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使者の傲慢
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「………如何だった!?」
黙って、コルセア国の使者達の、宝石選別を見ていなければならなかったジェルバ国側。コルセア国の使者達は、コソコソと話をしている。
「……………今年は駄目だな……黒が半分以上ある………よって、黒と茶以外の民を50人は寄越せ!」
「そ、そんな無茶な!!ツェツェリア族の民の大半は黒か茶系の目の者が多く、それは仕方なかったではないか!宝石の量が増えたのだ!仕方ないであろう!!」
「コルセアだけではないのだ!アガルタやモルディアへも輸出している!民を奪われたら、他へも輸出出来ん!!」
「コルセアはそんな事は関係ない………それなら金の瞳の者を渡せ、それで奴隷20人に減らしてやろう………俺は寛大だからな、国王も金だが、国王を奪っては、ジェルバ国は成り立たないのであろう?他の金の瞳の者を出せ!居るであろう!」
ジェルバ国王は手に力拳を作り我慢をしている。毎年、こんな様な使者が来ていたのなら、どれだけ我慢強い人なのか、と思えてしまう。
「金の瞳の者は居ませんよ、国王以外は」
「何だと!?コレを王1人で出したと言うのか!!」
「そうですよ………何故そんなに金の瞳に拘るのかは分かりませんが、その内民の中から、金の瞳の者が産まれるかもしれませんよ?それ迄待っては?民を沢山連れて行って子孫でも残してくれるのですか?コルセアでジェルバ国民同士の夫婦で」
なるべく、コルセアの意図を探り入れていくルカス。奴隷にするのなら奴隷同士で結婚させ、子供が出来てもコルセアは損は無い筈なのだが、予想以上の下衆な使者だと知る。
「奴隷は死ぬ迄奴隷!子供作る暇等与えぬ!見目がいい奴は、娼館行き!子供出来たら仕事が出来なくなるからな!」
「……………その者の行き場は?」
「そんな事聞いて如何する………そうかお前の女が奴隷にでもなったか?………いい気味だ!お前の女が見目のいい女なら娼館行きで、宝石を作らせながら、コルセアの民の慰み物よ!子供出来たら堕胎させられる事になっている!」
使者はルカスにされた腹いせに暴露する。奴隷になった民の末路が想像はしていたが、実際に口にされると腹立たしい。
「その宝石は如何なるんだ?民は奴隷に死ぬ迄開放されず、その者達が作った宝石は如何してる?」
「武器になるのだ!希少価値の無い宝石は武器にする!そして、この大陸を支配する!アガルタには負けておれん!希少価値の高い宝石を作る奴隷は、一生檻の中で貴族達の慰み物となり、宝石はその貴族の象徴になるのだ!金の瞳の者は王への献上品!ジェルバ国王では歳を取りすぎているからな、コルセア国王は若いのがご所望さ!」
「…………だが、陛下しか金の瞳の者は居ないんだ、諦めて頂こう………宝石は手に入るのだから、満足出来るでしょう……」
「知らんと思ったか?ジェルバ国王!お主に子供も居る筈だ!子供を見せろ!」
ルカスを貶して気を良くしたのか、ベラベラと喋る使者。従者達も反抗される訳は無いと思っているからか、ニタニタと笑っていた。
「生憎でしたね………俺がジェルバ国王の息子………ただ1人のね……残念、俺の瞳、黒でしたね~」
嘘も方便とはこの事。確かに息子になる予定。だが、娘婿だが。
「き、金の瞳は!親の瞳の色を遺伝するのでは無かったのか!!」
使者は、予想外に息子と名乗る目の前の男ルカスに、度肝を抜かれる。
「母上似でね………そうですよね?父上」
「…………あ、あぁ……」
ジェルバ国王も、そういう手でマシュリーという娘を消した事は、功を奏したと思い、同意する。その事で、頭が回らなくなった様で、使者は民を奪っては行かず、宝石だけを持って行った。
「ふぅ…………ちょっと危なかったな………」
「何がちょっとですか!!焦りましたよ!」
「マシュリーの存在を知られるよりずっといい………それより、本当に国王、喉は大丈夫ですか?」
「……………助かった………感謝する……咄嗟に出た言葉には笑いを堪えるのが辛かった……まだ息子ではないのにな…………はははっ!」
だが、ホッとしたのも束の間。ルカスは表情を変える。
「休んでいる暇はありません!国王!王妃!直ぐに馬車へ!臣下の方達も家族と共に移住準備を!」
残る者はジェルバ国民の2割程だ。その者達を残し、恐らく日を空けずコルセアの使者が来るだろう。コルセア国が求める【輸出量】では無いからだ。それをまた求め、再び訪れると踏んだルカス。アガルタに関しては、現時点で無視をする事に決めていた。
急ぎ馬車や荷台に荷物を乗せ、ルカスはマークを暫くジェルバ国へ残し、モルディア皇国へ国王と王妃を連れ出立した。
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