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過去
猛禽類の牙
しおりを挟む腰が砕けそうになると、マキシマスが支える手が、首から腰へ、腰にある手が太腿に降り、抱き上げられた。
「んんっ……」
「…………」
声を発する事は許されていないロゼッタ。だが、腕は自由なので、マキシマスの肩を叩くがビクともしない。ソファに降ろされ、押し倒されるロゼッタ。マキシマスの唾液がロゼッタの口内へ落ちると、マキシマスはロゼッタの唇を解放する。銀糸が垂れる唇。その銀糸はマキシマスの指が拭き取り、再びマキシマスによって、唇が重ねられた。また激しくされる、と思ったロゼッタだったが、軽いキスとなる。
「………ふっ………可愛い……蕩けてる」
「……………」
「また後でね………仕事してくる。夕飯食べたら夜の事、考えといて」
頬、耳、額、と軽いキスを落としたら、頭を撫でて離れて行った。
「……………」
よく分からない。抱かれるのかと思ったのだ。抱き上げられ、ベッドかと思ったらソファで、ソファでまさか、と思いきや解放してくれた。説明も無い。だが、キスに夢中になって緊張感は無くなっていった。内心どうにでもなれ、と迄思った程だった。
「………優しいキスもするんだ……」
ドキドキが止まらない。夕飯の時間迄だいぶ時間はあったが、ずっとこのキスの感触と、身体が燻る様な感覚が再びマキシマスに会う迄続くとは思わなかった。
✧✧✧✧✧
夕飯の時間になり、マキシマスがロゼッタを呼びに来た。
「何してた?」
「………何って……何も……」
「ずっと考えた………とか?」
「……………」
「…………クスッ」
「!!………酷いわ!笑うなんて!」
「いや、可愛いかったから………ごめん」
「…………このまま、抱かれるのかな、て思ってたのが拍子抜けちゃって、何も出来なかった、というか……」
マキシマスは腕に絡まるロゼッタの手を掴む。
「!!………マキシマス……」
手を口元に持って行かれると、キスを落とされるが、次第にエスカレートしていき、ロゼッタの指を舐め、指と指の間に舌を挟み舐めるのだ。
「知ってる?………指も性感帯になる、て………想像して?……ロゼッタの身体にも似た割れ目があるだろ?…………その割れ目………の中に美味しい甘い果実…………舐めてあげたい………あとその下の泉………」
ブワッ、と背筋がゾクっと凍る。氷より冷たい表情なのに、マキシマスの目と手、舌は熱い。一瞬で想像して真っ赤になるロゼッタ。手を抜こうとするが、マキシマスの手は離さない。
「お………願……い………想像したからっ………離して………」
「あぁ、ダイニングに着いたね……」
胸ポケットから見えるチーフをマキシマスはロゼッタの手に包む。唾液を拭き取ると、また胸ポケットに押し込むマキシマス。
「その気になってたら、部屋の鍵掛けないで欲しいな………就寝する頃、会いに行くから」
そして、耳元に息を吹き掛け、更に続けた。
「鍵を掛けないでくれると、俺が如何に本気かと、分からせてあげる」
身体が熱くて冷えないロゼッタ。アルコール度数が強いお酒を飲まされた様に、晩酌で飲んだ以上に酔ってくる。マキシマスの目線が媚薬なのでは、と思えて仕方ない。
この日の食事は味が全く分からなかった。
✧✧✧✧✧
入浴し、もう寝るだけになったロゼッタ。侍女達も既に休んでいる。鍵は侍女達が居ない時はいつもなら掛けてしまうのだが、まだ掛けるかどうか悩んでいた。
「結婚前に、房事してしまっていいの?」
王都では、自堕落な性生活をサブリナも暴露していた。経験豊富であろうマキシマスに身を委ねておけば、夢現の経験が出来るだろう。実際にキスはロゼッタを酔わせてくれているのだから……。
「あぁ…………やっぱり怖い………」
鍵を掛けに、ソファから立ち上がろうとした時だった。扉の外で控えめな音がコツコツ、と鳴る。まるで、猫が開けて欲しくて、前足を扉に引っ掛ける様な音だ。
「…………は、はい」
恐る恐る、扉の内側に立ったロゼッタ。
『………俺………マキシマス……開けてくれる?』
鍵を掛けないで欲しい、と言っていたのではなかったのか?とロゼッタは思った。鍵はまだ掛けていない。
「か、鍵は………掛けてないわ………」
嘘をマキシマスに付くのは嫌だった。
『…………ロゼッタが開けて………ごめん……ここまで来たが、開ける度胸が無い……』
試しているのか、本心で度胸が無いのか……。
「…………」
扉のノブに手を掛けたロゼッタ。手は震え、身体は火照て、緊張が走る。カタカタと小さな音が静寂な部屋と廊下に響いているだろう。ゆっくりと扉を開けるロゼッタ。しかし、開けた途端、マキシマスによって勢いよく開けられた。
「!!」
「……………」
猛獣の様な獲物を捕らえるマキシマス。ロゼッタを抱き締めると、部屋の鍵を掛けた。
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