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プロポーズ
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しおりを挟む昼食を終えたルカスとマークは、部屋の外で何故か立ち尽くしているマシュリーを見掛けた。
「ルカス様」
マシュリーはルカスを見つけると、歩み寄る。その瞬間、マークは早々と立ち去ってしまった。
「マシュリー王女、如何しました?」
「…………貴方にこれを……」
マシュリーはルカスに何かを渡そうとしている。思わず手を出したルカスの手を取り、マシュリーはその手に乗せた。
「……………わたくしからのお礼です………わたくしは、自分の宝石の行先を知る由もありません………大事にしてくれているのか、されてないかも………でも、1つだけでいい……行先を知っていたくて……ルカス様の大切な方へのプレゼントとしてお受け取り下さい、わたくしからの気持ちですわ」
「……………マシュリー………貴女は何故、そんなに美しくいられるんだ………」
「…………え?」
ルカスの手にある物は、昨日マシュリーがルカスに渡した宝石。虹色に輝き、光の加減で色の印象が変わる不思議な宝石。コルセア国やアガルタ国がその生産者を欲しがる秘宝そのもの。見目だけでなく、心の美しさにルカスは先程迄の苛立ちが消えた気がした。
「君は、見目麗しいだけじゃないんだな………心が美しい……」
「……………わ、わたくし……そんな大層な事はしてませんわ………わたくしだって、嫌な事も考えたりしますもの」
慌てて、首を振るマシュリー。
「…………例えば?」
「…………え?………例えば?」
「そう、例えば、君にとって嫌な事」
「……………き、嫌いな野菜が入ってた料理……とか………作った人嫌い!て思ってしまいます………」
「ブッ!!…………あははははははっ!!」
「!!………わ、笑わないで下さい!!」
「だって…………はははっ!!…………可愛いくて…………ははははははっ!!」
「酷いです!!お笑いになるなんて!!恥ずかしい事話たのに!!ルカス様こそ如何なのですか!?」
「……………俺?……聞かない方がいい気がするけど…………はははっ!!」
あまりにも可愛いらしい、嫌な事でルカスは笑いが止まらない。マシュリーは恥ずかしそうに、顔を赤らめ顔を手で隠している。
「…………ルカス様はその様にお笑いになるのですね…………」
「可笑しかったら笑うのは、人間なら普通だろう?」
「わたくし…………人が声高々に笑う姿を見るのは初めてかもしれません………街に出ても民達が本心で笑っているのを見た事がないので………」
「…………俺が、ツェツェリア族を救う、と言ったら、君は嬉しいか?」
「……………救って頂けるのですか!?」
「そのつもりで、ジェルバ国に来ている」
真剣な顔に変わるルカスを見て、マシュリーも真剣な眼差しになる。真っ直ぐ、ルカスを見つめ、期待する様に縋った目線だった。
「わたくしもお手伝い出来ますか?…………いえ、お手伝いしたいです!!…………違うわ!!お手伝いして頂けるのですか?」
縋っていた目が、また変わるマシュリー。自国の民達の為になるなら、自分の身さえも削る勢いで、ルカスに協力を仰ぐ様だった。
「わたくしは、知識や戦う力はありません………ですが、民達の事を守れるならどんな事にだって堪えてみせます!!ルカス様が
知恵を出して頂いてるのですか!?」
「………………参ったな………何て娘だ……」
「ルカス様?」
「…………マシュリー、君に知恵と力を与えるのは暫く待って欲しい………その前に少し時間をくれ…………君の父上や、ジェルバ国の重鎮達からも許可を得なければならない事を君に頼むのだから」
「……………はい」
真っ直ぐで純真無垢なマシュリー。抱き締めたくてウズウズするのを押し殺し、ルカスはマシュリーから離れ、急ぎ客間へ戻ると、直ぐに城から出ようと走り出す。
「何方へ?ルカス様」
「…………マークか……宝石加工の職人を探すんだが?」
「手強そうな方ですけど、落ちますかね?」
「落とす!!何としてもな」
「ジェルバ国の兵士に職人を教えて貰ってます。南側にある商店街にある店ですよ」
「仕事が早くて助かるぜ」
「何年副官してると?」
距離が無いジェルバ国は、探している店も直ぐに見つかる。店主にマシュリーから作られた宝石を見せたルカス。
「こ、これは王女様の!!あ、あんたコレを何処から!!」
「あぁ、王女から譲られた………王女に似合よう、最高級のアクセサリーにしてくれ……この大きさならネックレスがいいな」
「…………な、何と恐れ多い……」
「腕が良いと聞いたんだ、是非頼む。他に使う材料費と技術料はしっかり払わせてもらう」
「ま、任せてくれ!!ウチはいい職人揃えてるからな!」
早速取り掛かってくれた職人達。その様子を見ていても良かったが、この際に街をぶらつく事にしたルカスとマーク。
「宝石見たら、誰かのだって分かるんだな」
「それは希少価値もあるからでは?…………あの外務大臣から見せて貰ったリスト………ツェツェリア族内でも、かなり希少価値が付いていると見ていいでしょう…………俺は不安になりましたよ……モルディア皇国に移住するにしても、ツェツェリア族を守っていけるのか、と………」
「軍事力は、まだモルディア皇国の方がある…………先ずはツェツェリア族の救済だ」
ルカスは壁で狭くなった空を見上げる。壁の外にある木々の風で擦られる音さえも届かない閉鎖的な国の空は狭かった。
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