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異国の街

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 マシュリーが見る初めての外国の街。ジェルバ国とは違う街並みや建物の外壁の色。壁に囲まれた狭い空とは違う広い空に、何処からか焼きたてのパンの香りが立ち込め、花々が咲く歩道に、目を奪われていた。

「なんて美しいの!」
「わぁ………凄い!これがモルディア皇国なのですね!」
「あ、あれ何ですかね?姫様!!」
「こら!あまり窓から乗り出さないように!落ちるぞ!」

 騎乗していたルカスが、馬車内ではしゃぐマシュリーや侍女達に声を掛ける。

「………目新しくて……つい……」
「此処に1泊する………因みに、町娘風な服は持ってるか?」
「…………持ってないですわ」
「………じゃあ、侍女の1人を連れ出して構わないか?君は残った侍女と宿屋で待っててくれ」
「「「?」」」

 宿屋に入ると、侍女のエリスを連れ、マシュリーや、アナ、自分の服を買う様に、とマークは数人の兵士と歩いている。

「エリス………マシュリー様やアナの服のサイズは知ってますよね?」
「は、はい…………で、でも私1人で買い物に行かせて貰っても良かったんでしょうか?………姫様も出たがっていたのに……」
「街中で『姫様』は止めてくださいね………身分がバレたら大変なんで………アナは、はしゃぎそうだったんで、落ち着いて買い物出来そうな、エリスを選んだんですよ………馴れない場所で迷子になられたら困りますからね」

 なるほど、と思える理屈でエリスは納得する。たった数日顔を見合わせたぐらいで、どういう性格なのか、ある程度分かるような分析をしたというのか、と思える程だった。

「確かにアナは夢中になり過ぎると暴走しますから………」
「この店にしましょうか……町娘風のドレスにして下さいね、2、3着ぐらいあればいいですかね」
「…………はい」

 数着、エリスはモルディア皇国風ドレスを選び、エリスは侍女姿から着替えて店から出た。エリスが持とうとした、服達は、マークや他の兵達が持っていってしまう。

「私持てますよ?」
「この量を持つのは大変でしょうから、持ちますよ」
「ありがとうございます」

 まだ買い物があると言うマークに付き合うエリスは、マークの気遣いに感謝する。

「マシュリー様やアナへのお土産です………パンの香りにはしゃがれていたので、食べたいのじゃないか、とルカス様が買って来るように、と仰ったので寄りますね」
「す、すいません……はしゃぎ過ぎて……」
「行きの旅路は、女っ気等無かったですから、新鮮で良いと思いますよ」

 パンも買い込み宿屋へ戻るエリス。宿泊する宿屋には、マシュリーやアナエリスとの部屋の前に、しっかり兵士も配置され、警戒は怠らない。

「只今戻りました、姫様」
「…………ご苦労様、エリス」
「あれ、何かいい匂いする」

 エリスが持つ紙袋と、服を運び入れたマークが部屋に入ると匂いが変わった為、アナが匂いを確認する。

「パンを買って頂いたので」
「まぁ………それでいい香りがしたのですね」

 丁度夕食時という事もあり、マシュリーはお腹が鳴る。

「ま、まぁ………はしたないわ………ごめんなさい」
「召し上がりますか?姫様」
「…………良いのかしら?皆さんの分は?」
「ルカス様や私の分は別に買いましたし、兵士達も分け与えていますよ……今日は初日の旅ですから、召し上がったらお休み下さい……少しですがパン以外に摘める物もお持ちしたので、ご遠慮なく」
「ありがとうございます、マーク卿」
「それでは………………あ、忘れておりました、マシュリー様」

 扉を開け部屋から出ようとしたマークは思い出した様に止まる。

「何でしょう?」
「もし、ルカス様が来ても入室許可はしないで下さいね」
「……………?」
「マシュリー様はルカス様が妻にしたがってますが、婚約もまだしておりませんし、ご自分の身をお守り下さいね………ルカス様は女性にオモテになりますので、は来るもの拒まず手当たり次第、女性を抱いてこられたなので、マシュリー様にはその毒牙の餌食になってほしくありませんから」

 マシュリーは、男女の恋愛に疎いと、マークも気が付いている。なので、精一杯の防御はして欲しいという話だ。未婚で通したい、と我を通したマシュリーに、閨のアレコレは初心者なのは想像出来た。マークの知っているルカスは閨の経験豊富でいわば上級者と言える。

「あ、あの…………それは……ルカス様には他にも女性が居る………と?」
「………ん~、今は居ない筈です………一夜限りの関係だけの女性は数知れずですし、長続きはさせなかった方なので………ですが、女性には執着する事が無かったルカス様がマシュリー様は執着なさるので、臣下の私としては、マシュリー様で落ち着いて欲しい、というか……ですから、結婚迄漕ぎ着ける迄、マシュリー様はマシュリー様の操をお守り下さい、………アナ、エリスも頼みましたよ?……失礼します」

 部屋の扉が閉まる。するとアナは黄色い声を挙げた。

って!私に彼氏居なかったら味わってみた~い!」
「ちょっと!アナ!姫様の前よ!!控えなさい!」
「…………わ、わたくしは……そういう方に求愛されていいのかしら………わたくし……知識等無くてよ?」

 あまりにも、衝撃的な事を告げられ、顔が真っ赤になり照れているマシュリー。遊び人だというルカスが、生真面目で純粋過ぎるマシュリーを何故口説くのか分からなかった。



 
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