領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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事故後

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 領主屋敷。サブリナを見送り、翌朝ロベルトが送検される。体格もいいロベルトは、ロベルトに負けない程の達の兵士に取り囲まれながら歩かされていた。まだ逃げれるなら逃げようと、抵抗を見せていたロベルト。ロゼッタは、護送は見送ろうと屋敷の入口にマキシマスと立っていた。民衆も昨日の領主のサブリナに続き、領主のロベルトが護送されるのを聞かされてないまま見送る。

「ロベルト様は何で罰されるんだ?」
「サブリナ様と何かされたのか?」

 ざわざわとした民衆を無視し、ロゼッタは護送の担当者に、まだ逃げる気でいる事を伝える。

野放しにしないで下さい。野放しにしたら危険なので……」
「領主様の夫、ですよ…………ね?」
「………えぇ、だけの伴侶でした。離婚もしますので、お気遣いなく……この男は爵位等ありませんので」
「…………分かりました。爵位がと見なし扱います」
「ロゼッタ!ロゼッタ!助けてくれ!慈悲を!!」
「…………慈悲?3年以上与えたわ………さようなら……裁判で私が必要なら行きます、だけどそれはなので……」

 ざわっ!

「ロベルト様……ロゼッタ様に何を………」
「ロゼッタ~!!すまなかった!改める!許してくれ!」
「…………行きましょ、マキシマス」

 ロゼッタは振り向く事なく屋敷にマキシマスと入って行く。目線さえも合わせなくなったの後姿に縋ろうと、引き摺られながら護送車に運ばれたロベルト。
 裁判は何度も開かれ、どの裁判もロゼッタが被害者になり、顔を一切見る事なくロベルトは外に出る事もなく一生を終えた。

          ✧✧✧✧✧

 サブリナの裁判にもロゼッタは行っている。騙された王太子の立腹は収まらない。臣下である王宮魔道士で出世頭であったマキシマスの決まっていたポストがあったのを、王太子の権限で人事を変えた、と迄説明があった。女からすれば、色恋に負けた王太子の方もどうか、とは思うが、サブリナの王都での行いが、女達からも男達からも庇護は無かった。

「侯爵爵位剥奪、王太子殿下を騙した罪により、3年投獄の後、修道院で神に仕えよ。男との接触及び婚姻、出産は一切禁じる」
「……………」

 サブリナは前を向いて、一礼するだけだった。

「刑期を終えたら、修道院に会いに行けばいい……」
「………えぇ……縁を切らなければならなかったけど、あの子は私の大事な家族よ……」

 ロベルトとの離婚は裁判もなく、ロベルトからの承諾が取れた為、離婚が早々と出来た。それにより、マキシマスとの結婚式を急ピッチで進められた。マキシマスは結婚しても、父親がまだ現役な為、公爵の嫡男のまま、別荘から王都に通う。魔道士でなければ出来ない所業だ。通常の馬車移動であれば3日は掛かる場所にロゼッタの領地がある。ロゼッタは元侯爵屋敷を仕事場にし、マキシマスの別荘へ帰る生活をする様になった。

「2人だ!2人男を産んでもらう!」

 マキシマスの父親から、それ一択のプレッシャーは掛かってはいるものの、それ以外は王都の本邸の暮らしも快適だった。

「父上の事は気にしなくていいから」
「………マキシマスの跡継ぎと、私の領地の跡継ぎが必要だからでしょう?円満に事を運びたいのだと思うわ」

 ロゼッタが領地への愛着が強い事や、繁栄させる手腕をマキシマスの父はかっているらしく、ロゼッタが領主の立場を返納してしまえば、後釜探しが大変なのだそうだ。繁栄する領地は人気が高い。地盤が出来ているのもあるので、経営が楽だという利点もある。だが繁栄していない領地はその逆で擦り付け合いだ。まだロゼッタが20代で子供が産みやすい年齢だからこそ、言われているのだろうが、プレッシャーは無いわけでは無かった。

「こればっかりはなぁ……ロゼッタがやっと離婚出来たから、気兼ねなく子作りはしてるけど、まだその兆候は?」
「マキシマスがちゃんと解除してるなら、兆候あってもいい気もするけど?離婚出来てからまだ1週間も経ってないのよ?それ迄は、妊娠も気を付けてたし……やっぱり、ロベルトとの夫婦だった事が影響あったから………」
「……………あぁ、批難がまだ根強いからな……落ち着いて欲しいけど……」

 犯罪者、ロベルトの元妻で犯罪者、サブリナの姉の立場のロゼッタは、今王都で噂の的なのだ。判決が出てる案件もあれば、まだ裁判中のもあり、話題が出る度にロゼッタに冷たい視線が浴びせられている。実際は被害者なのだが、面白可笑しく波風立てたがる者も多かった。マキシマスの家族は気にしてはいないのだが。

「王都に来るのは構わないけど、その度に領主の仕事は疎かになるし、領主の仕事優先すると、王都で批難受けるから、それが無くならないのは辛いわね………」
「だから、別荘に住んでるのにな………」
「魔具使ってるからかしら………」
「無いと不便だからなぁ」
「………明日憂鬱……」
「あぁ………王太子妃招待のお茶会か……体のいい嫌味の会だな、きっと」

 サブリナが侍女として仕えた王太子妃から招待状が届いたのだ。だから、この日はマキシマスと共に王都に居る。

「行かないと、多分嫌味が酷くなるから行かないと……」
「大丈夫………俺の奥さんは、国一番の美女だから」
「…………マキシマスだけよ、それ言うの」
「ブレスレット通して会話聞いててやるから、何かあったら行く」
「……………女性ばかりのお茶会で、男性が出るのは良くない、て聞くけど?」
「…………まぁな」
「大丈夫よ、きっと………もう寝るわね」
「え!!シないの!?」
「明日、頑張ったらご褒美頂戴」
「労いの前払いを………」
「マキシマス、手加減なしだもの。あくび出たらどうしてくれるの?」
「……………おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 どんな意図か分からないから緊張するロゼッタ。だが上手く行けば噂も消える可能性もあるのだ。頑張るしかない。
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