【完結】鬼畜皇太子にロックオンされまして…………

Lynx🐈‍⬛

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拮抗の中で結婚式を

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 マシュリーのウエディングドレスが出来上がった。その姿を百合の間で、カレンと仕立て屋の微調整で縫製中だ。

「マシュリー様はお胸が大きいので、その分、腰はもう少し締め付けが必要ですねぇ」
「………苦しいのだけど……」
「結婚式の間だけは我慢して下さいな」
「無理です!これ以上は!」

 肩が出て、胸を強調するドレスの為、胸の谷間と、ギリギリに胸の蕾さえ出てしまうのではないか、と締め付けられるは、脇から肉を寄せ上げられるは、マシュリーは苦しくて仕方ない。その分、腰から下はシフォンの裾だ。スカートには刺繍が細かく施され、マシュリーのふわふわした雰囲気にマッチしている。

「あと、2cm…………」
「駄目っ!無理!」
「マシュリー!!」

 バンッ!

「!!」
「………………あ………」
「………ルカス………様……」

 『駄目、無理』という声が廊下に聞こえ、ノックもせずに、百合の間の扉が慌てて開かれる。そんなマシュリーの部屋に無礼をするのはルカスぐらいしか居ない。

「何ですか!ルカス様!!急に開けて!!」

 カレンもびっくりして、挨拶よりも先に怒りの声が飛ぶ。

「………………マシュリー………な、なんて綺麗なんだ………あぁ…………癒やしだ……」
「おかえりなさいませ、ルカス様………心配しておりましたのよ?」
「…………ただいま………カレン、抱き着いていいか?」
「……………私にですか?」
「誰がカレンに………マシュリーに決まってるだろ!」

 イチャイチャ雰囲気が否めないので、カレンは嫌味で返しただけだが、ルカスはその嫌味は聞き流す。

「駄目ですよ………今、微調整でマチ針等ドレスに刺さってますから」
「………………押し倒したいんだ!」
「それですが、結婚式迄は薔薇の間と百合の間の扉行き来はご遠慮頂きます」
「…………何故だ!」
「マシュリー様のウエディングドレスをご覧になって分かりませんか?肩、首筋、胸元、背中、所有痕を残されてはマシュリー様の肌の美しさが半減されます!表向きではマシュリー様はですから!」
「……………ドレスの中ならいいじゃないか……」
「鬼畜ルカス様が、を守ってきた事がですよ、1!!」

 そう、散々マシュリーもカレンも、他の侍女達も、ルカスからのキスマークの痕をどう隠そうか、阻止しようかと、ルカスにお願いしてきていたが、付けまくるルカスに、マシュリーは着たいドレスを着れなくなっていたのだ。付けれる所は付けまくるルカスからの痕を隠すにも限度があり過ぎる。

「………付けたいんだが………」
「ルカス様、わたくし…………痕が付いた身体でウエディングドレスを着て、皆様に見られるのは……………恥ずかしくて………羞恥心だけで気を失いそうになってしまいますわ………如何しましょう………結婚式で倒れてしまったら………モルディア皇国の民達が心配してしまうでしょう?皇太子妃は病弱なのでは、と噂が流れてしまったら……………と、思ったら……それだけでも、倒れてしまうかも………」

 マシュリーはルカスの前で倒れそうな芝居を撃つ。

「マシュリー!!」
「あぁ…………お約束して下さいませ………」
「わ、分かったから!!我慢する!!」
「「「「「………………」」」」」

 侍女達のマシュリーの小悪魔台詞と芝居に、笑いを堪えている。これでルカスが我慢しなかったら困るし、結婚式でマシュリーに対して淫靡な印象を民達に思われたくないのもあり、ルカスからマシュリーを守る計画さえしていた程なのだ。それを知っているマシュリーだからこそ、少しでも侍女達の負担を軽減させたくて、ひと芝居をしたのだ。ルカスもルカスで、この芝居に騙されてしまう程盲目的な鈍さになるマシュリーの事は、どんな些細な事だろうと、心配してしまうのだ。

「では、結婚式迄2週間、お互いの寝室の行き来、閨の行為は禁止です」
「……………ゔっ……」
「良いですわね?ルカス様?」
「キスはしたい」
「唇でしたら」
「…………………はぁ………駄目だ……触れると押し倒したくなるから、止めておく………執務室で仕事してくるよ……」

 ルカスは百合の間から肩を落として出て行く。その姿は寂しそうで、マシュリーは思わず手を伸ばしそうになるが躊躇する。マシュリーもまたルカスに甘いのだと思い知る。

「やり過ぎましたかしら………」
「いいんです!鬼畜ルカス様に、甘さは不要です!!ベッドの甘やかせば良いのですから、結婚式後はご遠慮等せず、どんどん甘やかして差し上げて下さい」
「…………カレン、真逆な事言ってません?」
「ご結婚されましたら、引き留め等致しませんよ、ご公務に支障が無ければ、どうぞお二人の甘い時間をお過ごし頂ければ良いのです」
「…………戦中ですよ?………落ち着く迄は……」
「…………そうですね……今でもジェルバ国とアガルタ国国境、モルディア皇国とコルセア国国境の緊迫感がありますものね……」

 首都、モルディアー二の民達も、その緊迫感を感じている様で、落ち着きが無いのだ。その雰囲気の中での結婚式で果たして、少しでも戦を忘れ楽しませられるのかが、マシュリーは心配だった。
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