79 / 126
ざまぁみやがれ!
78
しおりを挟むその日の午後、ルカスはマシュリーの部屋のクローゼットの中のデイルからの贈り物の数々と、他に保管してあった物を掻き集めさせた。
「ルカス様、何をされるのです?」
マシュリーだけでなく、アナやエリスもこの気持ち悪い物達を処分したくて仕方なかったので、見たくなさ過ぎて、仕分けされている間、かなりウンザリしている顔が続いていた。
「装飾品は宝石が殆どだ……なら、アガルタ側への【輸出】分に混ぜてしまえばいい………手紙は…………ふふふ……」
「「「……………」」」
不適な笑みを浮かべ、ルカスは手紙の数通だけ持ち、服のポケットに入れる。その笑みにマシュリーやアナ、エリス達は顔を見合わせ、冷や汗が浮き出ていた。
「仕分けしたら、モルディア側の門に集めておけ………民達には手紙の内容は見られないようにしろよ」
「はっ」
「さて…………と……マシュリー、ちょっと付き合ってくれ」
「…………どちらへ?」
「牢獄」
「……………?」
城塞に新たに牢獄を作らせていたルカスは、今迄の壁の外側に壁を作り、内側の壁を取り壊し、部屋を作った。その部屋は一部牢獄にしてあり、コルセアとアガルタ側の国境に向ける様に小窓も作られている。これは、捕虜となった者達に少しでも故郷を見せるものなのかは分からないが、牢獄部分の壁は弓の攻撃範囲内の高さの階にある。戦場になった場合、牢獄に囚われている者にもその攻撃が当たる様に、その階に牢獄にしたあたり、ルカスの戦略的な考えを持つと伺える。
「姑息ですわ……」
「囚われた囚人達が味方に攻撃される事や、攻撃する者達が、味方を攻撃するとは思わないだろ?………処罰を待つ迄も無くなるからな………勿論、コルセア人はコルセア側、アガルタ人にはアガルタ側を収容するし、火を着けらたら、煙が届きやすい高さには、窓を付けていない」
城塞として、長く使える様に、と考えているのだろう。奥へ進み、アガルタの使者1行の収容場所にやって来たマシュリーとルカス。部屋に4、5人ずつの兵士が収容され、デイルは1人で収容されている。
「よぉ……」
「……………マシュリー!!出してくれ!!一緒にアガルタへ行こう!!アガルタでは俺は侯爵の地位を貰ってるんだ!分かるか!ツェツェリア族が奴隷なんかじゃないんだ!俺の妻になれば、一生平和で暮らせる!」
ルカスの声で、デイルは気が付くが、ルカスを無視し、ルカスの背に隠れる様に覗き込むマシュリーにしか視界に入っていない様で、そのデイルに怯えていたマシュリー。
「阿呆だな………お前……」
「!!五月蝿い!黙れ!………マシュリー、こんな男に騙されるな!俺の気持ちは知っているだろう?なぁ!」
「……………気持ち悪い……です……」
「マシュリー!!」
鉄格子越しに居るにしても、恐怖心が拭えず、ルカスの背に隠れてしまう。
「聞きたいんだが………そうしたら、マシュリーと少しだけ話をさせてやる」
「…………何だ……」
話をさせてやると言われ、ルカスに反応するデイル。
「ジェルバ国から出てからの生活を聞かせて欲しい………ジェルバ国を出たら、アガルタは奴隷になる者が多いと聞くが?」
「…………そんな物は簡単だ………ツェツェリア族の情報と交換さ」
「何を言った?」
「希少価値の評価分けと言えば分かるか?………俺も金の瞳でな………それを隠す為に瞳の色を変える事に成功していたから、家族全員緑の瞳にし、アガルタに行った………ツェツェリア族だと知られない様に」
「瞳の色を………変えれる?」
「…………ツェツェリア族の瞳は一色じゃないからな、アガルタ人の緑に合わせればそれだけである程度は騙せる」
瞳の色を変える事が出来るとは思わなかった。その色で産まれたならそれを受け止める事が当たり前だったツェツェリア族の民達は、色を変えようとも思っていない。あとは涙を人前で出さなければ、他の人間とは変わらないのだから。
「それで、王族に取り入ったのか……」
「あぁ………同族の奴隷になった奴等を犠牲にしてな………ザナンザもその1人さ」
「……………え……?」
「…………マシュリー、知らないだろ?……ザナンザが俺と親友?周りは馬鹿な奴等ばっかりで、まんまと騙されてくれたさ………ザナンザはなぁ……俺を監視してたのさ……俺が1人になると、マシュリーを傷付けるんじゃないか、とな………だから利用した………3年前、希少価値を付けたのは俺の親父だ、それをアガルタに売ったのさ、金の瞳は王族の象徴、人数も少ない………ツェツェリア族の瞳の色の把握は、王族たる者なら容易いからな……人数から割り出して、希少価値の付加価値を付けてやったのさ!…………ザナンザをアガルタに連れて行け、とな!死んじまったが、そうなると、計画も狂ったんで、ジェルバを出たのさ………内通者が親父と俺だと知られない為に………」
