領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
23 / 49
過去

猛禽類の牙

しおりを挟む

 腰が砕けそうになると、マキシマスが支える手が、首から腰へ、腰にある手が太腿に降り、抱き上げられた。

「んんっ……」
「…………」

 声を発する事は許されていないロゼッタ。だが、腕は自由なので、マキシマスの肩を叩くがビクともしない。ソファに降ろされ、押し倒されるロゼッタ。マキシマスの唾液がロゼッタの口内へ落ちると、マキシマスはロゼッタの唇を解放する。銀糸が垂れる唇。その銀糸はマキシマスの指が拭き取り、再びマキシマスによって、唇が重ねられた。また激しくされる、と思ったロゼッタだったが、軽いキスとなる。

「………ふっ………可愛い……蕩けてる」
「……………」
「また後でね………仕事してくる。夕飯食べたら夜の事、考えといて」

 頬、耳、額、と軽いキスを落としたら、頭を撫でて離れて行った。

「……………」

 よく分からない。抱かれるのかと思ったのだ。抱き上げられ、ベッドかと思ったらソファで、ソファでまさか、と思いきや解放してくれた。説明も無い。だが、キスに夢中になって緊張感は無くなっていった。内心どうにでもなれ、と迄思った程だった。

「………優しいキスもするんだ……」

 ドキドキが止まらない。夕飯の時間迄だいぶ時間はあったが、ずっとこのキスの感触と、身体が燻る様な感覚が再びマキシマスに会う迄続くとは思わなかった。

          ✧✧✧✧✧

 夕飯の時間になり、マキシマスがロゼッタを呼びに来た。

「何してた?」
「………何って……何も……」
「ずっと考えた………とか?」
「……………」
「…………クスッ」
「!!………酷いわ!笑うなんて!」
「いや、可愛いかったから………ごめん」
「…………このまま、抱かれるのかな、て思ってたのが拍子抜けちゃって、何も出来なかった、というか……」

 マキシマスは腕に絡まるロゼッタの手を掴む。

「!!………マキシマス……」

 手を口元に持って行かれると、キスを落とされるが、次第にエスカレートしていき、ロゼッタの指を舐め、指と指の間に舌を挟み舐めるのだ。

「知ってる?………指も性感帯になる、て………想像して?……ロゼッタの身体にも似たがあるだろ?…………その………の中に美味しい甘い果実…………舐めてあげたい………あとその………」

 ブワッ、と背筋がゾクっと凍る。氷より冷たい表情なのに、マキシマスの目と手、舌は熱い。一瞬で想像して真っ赤になるロゼッタ。手を抜こうとするが、マキシマスの手は離さない。

「お………願……い………想像したからっ………離して………」
「あぁ、ダイニングに着いたね……」

 胸ポケットから見えるチーフをマキシマスはロゼッタの手に包む。唾液を拭き取ると、また胸ポケットに押し込むマキシマス。

「その気になってたら、部屋の鍵掛けないで欲しいな………就寝する頃、会いに行くから」

 そして、耳元に息を吹き掛け、更に続けた。

「鍵を掛けないでくれると、俺が如何に本気かと、分からせてあげる」

 身体が熱くて冷えないロゼッタ。アルコール度数が強いお酒を飲まされた様に、晩酌で飲んだ以上に酔ってくる。マキシマスの目線が媚薬なのでは、と思えて仕方ない。
 この日の食事は味が全く分からなかった。

          ✧✧✧✧✧

 入浴し、もう寝るだけになったロゼッタ。侍女達も既に休んでいる。鍵は侍女達が居ない時はいつもなら掛けてしまうのだが、まだ掛けるかどうか悩んでいた。

「結婚前に、房事してしまっていいの?」

 王都では、自堕落な性生活をサブリナも暴露していた。経験豊富であろうマキシマスに身を委ねておけば、夢現の経験が出来るだろう。実際にキスはロゼッタを酔わせてくれているのだから……。

「あぁ…………やっぱり怖い………」

 鍵を掛けに、ソファから立ち上がろうとした時だった。扉の外で控えめな音がコツコツ、と鳴る。まるで、猫が開けて欲しくて、前足を扉に引っ掛ける様な音だ。

「…………は、はい」

 恐る恐る、扉の内側に立ったロゼッタ。

『………俺………マキシマス……開けてくれる?』

 鍵を掛けないで欲しい、と言っていたのではなかったのか?とロゼッタは思った。鍵はまだ掛けていない。

「か、鍵は………掛けてないわ………」

 嘘をマキシマスに付くのは嫌だった。

『…………ロゼッタが開けて………ごめん……ここまで来たが、開ける度胸が無い……』

 試しているのか、本心で度胸が無いのか……。

「…………」

 扉のノブに手を掛けたロゼッタ。手は震え、身体は火照て、緊張が走る。カタカタと小さな音が静寂な部屋と廊下に響いているだろう。ゆっくりと扉を開けるロゼッタ。しかし、開けた途端、マキシマスによって勢いよく開けられた。

「!!」
「……………」

 猛獣の様な獲物を捕らえるマキシマス。ロゼッタを抱き締めると、部屋の鍵を掛けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バッカじゃないのとつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...