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返事
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しおりを挟む暫くして、ジェルバ国王、ジェルバ国の重鎮達、ルカスとマークで話し合いが再び執り行われた。
「ルカス殿………マシュリーに申した言葉は本心か?」
「…………えぇ、本心ですが?………ツェツェリア族同士と結婚させたい、と仰るなら、また策を考えますが、私は冗談で彼女に告白したつもりはありません」
晩餐会で、匂わせる言葉を口にしていたルカスだが、ジェルバ国王が思っていた以上に、マシュリーが反応した事に驚き、満更ではなかったのに少々焦りを滲ませている。ツェツェリア族の長として、ツェツェリア族の男と結婚する事を望んでいたのも事実で、『未婚を通す』というのなら、貫き通してもいいとさえ思い始めていたジェルバ国王だったのだ。
「其方はマシュリーを妻にして、利用するおつもりか?」
「『利用』と言えば一部そうなるかもしれません」
「許さんぞ!!マシュリー王女は、ツェツェリア族の宝!!移住に前向きであったのに、マシュリー王女を利用に使う等、あってはならぬ!!」
「全くだ!!今すぐモルディア皇国にお帰り願う!!」
罵詈雑言が飛び交う室内。だが、ルカスは動じる事等無かった。
「モルディア皇国からの移住に関する提案について、お話させて頂くが、自治区の準備は進めています…………モルディア皇国には昔から他種族を奴隷にしてきた歴史もあり、今はその奴隷自体存在せず、異種族もそれぞれ自治区を持ち、生活をしている……だが、問題もまだ山積みなのです………それはこのツェツェリア族との問題を解決しなければ、奴隷問題の解決等しない、という事…………同じ人間で、特殊な力があるツェツェリア族に対する妬みがモルディア皇国には根強い。それは【宝石】を生みだす力………贅沢が出来る様になると、人は自分に無い物を欲する、そしてまた嫌悪感を持つ………それがツェツェリア族に対する恐怖で押さえつけた奴隷として迫害し続けた歴史がある………奴隷制度を廃止した今、今も尚ツェツェリア族との和解に至っていない………和解出来れば、我々モルディア皇国も、人種差別や格差をしない国作りが出来るのではないか、と先々代からの課題だった………先ずは、奴隷解放から始まり約100年、やっとここ迄漕ぎ着けた結果があり、私はジェルバ国に来る事が出来たのです」
「だ、だからといって、何も移住迄せずとも……」
「そ、それに王女を妻に等………」
「既に、モルディア皇国内に、数十人程の少数ですが、ツェツェリア族の者も居ります………お伝えしてませんでしたが………彼らから、迫害の状況を聞いてはいましたが、現実もっと酷かった………彼らには、先に自治区に入り、住んでもらっています………いずれは、そんな自治区等無くなってもいいような国にしたいのが、私の望みであり先々代からの望み………その為に、皇太子としての立場から申せば、異種族であろうと婚姻者が出てもいい、と思っています。現に民の中で異種族間の婚姻をしている夫婦も既に居ますからね…………長年蓄積された因縁を取っぱらい、私がツェツェリア族のマシュリー王女と婚姻を結べば、更に異種族間の人種差別や格差等無くなっていく筈………移住に関しての条件の内、言わなかった条件は、私とマシュリー王女との婚姻………そういう点では『利用』と言えるでしょう……因みに、その婚姻はマシュリー王女をこの目で確認した上で、私の独断で決めた事…………マシュリー王女から断られたとしても、移住計画は進めたいと思ってます」
「「「「………………」」」」
ツェツェリア族であるジェルバ国側からすれば、迫害を受けなくなるだけでも有り難い話であり、身の安全が確保出来るのなら願ったり叶ったりだった。
「……………ルカス殿…………我々は如何すれば良い?」
「国民への説明は、ジェルバ国の責務かと……もし、移住を拒む民が居ても尊重は必要かとは思います………移住をするのであれば早い方がいい………コルセアやアガルタの事もありますし、移住後はモルディア皇国から、兵を派遣し常駐はさせるつもりです…………侵攻されてはモルディア皇国も困りますからね」
「……………このまま、ここに住み続け、モルディア皇国の兵に守ってもらう訳にはいかないのだろうか………」
「そ、そうだ……それなら移住迄しなくても………」
「………奴隷制度廃止した国が、他国へ奴隷として誘拐等されては、人身売買を斡旋する輩も出てきますが?………モルディア皇国より東側にも異種族の国があり、その様な事を実行しましたが、多勢に無勢だったのか半数は連れ去られて行った過去があった為、それは薦められません…………マーク、今計画書は持っているか?」
「部屋にあります」
「では、それを明日中にはジェルバ国王や他大臣方に、目を通してもらってくれ…………私は、伝えたかった事は全て伝えた……今日はもう休ませてもらう」
「分かりました、直ぐに用意します」
「ジェルバ国王、皆様………よくご検討の程お願い申し上げる」
そう言ったルカスは、席を立ち、客間へ戻るのだった。
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