領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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再び現在

思い出の小瓶

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 ロゼッタはマキシマスの屋敷の使わせてもらっている部屋に来た。日記は置いておいたので、取りに来たのだ。

「本当は寝たいけど、日記を見たいだけだから…………不法侵入よね、これ」

 机に向かって言っていたので、背後には気にしていなかったロゼッタ。しかし、背後から声がする。

「ロゼッタなら大歓迎」
「!!………マ、マキシマス様っ!」
「忘れた?ブレスレット使ったら俺が気付く、て」
「……………あ……忘れてました」
「日記を見に来たんだ……」

 ブレスレットを使うと、マキシマスに伝わる事をすっかり忘れていたロゼッタ。話掛けられたその距離が非常に近く、容易に抱き締めれる隙間だった。昨夜、ロゼッタが読んだには、思い出が詰まった小瓶を受け取った日付迄。何処にしまったのか全く分からず、日記なら書いてあると思ったからだった。

「どうしても頂いた小瓶見つけたくて………」
「…………あぁ……じゃあ、ロゼッタは俺がだと分かったんだ……そして………俺が君に求婚したのは書いてたろ?」
「!!…………よ、読みました……」
「なら、こういう触れ合いも覚悟の上?」

 マキシマスからお酒のニオイがする。ふわっと背後から優しく抱き締められ、それだけでクラクラしそうだった。

「…………わ、私も……3年間、人妻でしたし………経験が無い訳では………」
「………あのさ………ロゼッタ……俺………今ロベルトとの経験を聞いてる訳じゃないんだよね………」
「わ、分かっています!だから、記憶を思い出したいんです!!…………だって……再会した時………私は貴方を忘れていた………こんなに日記の私は貴方を愛してるのが分かるのに!!」
「…………………」

 マキシマスは、ロゼッタを振り向かせ、抱き締め直す。

「!!…………マキシマス様っ!!」
「愛してる………ロゼッタ………離婚して落ち着いてからでいい…………何度記憶が無くなっても何度だって求婚するよ…………俺の妻にしたい………領地の事も屋敷の侍従の事も悪い様には絶対にしない!」
「…………マキシマス様のお人柄は分かっています……そんな事は心配していません……でも、私は今…………記憶を戻したい………貴方の悲しげなお顔を見たくありません!」
「ロゼッタ………」
「………帰るつもりでしたが、日記……一緒に読んで頂けませんか?」
「……………あぁ……」

 ベッドで読むのではなく、ソファに座り日記を読む。マキシマスから細かい話を聞きながら、小瓶の話になった。

「俺視点での思い出だから、ロゼッタが思い出すかは分からない………しかも俺が国境に行く寸前だ…………子供を流産した原因も、記憶が無い事も探し出すのはロゼッタしか出来ない………それだけは……」
「私が、貴方に愛されていたのは分かっています……………だから、ご自身を責めないで下さい……」

 話をしていたがそのまま、いつの間にかロゼッタはうたた寝をしてしまった。気が付けば朝になっていて、ベッドで寝ていたロゼッタ。マキシマスは部屋には居なかった。無断で来てしまった事もあり、ロゼッタはそのまま帰るつもりではあったが、扉がノックされ、思わず返事をしてしまったロゼッタ。

「おはようございます、ロゼッタ様」
「おはようございます、イヴァンカ……そしてごめんなさい、来ているのに挨拶もせず……」
「構いませんよ、お支度お手伝いに参りました」
「マキシマス様から聞いたんですか?居る事を」
「はい、先程。ご一緒に朝食を、と仰っておられます」
「いえ、急ですし、朝食は……帰ってから……それに、捜し物があるのでご挨拶したら失礼します」

 身支度を整え、マキシマスが待つダイニングへ来たロゼッタ。

「おはよう、ロゼッタ………よく眠れた?」
「おはようございます、マキシマス様……はい、ありがとうございます…ベッドへ運んで頂いて……重かったですよね?」
「いや?重くはないよ………朝食、一緒に食べないのか?」
「小瓶を捜しに行こうと」
「…………何処にあるか分かったのか?」
「はい、多分………干潮の時に取りに行きたいので、準備もありますので失礼しようかと」
「今日の干潮はいつ?」
「昼前ぐらいですね」
「…………分かった、俺もその頃に行くから、待ち合わせね」
「え?お仕事は?」
「少しぐらい抜けたって支障はない」

 何度か突っぱねたが、マキシマスは行くと聞かず、仕方なく堤防で待つロゼッタ。

「やっぱり、ここしか考えられない………」

 日記でよく会っていた場所だという満潮時の堤防。満潮時に海に投げ捨てるとは考えにくいのだ。そして、日記には思い出の場所に埋めた、とあった。なら干潮時に掘り出すしかない。潮干狩り用の道具を持ち、堤防に来たが、やはり人も居る。

「領主様だぁ!領主様も貝採りに来たの?」

 子供達が、食料調達の手伝いに潮干狩りでもするのだろう。数人の大人達と一緒に干潮時に合わせやって来た。

「こんにちは、領主様」
「こんにちは………いっぱい採れるといいわね」
「領主様は珍しいですねぇ、潮干狩りなんて」
「ふふふ………実は宝探しを……小さな瓶なんだけど、昔ここに埋めたの……でも、今掘り出したくて来たんだけど詳しい場所は分からなくて……もし見つけたら私に渡して欲しいのだけど」

 民衆達は何やら面白そうな事なので、喜んで手伝いをかって出る。

「お手伝いしますよ!領主様」
「面白そう~!!」
「先に居る者達にも声掛けますね」

 埋めたのは3年前。無いかもしれないし、潮の満ち引きで場所も変わっているかもしれない。だから民衆を巻き込んでみたものの、見つからないかもしれない。

「へぇ~、いい事考えだな、ロゼッタ」
「マキシマス様!」
「…………俺の魔力を感じるから、あるな……」
「本当ですか?」
「あぁ、俺達も捜そう。何人か部下も連れて来た」

 何人か、という数ではないが、50人は居るであろう人数に驚く、ロゼッタと民衆達。人数は多い程見つけやすくなるので、助かったが、噂を聞きつけた他の民衆達も参加し始め、干潟はひしめき合っていた。潮が満ち始め掛けた頃、1人の子供が声をあげる。

「領主様!瓶見つけたよ~!」

 その声で、一足先にマキシマスが駆け寄って行く。じっと瓶を見つめ、感極まった様に手を上げた。

「ロゼッタ!!見つけた!!」

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