上 下
41 / 49
再び現在

思い出したロゼッタ

しおりを挟む

 瓶を探し出したその夜。私室でロゼッタは入浴後、夜着に着替えて今夜起こる事への期待と恥ずかしさで顔が火照る。ロベルトとの離婚はまだだが、気分はもう独身だった。男を誘う夜着も今迄は興味等無かった。ロベルトと結婚し、数少ないが魅惑的な夜着を侍女達がロゼッタに用意はしたが、着る気にもなれず、殺風景な私室で3年寝るだけで過ごした。

「改めて、こういう夜着着ると緊張するわね………」

 大きめのストールを羽織り、肌が露出が少ない様に隠すと、ブレスレットに念じる。

「マキシマス様のお屋敷へ連れてって」

 一瞬で移動出来る転移魔具。愛用品がある私室ではないマキシマスの屋敷の客間。この部屋の方が私室に思えてしまう。

「ロゼッタ」
「…………マキシマス様?」

 マキシマスは、再会する時はロゼッタの背後から声を掛ける。それは何故か未だに分からない。振り向くと、顔が赤らむマキシマス。

「何故………夜着を着てるんだ?」
「いけませんでした?………記憶が戻るかもしれないんです……そうしたら、なるんじゃないか、と………日記に書いてあったから……実感湧きませんけど………だって、食べられそうなキス、なんて………の私は知りませんし」
「……………じゃあ、のロゼッタで一度試す?………瓶開けてからとの比較も兼ねて……」
「………はい、と言いたいんですけど、一つお話が……」
「ん?」
「流産した原因、分かりました………」
「…………殴られた?」
「…………え?」
「……いや、ロベルトの行動と、ロゼッタの性格から、感情的になって、お腹をロベルトが殴ったか蹴ったかな、と思ってた………君から言いたくないだろ?辛いのは君だし」
「……………はい……産んであげたかった……貴方に会わせたかったです……たとえ、記憶が失くなってても………」
「ロゼッタ………おいで……胸の中で泣いていいよ……」

 マキシマスは両手を広げロゼッタを待つ。マキシマスも泣きたいようだ。目にうっすら涙が溜まっている。

「マキシマス様!」
「ロゼッタ…………頑張ったな」

 泣いたところで、戻らない我が子。忘れてしまって、今後悔しても遅かったが、ロゼッタは思いのままマキシマスの腕の中で泣いた。

「…………ありがとうございます……思い出す前に知れて良かったです」
「うん………」

 ロゼッタは指で涙を拭うと、マキシマスはそれを止めた。

「?………!!」

 ロゼッタの涙を舌で舐め取るマキシマス。

「………本当、ロゼッタは涙も媚薬だな……美味しい」
「………マキシ………んんッ」

 マキシマスにとっては懐かしい媚薬ロゼッタの味と匂い。目に溜まった涙を舐め取ると、溢れた涙も舌で伝い舐め、唇へと移動した。初めて2人がキスした様に、マキシマスは目を開け、ロゼッタにキスを贈る。猛禽類の様に獲物を狙い、猛獣の様に貪るキス。ロゼッタの様子を見ながら、舌の絡め方も変えるマキシマスのキスは、早くもロゼッタを酔わせた。

「…………」
「…………どう?食べられそうなキスの味」
「………ま……参りました………もう……こんなキス……困ります……」
「何で?3年前のロゼッタだったら、もっと、て強請ってくれたよ?初めてキスした時の反応で、初々しくても可愛いけど」
「わ、私が強請った…………?」
「………そう、強請ってくれたね……瓶、開けるね」
「…………あ……」

 心の準備をしたかったロゼッタだったが、マキシマスは瓶を開ける。ふわっと温かい空気に包まれると、3年前のロゼッタがマキシマスに会い口説かれ、恋に落ちた風景が鮮明に頭の中に入る。サブリナに牽制され傷付いた顔の自分や、マキシマスからの言葉で一喜一憂する自分。日記よりイメージが付きやすく、尚且つマキシマスの思考が強かったのか、ロゼッタと居てもロゼッタへの気持ちや思考がダダ漏れだった。特に夜の房事中の思考が強く、ロゼッタの顔が赤面していく。

「やだっ!こんな風に考えながら抱いてたの!!…………は、恥ずかしい!!」
「え?まだ序の口じゃ………子供出来た時の………あぁ、コレコレ」
「…………い、言わせたの!?………やだ!この体制…………」

 脳内で侵されている感覚になり、ロゼッタの想像を遥かに越えた房事。日記以上の威力があった。言わば、男視点の無修正の房事なのだから、仕方ない。記憶は房事だけではないが、1日の終わりがほぼ房事で、見るだけで疲れたロゼッタ。見ただけで身体が疼く。3年も前の出来事ではある為、房事以外は点と点が複数の線で繋がった感じがあり、房事の光景がある為よりリアルさを感じる。

「…………わ、私…3年前みたいに出来る?」
「…………プッ……そうのは俺の役目じゃないか」
「………どうりで、私ロベルトに抱かれても気持ちよく無かったのね」
「…………ロベルト下手だったんだ!ちょっと安心したよ…………はははっ!」

 マキシマスがそもそも嫉妬した事はあるのだろうか。

「嫉妬したりはしなかった?」
「…………まぁ……3年間はかなり………部下に八つ当たりを……」
「………気の毒に……」
「…………ロゼッタ」
「キャッ!!」
「………3年間分の嫉妬、受け取るよね?」

 マキシマスに抱き上げられ、耳元で囁かれたロゼッタは、返事としてマキシマスの首に手を回した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...