくない、と言ってますし」
「そう…………でも無理しないでね、マーク卿のお義母様のモルディア公爵夫人も来られるから」
「大丈夫ですよ、関わりたくない雰囲気を出されると思いますので」
だが、そうではなかった事を痛感する。
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