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記憶消失
マキシマスの復讐
しおりを挟むマキシマスは国境に行く前、サブリナに連絡を取っていた。
「来ると思った……サブリナ」
「それはそうよ………貴方は私の大切な人だもの」
領土堺にある宿屋に呼び出せば、サブリナが来ると思っていたマキシマス。宿屋に呼び出せば、サブリナはマキシマスを求めると分かっていたからだ。
「俺を国境警備隊に追いやっておいて、大切だと?」
「えぇ、当然じゃない。どうせ、お姉様はロベルトと結婚するの。遺言書は覆せないわ。その内、ロベルトの子を産み、お姉様はこのしがないただの領主に治まり、つまらない人生を送って、貴方を忘れるわ…………私はその点違う……私は貴方を待てるもの………私を呼出したのは、私の身体が忘れられなかったんでしょう?マキシマス………愛してるわ」
サブリナは安い宿屋の一室で、マキシマスに抱き着こうと近寄る。しかし、マキシマスは火球を手に出す。
「サブリナ………ここが宿屋だと思ったか?………部下に命じて宿屋に仕立てた、単なる古い民家だった所だ。ここは、人気も無い場所。証拠も跡形もなく消し去ってやる」
「……………ひっ!!」
「覚悟は出来たか?サブリナ………」
「わ、わ、私が悪かったわ!!貴方がお姉様に靡いたのが許せなかったの!!だって、あんなに愛し合った仲じゃない!」
「…………俺にはロゼッタ以外、満足した女は居ない!」
「何で……………何で………皆して、お姉様ばかり好意を持つのよ!!私も綺麗じゃない!!」
「…………言いたい事はそれだけか?……なら、父親に会いに行ってやれ……」
サブリナはマキシマスに怯え、部屋の扉を開けようと必死になった。だが、扉は開かない様に、マキシマスは部下に指示を出して抑えている。
「お、お父様を殺したのはロベルトよ!!私を殺したらお姉様は悲しむわよ!!」
「………ロゼッタには、サブリナと縁を切ろ、と言ってある。生きていたって、お前は縁を切られ、領土から追い出され、侯爵令嬢の肩書は無くなる様に、ロゼッタは動くさ」
「な、な!お姉様がそんな事する訳はないじゃない!」
「するんだよ、お前がロベルトと手を組み、王太子を騙した罪を追求し、縁を切るとな」
「……………わ、私が悪かったわ!!謝るから!!マキシマス!!許して!!」
「…………甘い!!………サブリナ!!二度とロゼッタの前に姿を現すな!!俺が戻った時、ロゼッタの近くに居たら、ロゼッタが許しても、俺が許さない!!命が無いと思え!!消えろ!!」
「…………わ、わ、分かったわ!!お願い!約束するから!!命だけは助けて!!」
「消えろ!!」
「ひぃぃぃぃ!!あ、開けてよ!!逃げるから!!」
サブリナは逃げて行く。何処に行くかは分からない。だが王太子へ泣き付くのなら、マキシマスは命を絶て、と命じて国境に旅立って行ったマキシマス。その甘さがロゼッタを苦しめるとは知らずに………。
✧✧✧✧✧
サブリナがマキシマスに脅された後、サブリナは屋敷に篭っていた。マキシマスの部下の監視が続く中、屋敷の中でしか自由が効かないもどかしさで、化けの皮が剥がれる。侍女達に当たり散らし、ロベルトと何やら企んでる様子は、誰もが良い気もしなかった。そしてそれが、ロゼッタに対する忠誠心を増すことになった。ロゼッタの悪阻も酷くなり、侍従達は心配する。父親はロベルトでは無い、と誰もが思っていたからだ。
「お嬢様………いえ、領主様……お腹のお子は何方の………」
「………イーサン、今迄通りロゼッタと呼んで……領主て言われる程、私は出来た人間ではないもの」
執事のイーサンはロゼッタを子供の頃から知っているので、ロゼッタの変化には敏感だった。
「では、ロゼッタ様に伺います。ロベルト様の子ではない、と私共は思っております……如何なさるおつもりですか?」
「産むわ………ロベルトと結婚せざる得ないけど、離婚する糸口を必ず見つけてみせる……お父様の遺言書………必ず新しい物がある筈だもの………もしかしたら、ロベルトに奪われて破り捨てられたかもしれないけど……」
「ロベルト様に、妊娠の事が知られたら如何なさるおつもりですか?お腹が大きくなれば知られてしまいます」
「…………マキシマスの屋敷に逃げ込むつもりよ……あっちの屋敷で領主として仕事をしようと思っている………だから、イーサンの助けが必要なの………」
「やはり、マキシマス様のお子でしたか……サブリナ様にも知られないように致しませんと………」
ロゼッタは気持ち悪さを抑え、ため息を付く。ロベルトもだが、サブリナも厄介な存在になってしまったのが辛かった。
「皆には迷惑掛けるわね………何故あの子はあんな風になってしまったのか……マキシマスから聞くと、王都ではサブリナは冷遇されていた、と聞いたの………それが変わった原因かも、と私は思ったんだけど……」
「あまり悩み過ぎますと、お腹のお子に影響が………」
「そうね………早く解決策を見つけるわ」
「ご協力致します」
「ありがとう」
しかし、解決策は見つからず、ロベルトが決めた日取りになり、結婚式を挙げる事になってしまったロゼッタ。式等挙げる気はない、と突っぱねてはいたのだが、サブリナがドレスもいつの間にか用意させていた様で、式を挙げさせられた。しかし、長時間ロベルトやサブリナと顔を合わせなければならず、悪阻が酷かったロゼッタは我慢しきれず、式の途中で倒れてしまった。ロベルトとサブリナに妊娠がバレたのもこの時だった。
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