105 / 126
虹色の涙
104
しおりを挟むこの『虹色の涙』でどうやって判別するのか全くわからないルカス。
「ルカス様、この石を手に持って下さい」
「持てばいいのか?」
「はい」
ルカスは手に包むと、手から温もりを感じ、手を広げる。すると、七色に光っていた物が、緑と透明のグラデーションに変わったのだ。
「な、何だ!これ!」
「え~っと、ルカス様は風属性と光属性ですね………初めてですよ、2色見たの………陛下は緑1色でしたし」
「お、おい!俺は以前もマシュリーの宝石は触ってたぞ!何でこんなに事になるんだ!」
「え!?…………それはですね………ちょっと待って…………っ!………あった!今からそれ言います!」
グダグダな説明をする辺り、レナードもよくは分かっていないらしく、資料をガサガサと捲っては説明を始めた。
「えっと………モルディアの皇族達が封印されてしまい、ツェツェリア族の宝石の意味を無くしてしまったのと、制御の研究しても、それを調べる術を無くし、研究は頓挫したそうです………それで、侵略した過去に後悔をした過去の皇帝は不名誉を消し去り、古代文字の使用を禁止し、現代の文字を浸透させ、古代文字を読む事も禁止した為に、モルディアでは読める者が居なくなって、研究していた内容も全て闇に…………と」
「…………阿呆だな………俺の祖は……」
「それで?ルカス様が光と風の属性が分かった所で如何するんだ?」
「制御する宝石の色の相性だ。」
「「相性?」」
ルカスは思い出す。戦いの場で火矢を放つ兵の手解きで、コントロールを促したのを。その矢の火力が大きくなって、敵陣営が殲滅したのだ。
「………あ、火は風に煽られると強くなるよな、火力」
「………あ、アレですか!」
「ちょっと!弓兵の……お前だ!試してくれ!」
「は、はい!」
その兵士は『虹色の涙』を持つ。
「熱っ!」
彼が触れた『虹色の涙』は赤1色。
「火属性………」
「そうなんです、触る者によって、石も温度が変わるし、制御する為の宝石の色も分かるんです」
「そういえば、俺が試したのはマシュリーの血から出来た宝石だった………赤だったから割れたのか?」
「かもしれないですね………城でも何人かに試してもらいましたが、色が違う物に込めると割れましたね」
「なるほど………それで制御出来たら楽だな…………マーク、お前のが気になるんだが」
「……………俺ですか!?」
「お前、両目の色違うし、髪も中途半端だし」
「あ!俺も気になる!次はマーク!お前だ!早く持て!」
集まっていた者達も気になるのか、興味津々で見つめていた。しぶしぶマークは石を手に取ると、ルカスやレナードがマークに質問をしてくる。
「熱いか?」
「冷たいか?」
「…………温度は感じないですね」
「「見せろよ」」
「………………な、何だ……これ」
「光と…………黒は何だ?レナード」
「………文献によると闇ですね………」
「………光と…………闇…………プッ!何だ、その極端な属性!!」
「知りませんよ!!俺だって分かんないんだから!!」
「でも、待て……レナード………マークって、根暗だよな」
「暗いっすね」
「俺に嫌味言う内容も暗い時と、嬉しそうに言う時あるよな?」
「ありますね」
「「マークの性格じゃねぇのか!?」」
「失礼だな!おい!」
兵士達も何故か納得する頷きを繰り返し、マークにじとじとと嫌味を言われていたのは、ジェルバ内の事に留める事にしたルカス。根に持つタイプの為、それ以上穿り返すと、大抵ルカスに回って来るからだった。
判別が終わった頃、ジェルバの大臣にその話をしたルカス。
「…………知りませんでした、そんな力が……古代文字の本は多くありますが、書かれていた内容は、モルディア皇国からの迫害内容の物が多く………コルセアやアガルタより、恐ろしい国だと………モルディアの神力の為だったのですね」
「モルディアー二の義父上にも、我が父から話はあるとは思いますが、帰ったら私からもジェルバでの話をすると思います………我が祖達がして来た事でしたが、代表して私からジェルバ国民全員に謝罪を申し上げたい………」
ルカスは大臣達に頭を深く下げた。
「頭をお上げ下さい、ルカス殿…………我々は、今モルディア皇国には感謝しておるのです…………我々の代わりに戦って下さった……怪我人は出ましたが、ルカス殿の力で死者は居りません……我々の時代はそれでいいんです…………戦争は嫌なものです……憎しみと悲しみしか生まぬ………勝った側はいいでしょう………だがその中にも亡くなる者は居る筈だ………その者の家族は喜びませんからな……」
「…………だが、私は………守っても………敵だと言うだけで、憎しみと悲しみを生んだなのです」
「…………それなら、誇れる国を作ってくだされ………戦いの無い、平和な国を」
「……………努力します」
もう一度、ルカスは頭を下げたルカス。だが、静寂だった部屋が、騒がしくなった。廊下から慌てる様に、バタバタと走る音が響いたのだった。
8
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる