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使者の傲慢

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 ジェルバ国王の執務室に入るルカス。促されソファに座ると、開口一番でジェルバ国王に報告する。

「マシュリーの件ですが、先日から彼女は皇妃教育を行っています」
「…………皇妃……教育…………ルカス殿は本当にマシュリーを妻にする気かね?」
「はい、本気です」
「……………ふぅ………それでは、ツェツェリア族の王の象徴である金の瞳の継承は諦めるしかないのか………」

 仕方ない事なのか、とジェルバ国王から言葉が漏れた。

「本心では反対ですか?」
「…………ツェツェリア族の為を思えば……だが、結婚自体をする気がなかった事を知っているのでな……そのマシュリーがその気になっておるなら仕方ない、とは思っている」
「両親は、マシュリーを気に入ってくれてます…………種族別にはなろうとも、奴隷制度廃止を掲げた時点で、皇族だろうと他貴族であろうと、異種族間の結婚はあっても良かろう、という意見はありました。それで私が率先するつもりはありませんでしたが、マシュリーに一目惚れしたのです………国王が不安であれば私とマシュリーがその不安を取り除きましょう」
「…………マシュリーを宜しく頼む」

 真剣な眼差しのルカスにジェルバ国王は頭を下げた。

          ♤♤♤♤♤

 ルカスがジェルバ国に来て1週間程経った。ルカスとマークはジェルバ国の臣下に扮し、ジェルバ国王の傍らに控え、コルセア国からの使者を待つ。部屋の中央には大量にツェツェリア族から産出された宝石達。ジェルバ国の血であり涙である、屈辱的な結果だ。宝箱に10個。大小様々の色とりどりの宝石。

「モルディア皇国もこの量でした?」
「……………いや、宝箱1個ぐらいだった記憶あるが……」
「…………この5年程で、増やされたのだ……輸出せねば壁を壊し、民を奴隷に連れて行く、反抗的なら殺される……一時期、反抗はしていたのだが、対抗出来る兵力も無く、毎年数10人の民が連れて行かれたのだ………だから、極力反抗せぬ様、民達には話をしている」
「…………そうでしたか……」
「ルカス様、貴方も反抗的な態度は止めて下さいね」
「……………人聞きの悪い……相手によるだろう?理不尽極まりない要求なら、俺は出るぞ?」
「だから、それが反抗的だと言うんです!」

 約束の時間の1時間程前に、コルセア国の使者が20人程やって来た。身分等気にせずの様で、武装した兵士も我が物顔で態度がデカイ。
 ルカスは、兵士をモルディア皇国の兵士にさせていた。ジェルバ国王と臣下達は、緊張を隠せていない。それだけ恐怖なのだろう。

「ジェルバ国王よ、何だか街が静かだったが、宝石は集まったであろうな?」

 コルセア国の王でもなく、ただの臣下が、他国の王に、敬語も丁寧語も使わない言葉使いにルカスの顔に眉間が寄る。

「………確認するが良い」
「……………やれ」
「はっ」

 使者の後ろに居た従者は、宝石を見極める者達らしい。一つずつ確認し、宝石を抜粋している。

「今年は、金の瞳の者の宝石はいくつある?」
「……………その小さい箱だ」
「……………」

 使者は箱を開けて、数を数えた。

「まさか、これだけじゃないだろうな?………去年は30はあった!何故10個程度だ!!」
「……………ぐっ!」
「陛下!!………お止め下さい!!ジェルバ国王です!」
「だから何だ!!ここに兵力を投じてもいいんだぞ!!」

 ジェルバ国王の首を締め付ける使者。流石にやり過ぎなので、ルカスは使者の手首を捻り上げた。

「止めて頂いて宜しいですか?………この方が居られるから、これだけの宝石が集まっているのです………今迄も必要な物なのでしょう?………こんなにもの宝石………貴婦人達を輝かせる程の女性が沢山居られるのでしょうね、コルセア国は」
「ぐっ!は、離せ!!」
「陛下、大丈夫ですか?」
「…………大丈夫だ……其方も失礼の無い様に……」
「申し訳ありません………陛下の御身が大事ですから……お許し下さい」

 捻り上げられた使者はルカスを睨む。

「その男!奴隷にする!捕まえよ!」
「おやおや………私の瞳の色は黒ですよ?希少価値等無きに等しい………私の宝石もここに入っていますが、弾かれている模様……そんな男の価値等あるとは思えません」
「…………うぐぐっ……では殺せ!!」
「また、そんな理不尽な………我が国の王をお守りしただけ………閣下もそうでしょう?コルセア国の王に、首元を締め上げた私が居るとしましょう……それを助けた国王の臣下である貴方を、私を殺せ、と言われたら貴方はどう思われます?私は、陛下に手を挙げた貴方に剣を向けてもいません………心情はどうあっても、貴方は使者…………私が貴方に刃を向け殺しても文句は言われませんよ?………国から出さなければいいのだから………でもそれをするとジェルバ国を守れなくなるので、穏便に済ませよう、と私はしているのです………おかしいです?どちらが理不尽でしょうね?」
「……………もう止めよ」
「失礼致しました、陛下」
「……………私も使者殿の理不尽は大目に見ている………宝石を用意しているのだ、その仕事を全うしてはくれまいか?其方の仕事は回収であろう?」
「……………くっ!」

 多少やり過ぎた、とは思ったルカスだが、使者は引いた。だが、その場を引いただけだという事を直ぐに理解した。
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