領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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再び現在

マキシマスの屋敷で

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 縋る様に泣き叫ぶロゼッタを優しく抱き締めるマキシマス。落ち着く迄、ロゼッタの髪を撫でてくれる。

「………うっ………ぐっす………」
「思い切り泣け………記憶が無い間の事は……小瓶を探せばいい………辛い思いをまたぶり返すかもしれないが……」
「私………どんな辛い事が………」
「…………俺が分かるのは、君の父上が亡くなってからなんだと思う………」
「父は如何なって亡くなったんですか?」
「君の父上は、ロベルトの両親に会いに行く途中、行方不明になり海で発見された………代理人や、仲介人を連れて行ったかも分からないが、父上以外の人間は見付かってない。」
「……………」
「ロゼッタ!!」

 ロゼッタは力尽き、床に倒れそうになった。マキシマスに支えられ怪我をする事もなかったが、ロゼッタの震えが止まらない。

「…………ロベルトが殺した………?父を……」
「………実は、俺が居ない間、部下に調べさせていた。結果はまだ見ていない………ロゼッタの記憶が無いのに、俺が見る訳には、と……紐解きは、当事者の君の役目だ……」
「…………でも、記憶が無くても……ロベルトと離婚するのに、理由が出来ますよね?」
「………見る?」
「……………はい」

 マキシマスにソファに座り待っている様に言われ、待っていたロゼッタ。だが、あまりにも懐かしいロゼッタの愛用していた調度品に感激して、先日は見なかった物を見ていない回る。

「…………懐かしい……殆ど此処に運んだのね…………コレ、何かしら……」

 身に覚えの無いノートがあり手に取った。

「日記?………が書いたみたい……………え?」

 ロゼッタが書いたとされる日記。そこにはロゼッタがマキシマスの屋敷に来てから半年程の日付だ。マキシマスが思い出の小瓶を残した様に、ロゼッタは日記を残していた様だ
。日付は毎日ではないが、ロゼッタがマキシマスを好きになっていった経緯が書いてある。サブリナの事やロベルトの事は良く書いてはいない。

「自分の字だし………マキシマス様と会った時から…………やだっ……呼び捨てした時期も…………でも……後半はお父様の事ばかり……」
「ロゼッタ?」
「ひゃっ!」
「…………プッ……驚かせるつもりはなかったが………何を見てた?」
「知ってました?私が日記を書いてたの」
「………日記?………知らない………そうか残してたのか…………」

 マキシマスは目頭を抑えた。嬉しかったのだろう、ロゼッタの目線で残されていたのが。

「マキシマス様?大丈夫ですか?」
「…………あぁ……大丈夫だ……今夜は君の父上の事故報告ではなく、コレを見ないか?一緒に………何もしない……ベッドで並んで読んで、眠くなったら一緒に寝よう………3年振りに君の香りで眠りに着きたい」

 ロゼッタは、なんて優しい口調で語る人なんだ、と心から温かくなった。ほんわかとした表情に目には涙を溜め、顔を赤らめたマキシマス。ロゼッタが知る男は薄情で軽薄、自己中心的なロベルトしか知らない。好きになったのも分かる。

「………はい、日記を読むぐらいなら……」

 軽装にしたマキシマスはベッドで日記の表示を見つめている。ロゼッタは夜着のしまってある場所から夜着を出し、バスルームで着替え、ストールを羽織った。自分が使ってきた調度品だ、記憶が無くなっていても、何となく分かる。マキシマスの横に並ぶと、マキシマスがロゼッタに日記を渡す。

「コレにも安息香がする」
「安息香?」
「そうそう………以前も同じ事を言ったら同じ事返してきたね、ロゼッタ………君の落ち着く香りが染み込んでるんだよ………俺がその香りが好きでね………優しい君の香りで直ぐに恋に落ちたんだ………日記にも書いてあると嬉しいが」
「…………書いてあるかもしれません……だって、今聞いても嬉しいですから」
「…………駄目だ………ベッドで読むと我慢出来なくなりそうだ……やはり俺は自分の部屋で寝るよ………」

 マキシマスはベッドから出る。

「マキシマス様?」
「…………この部屋で、このベッドで俺達は愛し合った……今ロゼッタの記憶が無いのに抱いたら、記憶を戻さなくてもいい、と思えてしまう………おやすみ、ロゼッタ……」

 ロゼッタの香りに包まれてしまえば、マキシマスは媚薬を与えられ、貪るのが分かっていたのだろう。だが、それはロゼッタにも伝わっていく。日記を開き一頁一頁、大事に読んでいった。マキシマスが安息香、と言った日も、ロゼッタは書いていて、心がときめいた。

「マキシマス様…………」

 読み終わるのは長い時間ではあったが、アルベドの話に関しては読むのが怖く、読むのを止めて、ロゼッタは眠りについたのだった。

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