39 / 49
再び現在
思い出の小瓶
しおりを挟むロゼッタはマキシマスの屋敷の使わせてもらっている部屋に来た。日記は置いておいたので、取りに来たのだ。
「本当はここで寝たいけど、日記を見たいだけだから…………不法侵入よね、これ」
机に向かって言っていたので、背後には気にしていなかったロゼッタ。しかし、背後から声がする。
「ロゼッタなら大歓迎」
「!!………マ、マキシマス様っ!」
「忘れた?ブレスレット使ったら俺が気付く、て」
「……………あ……忘れてました」
「日記を見に来たんだ……」
ブレスレットを使うと、マキシマスに伝わる事をすっかり忘れていたロゼッタ。話掛けられたその距離が非常に近く、容易に抱き締めれる隙間だった。昨夜、ロゼッタが読んだには、思い出が詰まった小瓶を受け取った日付迄。何処にしまったのか全く分からず、日記なら書いてあると思ったからだった。
「どうしても頂いた小瓶見つけたくて………」
「…………あぁ……じゃあ、ロゼッタは俺が初めての男だと分かったんだ……そして………俺が君に求婚したのは書いてたろ?」
「!!…………よ、読みました……」
「なら、こういう触れ合いも覚悟の上?」
マキシマスからお酒のニオイがする。ふわっと背後から優しく抱き締められ、それだけでクラクラしそうだった。
「…………わ、私も……3年間、人妻でしたし………経験が無い訳では………」
「………あのさ………ロゼッタ……俺………今ロベルトとの経験を聞いてる訳じゃないんだよね………」
「わ、分かっています!だから、記憶を思い出したいんです!!…………だって……再会した時………私は貴方を忘れていた………こんなに日記の私は貴方を愛してるのが分かるのに!!」
「…………………」
マキシマスは、ロゼッタを振り向かせ、抱き締め直す。
「!!…………マキシマス様っ!!」
「愛してる………ロゼッタ………離婚して落ち着いてからでいい…………何度記憶が無くなっても何度だって求婚するよ…………俺の妻にしたい………領地の事も屋敷の侍従の事も悪い様には絶対にしない!」
「…………マキシマス様のお人柄は分かっています……そんな事は心配していません……でも、私は今…………記憶を戻したい………貴方の悲しげなお顔を見たくありません!」
「ロゼッタ………」
「………帰るつもりでしたが、日記……一緒に読んで頂けませんか?」
「……………あぁ……」
ベッドで読むのではなく、ソファに座り日記を読む。マキシマスから細かい話を聞きながら、小瓶の話になった。
「俺視点での思い出だから、ロゼッタが思い出すかは分からない………しかも俺が国境に行く寸前だ…………子供を流産した原因も、記憶が無い事も探し出すのはロゼッタしか出来ない………それだけは……」
「私が、貴方に愛されていたのは分かっています……………だから、ご自身を責めないで下さい……」
話をしていたがそのまま、いつの間にかロゼッタはうたた寝をしてしまった。気が付けば朝になっていて、ベッドで寝ていたロゼッタ。マキシマスは部屋には居なかった。無断で来てしまった事もあり、ロゼッタはそのまま帰るつもりではあったが、扉がノックされ、思わず返事をしてしまったロゼッタ。
「おはようございます、ロゼッタ様」
「おはようございます、イヴァンカ……そしてごめんなさい、来ているのに挨拶もせず……」
「構いませんよ、お支度お手伝いに参りました」
「マキシマス様から聞いたんですか?居る事を」
「はい、先程。ご一緒に朝食を、と仰っておられます」
「いえ、急ですし、朝食は……帰ってから……それに、捜し物があるのでご挨拶したら失礼します」
身支度を整え、マキシマスが待つダイニングへ来たロゼッタ。
「おはよう、ロゼッタ………よく眠れた?」
「おはようございます、マキシマス様……はい、ありがとうございます…ベッドへ運んで頂いて……重かったですよね?」
「いや?重くはないよ………朝食、一緒に食べないのか?」
「小瓶を捜しに行こうと」
「…………何処にあるか分かったのか?」
「はい、多分………干潮の時に取りに行きたいので、準備もありますので失礼しようかと」
「今日の干潮はいつ?」
「昼前ぐらいですね」
「…………分かった、俺もその頃に行くから、待ち合わせね」
「え?お仕事は?」
「少しぐらい抜けたって支障はない」
何度か突っぱねたが、マキシマスは行くと聞かず、仕方なく堤防で待つロゼッタ。
「やっぱり、ここしか考えられない………」
日記でよく会っていた場所だという満潮時の堤防。満潮時に海に投げ捨てるとは考えにくいのだ。そして、日記には思い出の場所に埋めた、とあった。なら干潮時に掘り出すしかない。潮干狩り用の道具を持ち、堤防に来たが、やはり人も居る。
「領主様だぁ!領主様も貝採りに来たの?」
子供達が、食料調達の手伝いに潮干狩りでもするのだろう。数人の大人達と一緒に干潮時に合わせやって来た。
「こんにちは、領主様」
「こんにちは………いっぱい採れるといいわね」
「領主様は珍しいですねぇ、潮干狩りなんて」
「ふふふ………実は宝探しを……小さな瓶なんだけど、昔ここに埋めたの……でも、今掘り出したくて来たんだけど詳しい場所は分からなくて……もし見つけたら私に渡して欲しいのだけど」
民衆達は何やら面白そうな事なので、喜んで手伝いをかって出る。
「お手伝いしますよ!領主様」
「面白そう~!!」
「先に居る者達にも声掛けますね」
埋めたのは3年前。無いかもしれないし、潮の満ち引きで場所も変わっているかもしれない。だから民衆を巻き込んでみたものの、見つからないかもしれない。
「へぇ~、いい事考えだな、ロゼッタ」
「マキシマス様!」
「…………俺の魔力を感じるから、あるな……」
「本当ですか?」
「あぁ、俺達も捜そう。何人か部下も連れて来た」
何人か、という数ではないが、50人は居るであろう人数に驚く、ロゼッタと民衆達。人数は多い程見つけやすくなるので、助かったが、噂を聞きつけた他の民衆達も参加し始め、干潟はひしめき合っていた。潮が満ち始め掛けた頃、1人の子供が声をあげる。
「領主様!瓶見つけたよ~!」
その声で、一足先にマキシマスが駆け寄って行く。じっと瓶を見つめ、感極まった様に手を上げた。
「ロゼッタ!!見つけた!!」
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

夫が愛していたのは別の女性でした~堂々と不倫をする夫は断罪致します~
空野はる
恋愛
愛のある結婚は偽りでした。
夫は別の女性と堂々と不倫をして、挙句の果てには家に帰ってこなくなりました。
そんなある日、不倫相手の一人が家を訪ねてきて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる