領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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再び現在

サブリナ追放

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 王都へ裁判を申し立てたロゼッタ。ロベルトには離婚調停の裁判だとだけ伝えている。散々、ロベルトはロゼッタに愛を伝えてきたが、何もロゼッタは感じなかった。裁判迄時間は掛かる。その間何もしない訳にはいかず、マキシマスからサブリナに会わせて欲しい、と言われたロゼッタはイーサンや他の侍従達の説得により会わせる事にした。

「ロゼッタ様………ロゼッタ様には内密にしておりましたが、医者の診断偽造の証拠です」
「…………偽造……?本当にサブリナの偽造なの!?」
「…………はい……」
「…………そんな………私は3年も騙されてたの………」

 マキシマスはロゼッタの肩を叩き、力付けた。

「ロゼッタはこのブレスレットから会話を聞いていればいい。念を送るから」
「…………そんな事迄出来るんですか?」
「………俺、一応王宮魔道士だから」

 はにかみながら、サブリナの居る部屋に入ったマキシマス。ロゼッタやイーサン達も固唾を飲み聞き入った。

「だぁれ~?」

 人の気配がしたからか、部屋の奥から出て来たサブリナ。マキシマスは黙っている。暫く沈黙が続くが、破ったのはサブリナの方だった。

「も…………戻って来た……の?マキシマス……」
「…………へぇ~……心の病だと聞いたが?何故俺が分かる?知能も5歳児、1日起きた事は全て忘れる………だっけ?」
「……………あ………」
「先日、帰って来たんで聞いたんだが、妊娠したって?」
「…………え?……えぇ……」
「ロベルトの子供なんて、よく産む気……いや、よくアイツと寝たな……」
「…………」
「…………お前が嫌いなタイプじゃなかったか?頭が弱い、筋肉しか自慢にならない男」
「し、宗旨替え?かし………ら」

 焦りの声が聞こえる。サブリナはマキシマスに怯えている様だ。

「俺は、ロゼッタの前から消えろ、と言った筈だが?」
「わ、私だってお姉様が大事だわ!ロベルトを嫌っているのに結婚なんて!お父様もあんまりじゃない!!」
「大事…………ねぇ……なら、何故俺を貶め、国境に追いやった?調べは付いてるぞ?」
「…………え?」
「王太子に、俺がお前を追い回して復縁を迫った、て?いつ?何処で?」
「……………ひぃぃぃ!!」
「俺はお前の過去の男等気にしなかったし、ただ性欲を発散し、後腐れが無さそうな女だけを選んでた………それがお前は始めこそはそうだったが、徐々に他の俺に寄る女を牽制していった………お前をこの地に送って来た時には既に、お前には心等なかったんだよ!」
「………………やっ……来ないで!………私が……悪かったわっ!」

 逃げようとサブリナはしているのだろう。その距離を縮めていくマキシマス。

「何でも謝れば許されると思うと?忠告はした…………お前は罰してもらえ……王太子を騙した罪を償う事はしてもらわなければならないな……その前にお前はロゼッタと縁を切らせてもらう………お前が嫌いで馬鹿にした平民にな………どうだ?侯爵でも嫌がっていたお前が平民になるのは………」
「待って下さい!!マキシマス様!」
「!!ロゼッタ!」

 サブリナの前に立ち塞がるロゼッタ。肩で息を吸い、走って来たのだろう。サブリナを庇う。

「待って………下さい……」
「ロゼッタ、サブリナにされた事を許すのか!?」
「…………違います!罰するのはせめて子供が産まれる迄………王太子様を騙した事は重罪です………でも……」
「どいて!!…………どれだけ善人なのよ!!…………妊娠なんてしてないわ!ロベルトが妊娠させた子を偽って、産んだ様に見せかけて、お姉様に押し付けるつもりだったのよ!!ロベルトと一緒にこの地に縛り付けるつもりでね!!私はこの土地も爵位も真っ平よ!」
「サブリナ…………」
「私はね!善人振り撒くお姉様が大ッ嫌いだったの!何でも出来て、お父様の信頼も侍従達からの敬いも一心に受けて、私はいつもお飾り!民衆も私はいつもて呼ばれ、名前なんて呼ばれない!本当に嫌だったわ!王都に行っても、お姉様の噂はあったのよ!………もう!ウンザリ!!」
「サブリナを拘束する………取り敢えず、屋敷内の鍵が掛かる部屋に入れる…………ロゼッタ、いいな?…………ロゼッタ?」
「…………は、はい………」

 侍女達に、何とか支えられながら、私室に連れて来てもらったロゼッタ。

「ロゼッタ様、お気を確かに…」
「…………大丈夫よ……記憶が無いけど、サブリナに罵倒された事があったみたい……覚悟はしていたけど駄目ね………」
「ロゼッタ様は悪くないです!」
「そうですよ!3年前、本当はお助けしたかったのに、出来なかった私達が悪いんですから!」
「あ!それは!」
「はっ!申し訳ありません!」
「大丈夫よ」

 コンコン。

 扉がノックされ、イーサンが入って来る。

「ロゼッタ様、サブリナ様とロベルトは兵を配置して監視下に置かれました。マキシマス様は、護送の手配をする為に、今王都へ」
「そう……」
「あと、ご伝言が………疲れただろうから、今日はゆっくり休んで欲しい、と……マキシマス様のお屋敷でも、こちらの屋敷でも、ロゼッタ様が一番落ち着ける部屋で、との事でした」
「…………一番落ち着ける部屋………そう、ありがとう、イーサン………貴方達も今日は疲れたでしょう?休める時に休んで?明日からまた事後処理しなければならなくなるだろうから」
「はい、おやすみなさいませ」
「えぇ、おやすみなさい」
「…………」

 ロゼッタはブレスレットに念じた。
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