【完結】鬼畜皇太子にロックオンされまして…………

Lynx🐈‍⬛

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ルカス、再びジェルバ国へ

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 百合の間に戻ったマシュリー。カレンや他の侍女達が、夕食の準備を完了させ、待っていた。

「マシュリー様、お顔が優れませんね……如何されました?……アナ、エリスも……」
「…………戦になるかもしれない、と聞きました……」
「…………それはルカス様から?……」
「…………はい……」
「マシュリー様………この国はこの大陸一と言われた大国……戦をし続けこの領土となり、長く戦はしなくなりました………久しぶりの戦になると、その記憶も無い者ばかり……平和に慣れてしまっても、殺し合いにならない為に、防衛には力を入れております………攻め込まれても、国境より入られる事はありませんわ」
「…………いいえ……ジェルバ国はそうやって防護壁を破られ続けた国………安心等ありません………わたくしは戦になるなら、それを止めたい!」
「…………そうですね……それが一番ですよね………」

 だが、結論等出ない。結局頭を悩まし、マシュリーは食事も喉を通らず就寝した。

          ♡♡♡♡♡

 翌朝、マシュリーが起きた頃、ルカスがジェルバ国へ旅立って行った、と聞かされた。

「え?何故ですの?」
「移住住民を早急に移動させる為に、兵を派遣し指揮を取る、と仰って夜中に旅立たれて行かれました。民の代わりに、兵を配備しコルセア国の使者を捕らえ、思惑やモルディアへの侵略意志の有無を確認する、と……モルディア皇国の兵は、ジェルバ国の兵に武装もさせるので、民達は安全に移住させる、と仰っていかれました。」
「…………教えて頂ければ、お見送りしたのに……」
「姫様が、昨日のお話で、気が重いだろうから、と…………」
「いつ帰ってくるのかしら………」
「コルセア国の使者がジェルバ国へ来た後ではないかと」
「………………」

 マシュリーは窓辺に立ち、ジェルバ国がある方角を見た。壁も見えない遥か向こうに向かいルカスは移動している。胸の前で手を組み、マシュリーは祈る様に呟いた。

「…………どうか、ご無事で………皆も無事に移動出来ます様に………」
「「姫様……」」

 アナもエリスもマシュリーを見て祈ると、カレンや他の侍女達も同じ様にして帰りを待つのだった。

          ♤♤♤♤♤

「寝みぃ…………」
「何も夜中に出発する事ないと思うんですけどねぇ」

 数台の馬車や荷台等、運んで移動するルカスとマーク。荷台の上で仮眠し、寝るに寝れなかったのか、首の関節をポキポキ鳴らして、起き上がる。

「夜中に出発したら、街一つに泊まらず行けるだろう?それに帰りは大所帯、街に寄らずに帰路に着くつもりなんだから、少しは慣らしとかないと…………マークも少し寝ろ……馬も任せとけ」
「…………では、遠慮なく」

 荷台から、馬に飛び乗り、マークが持つルカスの馬の手綱を渡すと、マークは馬から下り荷台へ寝転がる。

「責めて馬車内で寝たいんですけどねぇ……」
「文句言うな………馬車はジェルバ国王夫妻用だ」
「……………そういう気遣いが出来るなら、もう少し、マシュリー様の気持ちを組んで、直ぐに抱き着こうとするの辞めればいいのに……」
「五月蝿い……マシュリーのあのふわふわした感が俺の欲に負けるんだ!」
「…………あぁ、確かにふわふわ………」

 マークの脳内に、マシュリーを思い起こし、触れている様な物言いに尽かさず、ルカスは激高する。

「マーク!!脳内でマシュリーを汚すな!」
「………は?汚すなって言いました?ルカス様が言います?ルカス様だって、毎夜マシュリー様想像して、汚してるんじゃないんですか?だから、夜中出発する、て急遽変更したんでしょ!余計な鬱憤を考えずに済むから!」
「……………ぐっ………」
「いい迷惑ですよ、本当に………予定にはしていたから良いものの、本当だったら今頃出発だったのに………昨日のマシュリー様に抱き着いて、己の欲の捌け口に部下達を振り回さないで下さ~い」
「……………」
「で?マシュリー様には、『気が重いから』と、昨日の不安そうなご様子を気にする素振りで言葉残して、本音違いますよね?」
「………………五月蝿い!!さっさと仮眠しろ!!」

 図星だった様で、ルカスはもう何も言い返せなかった。ルカスの欲求不満が増していく。姿を見れば益々汚したくなりそうで、会わずに出発した事を、マークは気付いていた様だ。既に寝息を掻くマークに憎しみさえ覚えてきてしまうルカスだった。

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