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争奪戦

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 アルフレッドが選んだ達が集まった。年齢は様々だが、結婚歴がある者は弾かれている。
 国王になるエリザベスの伴侶として、素質のある者を厳選された12人。

「あれ?11人しか居ないけど……」

 物陰から覗くエリザベスに、アルフレッドが答えた。

「何を言っている、イアンを入れて12人だ」
「え!イアンも入ってるんですか?」
「今更何を言っている………イアンはと言ってあったであろう?」

 エリザベスは、そうだった、と思い出す。モルディアーニ公爵家のになった時から言われいたのを。何故か、エリザベスはイアンは数に入っていなくて、で結婚相手を決める様な気になっていた。
 ハーレム状態のこのお見合いから、もう逃げ出したい気分でいっぱいだ。気乗り等全くせず、着ているドレスも髪飾りも適当に選んだ。ただ、まだ髪は伸びてはいないので、鬘を被っている。
 本当にこの場が嫌でため息が出てしまうのだが、イアンが居るのなら、とイアンを見たエリザベス。

「っ!」

 いつもお洒落ではあったが、昼間勉強を教えてくれた時の姿から、再びこの日会ったイアンは、着替えてエリザベスの後ろに控えている。

 ―――何、気合い入ってるのよ……美男子に拍車掛かるじゃない!

 エリザベスはイアンが美男子だと認めている。だから、最近エリザベスに触れる手に戸惑っている。侍女達から薦められた本は読破してしまった程、夢中になったからなのもある。

「如何しました?殿下」
「な、何でもないわ………」

 思わず魅入ってしまう程めかし込んでいるのだ。

 ―――夜会じゃあるまいし、気合い入れ過ぎよ!私なんて、適当に選んだドレスじゃない……

 ちょっと残念でならない。せっかくイアンがお洒落しているのに、自分は着飾っていないのだ。

「リズ?」
「あ、はい!」
「行くぞ」
「……………はい……」

 アルフレッドの腕に自分の手を掛け、会場に入ると、イアンも遅れて入場し、エリザベスから離れて控えてしまう。

 ―――あれ?イアン何で?

 傍にいつも居るのに、何故離れて行くのか分からない。11人の男達に紛れてしまった。

「それぞれ、エリザベス王女殿下に自己紹介をしてきなさい」

 モルディアーニ公爵が進行する様で、エリザベスの前に並ぶ男達。

「気に入った男が居たら召していいからな、リズ」
「しません!」

 『召す』とは、という意味だ。エリザベスは側室を持てるのだ。それは結婚相手にも出来る第一歩でもあるから、男達は気合いが入っている様に鼻息荒くしている者も居た。

「王女殿下、是非とも私をお選び下さい!………選ばれたなら、殿下に毎夜愛を囁かせて頂きます!」
「…………結構です……」
「殿下は、詩にご興味おありですか?もしご興味おありなら、私が書いた詩をお聞かせ致します」
「興味は………無いわね……」

 来る男来る男、自分のアピールに必死だ。

 ―――お父様、ばかり選んだ訳?下心丸出しじゃないの!

「エリザベス!」
「うわっ!な、何で貴方が居るの!ドーソン!」
「モルディアーニ公爵!私はドーソンを呼んでないぞ!」
「私も存じあげません!警備如何なっている!」
「きゃ!」
「リズ!」

 招かねざる男が、招待した者の中に紛れていた。ドーソンは髪型を変えて眼鏡を掛けていたが、エリザベスの前に来た時に、自らバラして、エリザベスの腕を掴み抱き締め様と、腕を引っ張っていく。
 数段高い場所に上がっていたエリザベスは、転びそうになり、ドーソンの胸の中に収まってしまった。

「へへへ………積極的じゃないか、エリザベス……このまま寝所に行ってやろうか?部屋に案内しろよ」
「煩いわね!離しなさいよ!アンタなんて嫌いって言ったわよね!気持ち悪いのよ!その見下す様な目が!エディンバラ公爵にそっくりなその顔が!」
「離せ!ドーソン!」
「………フッ……はいずれ俺の場所になるんだ!前王の王妃の腹から産まれていない叔父上は、偽りなんだよ!」
「不敬罪で捕まれ!馬鹿ドーソン!」
「痛っ!」

 エリザベスは、ドーソンの脇腹を思いきり抓り、力いっぱいに突き離す。すると呆気なく尻餅を付いたドーソンは騎士達に囲まれた。

「リズ!大丈夫か!」
「お父様!何でドーソンが居るんですか?」
「他の招待者と入れ替わった様ですね」
「リントン将軍に、警備をもっと厳重にせよと伝えよ!」

 温厚なアルフレッドが怒鳴る。娘が乱暴され掛かっていい気分ではないのだろう。

「何故俺がこんな目に遭わなきゃならない!俺は王子だぞ!」
「勘違いしている様なので、一発殴りましょうか?ドーソン」
「イアン?」

 騎士達に囲まれたドーソンの前に現れたイアンが、ドーソンの胸ぐらを掴み立たせた。

「正当な国王はアルフレッド陛下、次期国王はエリザベス殿下以外居られない………招待されてもいないのに、紛れ込もうとするその努力は尊敬して差し上げるが、殿下に触れれる権利は貴方には無い」
「は、離せっ!」
「イアン、離してやれ」
「…………陛下……」
「ドーソンを追い出せ………罪には問わないが、は許さぬ………これは国王だからではない、父親として許さぬ」

 ドーソンは追い出され、見合いどころでは無くなってしまった。

「モルディアーニ公爵、原因を突き止めよ」
「御意」
「今日の会は閉会だ………リズ、本当に大丈夫なんだな?」
「大丈夫です……痣が出来るぐらい思いきり抓りましたから」
「よくやった」
「殿下らしいですなぁ」

 お転婆だったエリザベスは健在だった、とアルフレッドやモルディアーニ公爵は感心する。
 会場を出て、アルフレッドとモルディアーニ公爵は先程の事で執務室に戻ってしまう。騎士達に招待者は追い出され、残されたのはエリザベスとイアンだ。イアンはあれから一言も喋らない。

「イアン?」
「っ!」
「如何したの?……部屋に戻るわよ?」
「………殿下は……平気なのですか?」
「うん………別に……気持ち悪いと思っただけ……子供の時からドーソンはあんな感じだったし」
「私は!」
「!」
「…………私は……平気ではありません!」
「…………イアン?」

 落ち込んでいる様な、怒っている様なイアン。それがエリザベスの心を抉られた気がした。傷付いてる、と思えてしまう。

「…………殿下を守れなかった……」
「………ま、守って貰ってるわ」
「………いいえ……守れませんでした……街中では肌を晒し、今は抱き締められるのを阻止出来ませんでした………肝心な所で………」
「イアン……そんな……誰も貴方の責任ではないわ」
「…………お傍に控えているのですから私の責任もあります………」
「な………何でそんなに生真面目なの!誰だって失敗もあるし、私が無事だったからいいじゃないの!」

 真面目なのは悪い事ではない。だが、イアンは今自分で自分を追い込んでいる。何故そんなに責任感が強いのだろうか、とエリザベスは疑問だった。

「無事じゃなかったら如何するのです!殿下は生命の危険に晒されているのです!以前も今も下心からの危険ではありましたが、貴女は1人しか居ないんです!代わり等居ない!」
「…………イアン……」

 最もの事を吐露したイアンに、エリザベスは言い返す事が出来ない。だからこそ、護身術で剣や弓で戦う術を身に付けているのに、心配させてしまったのが辛いエリザベスだった。
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