「……………最低なクズだな……」
「ひ、酷い………兄様……」
この後、自分が如何なるか等、考えているのかいないのか、ボロボロと喋るデイル。
「その代わり、金の瞳の若い女……マシュリーだけは俺に寄越せ、と条件付きでな!」
「…………馬鹿だな、お前………マシュリーをアガルタに連れてったとして、アガルタの王に奪われるとは思わないのか?」
「…………王は、俺の言いなりさ………なんせ、ツェツェリア族の奴隷達を管理しているのは俺で、俺が居なきゃ奴隷達は手に入らねぇ様にしてるんだよ!」
「じゃあ、お前がマシュリーを連れて帰れなかったら如何なる?」
「……………そんな事を聞いて如何する……お前には関係ない」
「囚われの身で、如何やって帰るんだ?アガルタに」
ルカスは聞きたい事を聞き終えたが、ベラベラと喋るデイルのこの余裕に、危機感があった。
3
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
鬼畜皇子と建国の魔女
Adria
恋愛
⚠️注意⚠️
近況ボードで読みたいと言ってもらえたので、再度公開します。文章も拙く、内容も色々とぶっ飛んでいるので寛大な心でお読みいただける方のみどうぞ🙇♀️
📖あらすじ📖
かつてこの国を初代皇帝と共に建国した魔女がいた。
だが、初代皇帝が身罷ったあと、皇族と魔女は仲違いをし、魔女は城を去る。今となっては建国神話として語り継がれる昔話。
だが、ある嵐の日、部屋のバルコニーにいた私に落雷があった。それが原因で前世の記憶を取り戻した私は、己がその魔女であったことを思い出す。
その私が新しく選ぶ人生とは――
性描写のある回には、「※」を付けています。
《閲覧注意》
※暴力、凌辱など、倫理から外れた表現が多々あります。苦手な方は、ご注意下さい※
表紙絵/史生様(@fumio3661)
孕まされて捨てられた悪役令嬢ですが、ヤンデレ王子様に溺愛されてます!?
季邑 えり
恋愛
前世で楽しんでいた十八禁乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したティーリア。婚約者の王子アーヴィンは物語だと悪役令嬢を凌辱した上で破滅させるヤンデレ男のため、ティーリアは彼が爽やかな好青年になるよう必死に誘導する。その甲斐あってか物語とは違った成長をしてヒロインにも無関心なアーヴィンながら、その分ティーリアに対してはとんでもない執着&溺愛ぶりを見せるように。そんなある日、突然敵国との戦争が起きて彼も戦地へ向かうことになってしまう。しかも後日、彼が囚われて敵国の姫と結婚するかもしれないという知らせを受けたティーリアは彼の子を妊娠していると気がついて……
断罪された悪役令嬢は頑張るよりも逃げ出したい
束原ミヤコ
恋愛
4月1日、無事に書籍が発売となりました!
発売お礼と致しまして、小話を追加しました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです!
有難い事に、こちらの作品書籍化企画進行中のため、3月4日に引きさげとなりました。
書籍化にともない改稿をかなりしておりまして、既読の方にも楽しんでいただける内容になっていると思います。
番外編も書きましたので、よろしくお願いしますー!
沢山読んで下さった皆様のおかげです!感謝しております!
今後とも、よろしくお願いいたします。
アリシア・カリスト公爵令嬢はレイス・コンフォール王太子殿下の婚約者だった。
嫉妬に駆られて王太子殿下と仲睦まじかった聖女であるユリア・ミシェルを害しようとした罪で断罪され、斬首された。
それが前回の私。
今回の私は、もうなんにもしたくない。嫉妬とか馬鹿らしいし、ユリアは嫌いだし、レイス様も大嫌い。
できれば王立学園にも行きたくない。海は日焼けしちゃうから、できれば森が良い。森で静かに暮らしたい。
結局逃げられなかった公爵令嬢と、前回の記憶のある王太子殿下の話。
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
【R18】聖女のお役目【完結済】
ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。
その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。
紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。
祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。
※性描写有りは★マークです。
※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる