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記憶消失
苦痛しかない新婚生活
しおりを挟むロゼッタが記憶を無くし半年。相変わらず書斎と私室の行き来、そしてサブリナの新たな部屋に行く日課のロゼッタ。サブリナを診察した医者は誰もが心の病だと診察した。ロゼッタは医療に精通している訳では無い為、診察した医者達が言うなら間違いではないだろう、と諦めた。イーサンに専門の病院へ、と言われたが、ロゼッタは拒否をする。勿論イーサンはサブリナが演技をしているのも、医者を垂らし込んでいるのも知っての事なのだが、ロゼッタがサブリナを信じない限りそれは出来なかったのだ。
ロゼッタの身体は完全に完治し、記憶の消去部分以外、今迄と変わらない生活をしていた。この日も仕事を終え、私室に入ろうとすると、部屋の前にロベルトが立っている。
「…………何か?」
「仕事終わったんだろ?ロゼッタ」
「えぇ、だから何?」
「夫に対して冷たい態度じゃねぇか」
「私は貴方と結婚した事も覚えてないの」
敬語も丁寧語も使う気等、何故かもうロゼッタには無い。ただ邪魔な居候する形だけの夫。
「身体も完治したんだろ?半年待ってやったじゃねぇか、子作りしようぜ?」
「!!………止めて!!触らないで!!」
全身でロベルトを拒否するロゼッタ。記憶が無い期間の前なら、まだ我慢は出来たが、今は触られるのさえ拒否しようと、ロゼッタは避ける。
「ふ~ん、いいのか?遺言書に書かれた事を遂行しなくてもよ」
「!!」
「俺と結婚し、子供を産む……俺はいわば種馬だ……俺じゃなきゃ、ロゼッタに子供を産ませられねぇ、て事さ……お前が俺の子供産んだら、離婚を考えてやってもいいぜ?」
「……………子供が出来なかったら如何するの?」
「さぁな、そうなったらお前がしたいような離婚方法に持っていけよ。まぁ、無理だろうがな」
「その自信は何処から来る訳?」
「遺言書の効力は絶対だ」
「…………考えとくわ」
鍵を開け、ロゼッタは私室に入ろうとするが、ロベルトは立ち塞がる。
「退いてくれないかしら、私は考えると言ったのよ?」
「処女じゃねぇくせに、何純情ぶってやがる」
「!!」
鍵を開けるのを待っていたのだろう、ロベルトはロゼッタを掴み、部屋に入る。そして、ロゼッタをベッドに押し倒した。
「出てって!」
「いいじゃねぇか、半年振りの夫婦の営みじゃねぇか………それとも乱暴されてぇか?」
ドレスの胸の隙間に手を入れるロベルトは、触る訳ではなく引き裂いた。その行為はロゼッタを恐怖に落とした。半年前の恐怖心が身体の記憶があるのか身体が強張る。
「はぁはぁはぁ………相変わらず、いい身体だロゼッタ………」
「……………」
好き勝手に貪るロベルトは、自己陶酔しロゼッタの身体を舐め回す。ロゼッタからは喘ぎ声も悲鳴も出ない。ただ涙だけだった。
「どうしたよ、ロゼッタ………気持ちいいだろ?俺のは…………はぁ………はぁ……」
「……………早く………終わって……」
「ちっ!…………よがって俺無しじゃ生きていけねぇ身体にしてやる!!」
濡れる事は濡れる。ただそれはロゼッタの自己防衛に過ぎなかった。ロベルトも入る前、濡らしてから入ったのもある。そして、ロベルトの一回出した熱が残るから、渇く事はないのだ。子供を産む為だけにロゼッタはロベルトに身体を許す事は、ロゼッタの精神も病んでいくのだと、ロゼッタ自身思ったのだが、妊娠すれば開放されるなら、と2年我慢したのだ。
「何で妊娠しねぇ!!」
「知らないわ」
「仕方ねぇ、医者に見てもらうぞ!」
「…………勝手にしたら?連れて来て」
ロベルトに対する口調はもう感情さえ無くなった。ロベルトからすれば、ただ苛つく倦怠期の夫婦の会話の受け答えなんだろうが、ロゼッタがロベルトに気を遣う事等一切無い。
ロベルトが医者を連れて来て、診察をする。内診したとして、何が分かるのか、ロゼッタの月経周期や、房事の頻度、聞かれるのも億劫だった。
「………流産が関係しているかもしれませんね……月のモノも定期的にありますし、房事も頻繁ですから、もっと構造的にお子が出来にくいかもしれません」
「流産?………私、妊娠した事ない筈ですけど……」
「せ、先生!!もういいや!分かったから帰ってくれ!!」
「え??………ちょっとっ!ロベルト様っ!!」
ロゼッタは黙ってロベルトが追い出す医者の言葉を考えた。妊娠した事はなかった筈だ、と。だが、ロベルトとの房事の記憶は、経験済だったと思う。結婚後から半年はロゼッタの体調不良でしていない。なら、記憶が無い時に妊娠したのか。妊娠して、もしロベルトとの子供なら、産みたいとは思わないだろうし、中絶するだろうと思うのだ。遺言書の記載が『ロベルトとの子供を産む』という内容に知っていたら話は変わってきてしまうが………。
ロゼッタはその後、ロベルトに身体を許さなかった。ロベルトが来る私室には帰らず、毎夜寝る場所を変えた。
「ロベルト、悪いけど子供が産めないんだから、出てってもらって大丈夫よ」
と、結論を出したロゼッタ。だが、ロベルトは離婚を拒否する。そして、苦し紛れだろう。
「サブリナに子供を産ませればいい!」
この一言は、ロゼッタだけではない、一緒にその場に居た侍従達も度肝を抜かれたのだった。
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