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事故後

王太子夫妻からの謝罪

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「私、ロゼッタ様に謝らなければなりません」
「…………え!?」

 突如言われた言葉。驚きを隠せないロゼッタに王太子妃は続ける。

「………私も侯爵令嬢なのはご存知ですか?」
「は、はい」
「私は、お行儀見習いもせず、王太子に見初められ王宮に入りました。だけど、爵位が低い娘が、と陰口が凄く、公爵爵位の令嬢からはよく詰られてました。それを同じ侯爵令嬢のサブリナがメイド服を着て見ていました。彼女は、メイド服で公爵令嬢達に立ち向かって行ったんです。」
「…………」
「王太子妃になった方に爵位で詰るのは間違えてる!と言ってくれました。サブリナの評判も聞いていたので目立ってましたし、同じ侯爵令嬢の立場で直ぐに仲良くなって、私の侍女に取り立てたんです………彼女は人を貶してず、侯爵以上の爵位夫人になってみせる、とよく言ってました。そして貴女の事も……」
「私の事も、ですか?」
「はい……私は姉の様に頭が良くないから、姉が困らない様に安心した地位の男性に嫁ぎたい、と……せっかく見目がいいのだから得になるし実力で、と………それが私のせいで、サブリナは公爵令嬢達に目を付けられて、サブリナは男を漁る、と噂が流れました」
「…………えっと、それはサブリナが始めたからではなく、ですか?」
「はい………私はその噂は嘘だ、と言えなかった………庇ってくれていたのに、庇ってあげられず、私はサブリナを遠避けるようになってしまって………サブリナは噂を本当にしてしまったんです………考え方も何もかも噂通りにしていきました……その頃やっと、注意したんですが……………駄目でした」
「…………そうだったんですね………」
「申し訳ありません……ロゼッタ様」

 王太子妃は頭を下げた。サブリナを気に掛けていても、自己防衛に走った結果だからだろう。でももう遅い。

「謝らないで下さい………先程も言いましたが、過ぎた事です……後悔ばかりになってしまいます」
「………サブリナがマキシマス様とお付き合いが始まって、少しサブリナ自身男漁りをしなくなった時があったんです」
「…………」

 サブリナはマキシマスを本気で好きだったのを知っている。

「旦那様になるんですよね?」
「………はい……」
「サブリナは本気だったと思います……だけど、あの噂がまた再燃してました。サブリナとマキシマス様の別れた原因は知りませんが、取られたくなかったんだと思います……マキシマス様にロゼッタ様を」
「…………え?」

 逆じゃないの?と聞き直したような表情になってしまったロゼッタに、王太子妃は微笑む。

「逆もあったと思いますけど………お姉様にもサブリナがしてきた事が知られちゃいましたからね………だから、王太子を騙したと私は思いました………馬鹿ですよね、男も女も……私利私欲ばかり………サブリナが私の侍女で王太子の近くに居る時、王太子はサブリナに色目を使ってたのを妻の私が知らないとでも思ってたんでしょうね………まんまとサブリナに騙されて……収拾つかないから裁判でも怒ってばかりで、マキシマス様にも謝らないんですよ、王太子は………浮気された私も悪いんですけどね、サブリナを助けなかったから……」
「もっと早く王太子妃殿下とお話したかったです………サブリナの事で……」
「本当ですね………私は友人1人無くしました……今更手紙等出して、返事等来ないでしょう………懺悔の手紙になりそうですし」
「……………サブリナは文句言いつつ返すと思いますよ」

 サブリナの寂しがり屋の性格なら、手紙は嬉しいだろう。王太子妃と親密な付き合いをしていたなら返す筈だ。現にロゼッタが送る手紙には必ず返事を出す律儀さもある。文句ばかりだが。

「何気ない事でいいと思います。私をお茶会に招いて謝罪された、とか………返って来るとしたら、何でお姉様に謝って貰わなきゃならないのよ!でしょうけど………」
「プッ………サブリナらしい……」
「喜ぶと思います……サブリナらしい、と言って頂ける方からなら」
「…………出してみます………お話出来て良かった……ロゼッタ様」
「私こそ、ご紹介頂いた時、如何しようかと思いましたが………」
「…………すいません……試して……サブリナが尊敬する方そのままなら、きっと噂を物色して頂けると思ったので……罪滅ぼしにしかならなかったですけど」
「いえ、感謝致します」

 王太子妃と今度こそ別れ、ロゼッタは屋敷に帰ろうと、馬車の手配を王宮の侍従に頼みに行こうと歩き出すと、近くでマキシマスが王太子と話をしていた。

「失礼致します、王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
「………あぁ、ロゼッタ」
「マキシマス、如何して此処に?」
「…………君がサブリナの姉上か……」
「はい、ロゼッタと申します」

 ロゼッタは王太子に頭を下げた。だが、王太子もロゼッタに頭を下げる。

「ロゼッタ嬢……サブリナの事すまなかった……」
「今、殿下と王太子妃との話聞かせてたんだよ」
「…………そうでしたか……」
「サブリナを追いやっていた令嬢達が居た事等知らなかったし、妃の事も知らなかった………」
「だからといって、サブリナには罪がありますから、罪は必ず償ってもらいます………それがケジメですから」
「なるべく恩赦出来るようにしよう……それしか出来ず申し訳ないが………」
「……………お気持ち感謝致します」

 王太子にサブリナが王太子妃の侍女としての働きを聞かせて貰ったロゼッタ。当初は本当に真面目で働き、男に言い寄られても靡かなかったらしい。それを聞いただけでロゼッタはホッとした。

「帰ろうか、屋敷に」
「仕事は?終わったの?」
「…………まだ」
「じゃ、頑張って……私は領地に戻るわ………イーサン達にもサブリナの事話したいし」
「分かった、じゃあ夜になる前に帰るよ」
「えぇ」

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