35 / 49
記憶消失
サブリナの計画
しおりを挟むロゼッタが子供を産みにくい、という話を聞いたサブリナ。
「何ですって!!何やってんのよ!!種無しなんじゃないの!?アンタ!」
「そんな訳ある筈ねぇ!」
「確かめなさいよ」
「誰とだよ」
サブリナに報告したのはロベルトだ。なかなか妊娠しないロゼッタに2年も我慢して、屋敷から出れず、ロゼッタが来る時だけ馬鹿な演技をしていたサブリナも、限界だった。それもこれも、ロゼッタがロベルトの子供が直ぐに出来ると思ったからだ。
「娼館でも街の女でもいいじゃない」
「サブリナ、お前は?」
「誰がアンタみたいな男と……私は醜男は嫌いなの」
「分かった……俺もお前みたいな性悪女は好みじゃねぇしな」
その2ヶ月間、ロベルトは女を囲い、毎夜通った。娼館にも通い、子供は次期領主になるだの、愛人にしたいだの、離婚するから待てだの、と洞を吹き、3ヶ月もしない内に5人の女を妊娠させたロベルト。
「俺が種無しじゃねぇ事を証明してやったぜ!」
それにはサブリナも呆気に取られたが、直ぐに何かを閃いた。
「私に子供産ませる、て言いなさいよ」
「は?」
「多分、反対するわ………それで、『お前に子供が産めないから、他の女に産ませるんだ』てねその女達が妊娠した子供を認知させればいいのよ」
「…………なるほどな」
だが、ロゼッタは認知どころか、中絶させた。即決で慰謝料を渡し、手切れ金を上乗せしたのだ。
「私は貴方の子供を育てる気も無ければ、認知もしない。貴方の不始末は当分お小遣い無しで居てもらうわ………離婚成立したら、貴方のご両親に請求するので…………さぞ、大変だったでしょうね?3ヶ月で5人も」
優しいロゼッタはもうロベルトと接する内は見当たらない。ロベルトだけ優しく聡明な領主ではいられないのだ。
「お前を愛してるんだぞ!子供産めないお前を思って………」
「婿の立場でよく言うわね………離婚する方法を見つけたら、直ぐに屋敷から出てって下さい」
サブリナの思惑と違った。サブリナとロベルトの子供も、ロゼッタは駄目だ、と言うのは予想通り、だが他の女との子供も駄目、というはどういう事か、と思った。
「何で他の女の子供じゃ駄目なのよ……」
サブリナは遺言書の全てを知らない。アルベドの遺言書はロゼッタとサブリナの事なのだ。ロベルトが他に女を作ったところで関係はない。領主だったアルベドの娘2人に対する遺言なのだから。
ロゼッタ自身、罪の無い子供を中絶させるのは心苦しい。だが、認知をしてしまえば母親が何かあった時、ロベルト自身が責任を取るとも思えない。そして、ロベルトの子孫を残したら、第二第三のロベルトが出来てしまうのでは、と直感が働いた。
「酷いです!領主様!この子には関係の無い事ですよね!」
「関係はありません、問題はロベルトの子供だから、認知出来ないのです。そして、引き取る事も出来ません。ロベルトが欲しければ、離婚成立したらどうぞ貴女方でロベルトを取り合って下さい。今既婚者であるロベルトに、私以外の子供が出来る事は許し難い事なのです………貴女方は騙されたんですよ……だから、中絶費用、慰謝料は私からお出しします。ロベルトとの事を無かった事にする方が、貴女方の為です」
毅然とした態度でロゼッタはイーサンに用意させた金を5人に分けた。女達は奪う様に金を持って行く。
「慰謝料も含めているので、当分の生活費もある筈…………今後一切、この事で領主である私に金を無心に来ない様にお願いします。それ以外なら、領主として対応しましょう」
女達に文句は言わせなかった。それだけ、ロベルトに腹が立ち、追い出したいのを我慢していたロゼッタの意地から、女達にもキツイ言葉を伝える。全てロベルトが悪い、と。
「本当に追い出したいわ………」
「宜しいのですか?かなりの大金です……」
「………私が使って来なかったお金だからいいの………お父様の遺産だし、また働いて貯めるわ………皆のお給料からは手を出してないから安心して」
「ロゼッタ様………」
「そんなに金があったのか、ロゼッタ」
「……………イーサン、まだ仕事が溜まってるから手伝って」
「はい」
ロベルトが影から見ていた様で、ニマニマしている。勘違いしているんじゃないか、と思うぐらい嬉しそうだ。
「おい!今夜お前の部屋に行ってやるからな!」
「来なくて結構…………あのお金は貴方や貴方のご両親から徴収する、と言ったでしょ?何なら利子を付けてもいいのよ?」
「………………ぐっ!」
「忙しいわね、イーサン」
「全くですな」
ロベルトはまたサブリナに会いに行く。愚痴りに行くと言ってもいい。
「どういうつもりかしら、お姉様……」
「分かる訳ねぇだろ、俺に」
「…………お姉様は頭がいいのよ、当たり前でしょ!」
サブリナは考え込む。
「分かった、じゃあ私が妊娠してあげる」
「お前、嫌だって言ってたじゃねぇか」
「誰がアンタと本当に寝るって言ったのよ!偽造に決まってんじゃない、アンタの妊娠させた女の1人に産ませんのよ、で私が産んだ事にする」
「ほぉ………」
「アンタは一生、お姉様と領主ごっこしてなさいよ、私は子供が産まれたら、こんな所おさらばするわ」
「へっ……離婚はするぜ……そのうちな……子供が居りゃこの地は俺のもんさ」
この2人は何処までロゼッタを縛るつもりなのか。ロゼッタが記憶が無くなってもう直ぐ3年。この2人は忘れていた。マキシマスという男を。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる