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過去
マキシマスの屋敷へ避難
しおりを挟む「はぁはぁはぁ…………何処?………まだ来てない?」
人に見られない様に隠れる場所を探し、マキシマスが来るのを待つロゼッタ。すると、空間が歪み、マキシマスが姿を現した。
「マキシマス!!」
「…………ロゼッタ!!如何したんだ!その姿!」
マキシマスがロゼッタの姿に仰天した。
「………知られたの…………私が結婚間近だと勘違いされ、屋敷に祝いの品を持ち込んだ民衆から、父に………ロベルトと結婚する、て民衆に思われて………私がずっとロベルトとの婚約を破棄したい、て言っていたから、父に相手は誰だ、て………私、言えなかったから……謹慎を命じられたんだけど、ロベルトとの結婚を急ぐ、と」
「………やはり、俺が行けば良かったんだ………」
「私…………屋敷帰ったら、ロベルトに侵されちゃう……もう、子供作れ、て父に言われてしまった…………」
「……………ロゼッタ………」
マキシマスは服が汚れるにも関わらず、ロゼッタを強く抱き締めた。するとまた空間を歪ませる。気が付けばマキシマスの屋敷に居たロゼッタ。
「イヴァンカ!イヴァンカは居るか!?」
「…………は、はい!………ま、まぁ……ロゼッタ様、如何されたんですか!?」
「イヴァンカ、ロゼッタの着替えを………俺はちょっとまた出掛ける。ロゼッタを一人にするな、いいな」
「は、はい!」
切羽詰まる様な表情で緊張感を漂わすマキシマスは、服に付いた汚れを魔法で取り払うと、また転移魔法を使った。
「ロゼッタ、君の屋敷に行ってくる」
「…………え?……マキシマス?」
追い掛けようと手を伸ばしたが、イヴァンカに止められた。
「危のうございます!ロゼッタ様!」
「………で、でも………」
「マキシマス様にお任なさいませ」
「…………」
消えゆく空間の歪みの中のマキシマスは微笑みを向ける。イヴァンカに肩を掴まれ、動きを止めたロゼッタではあるが、心配だった。
「さぁ、お着替えを……マキシマス様が数着ですが、ロゼッタ様へお贈りしたいと、ドレスを作らせておりました。先日出来たので良かったです。美しいピンクゴールドの髪に合うドレスですよ、着飾ってマキシマス様のお帰りをお待ち下さい」
「…………イヴァンカは、何か聞いているの?マキシマス様から」
「暫くこちらに滞在していれば、そりゃ領主様の美人姉妹のお噂は何かと入りますよ……それにサブリナ様とお付き合いしていたマキシマス様が、ロゼッタ様に好意を寄せられたのですから、興味無い訳はありません。ここだけの話ですが、マキシマス様のお父様にちょくちょく聞かれてまして………あ、反対のお声は今の所ありませんからね!」
「…………身持ちの軽い女だと思われてるでしょうね……婚約者が居る身で、サブリナの恋人だったマキシマス様に恋する私の事等……」
「………私は、ロゼッタ様をそうは見ておりませんよ?」
イヴァンカに連れられ、部屋に入ると他の侍女達がロゼッタ用にドレスを並べていた。
「………高価過ぎるわ…………私は質素でいいの………」
「まぁまぁ、今日ぐらいは着飾って下さいませ」
「…………今日だけよ?」
着替えて待つしかなかったロゼッタ。屋敷には戻れない。戻ったらまた謹慎どころでは無くなる筈だ。
「ロゼッタ様、お茶をお持ちしました」
「…………イヴァンカ……一人で居ると嫌な事を考え込んでしまうの……話相手になって貰えないかしら……貴女の仕事が落ち着いてからで構わないから」
「お付き合い致します」
数人の侍女も話に付き合ってくれて、王都の話やロゼッタが住む街の話、久しぶりに仕事以外の話をマキシマス以外の人間と話をした気がする。
「………ん?帰られますよ、マキシマス様が」
「え?」
イヴァンカや、侍女達が立ち上がる。ロゼッタはイヴァンカが何故分かるのか分からなかった。マキシマスが帰って来るのを。
「帰った………ロゼッタは?」
「あちらに」
「……………マキシマス……」
「……………綺麗だ……ロゼッタ」
ロゼッタに背を向け、帰って来たマキシマス。目の前のイヴァンカが手を翳し、ロゼッタが居る方向に座るロゼッタを促す。ロゼッタは遅れて立ち上がるが、屋敷の事を聞こうとしたのが、マキシマスは全く別の事を言った。
「当然でございましょう?ロゼッタ様は元が良いご令嬢なんですから」
「……………ロゼッタ……綺麗だ……」
「………さっきから、それしか言ってないわよ?マキシマス」
「………あ、す、すまない………あまりにも綺麗過ぎて……」
抱き締められそうだったので、イヴァンカ達の目が気になり後ろに下がる。
「あ、あの………如何なったの?お父様は何て?」
「あぁ、今から話す……イヴァンカ」
「はぃはぃ、下がりますよ………マキシマス様、お父上様が此度の事、説明するようにとの事でしたわ………仕事を放り出したんですから」
「……………分かっている。ロゼッタに説明したら、父上に会いに行く」
「それが宜しいかと………失礼致します」
イヴァンカ達が部屋を出て行くと、マキシマスがソファに座る。
「ロゼッタも座って」
「………お茶入れましょうか?」
「いや、君の屋敷で飲んできたし今はいいよ………今から話す事は君にいい話ではないかもしれない……君の父上が、俺の父に会うのを条件に話合う……だが、ロベルトの両親と、君の父上との約束があるから、難航するだろう………俺が屋敷で君の父上とだけ話を願い出たら、ロベルトだけでなくサブリナも割って入って来てぐちゃぐちゃになったから、実行出来るかはまだ分からない」
「マキシマスは、父に何と言ったの?」
「え?………ただ、サブリナとは交際していたが、性格の不一致や価値観の違いで別れるつもりだったが、サブリナの早とちりで婚約者だと紹介されただけだ、と………まぁ、かなりご立腹だったがね………更にご立腹になったのはロゼッタの事だったが……」
「…………何て?」
「サブリナと一緒に会ったロゼッタに一目惚れをした、と……サブリナとの結婚をもう考えられなくなっている時に不謹慎だとは思ったが、サブリナには別れを伝えてから、ロゼッタに結婚を前提に付き合ってくれ、と話をしている…………とね」
「…………それでお父様は………」
「その時に、サブリナとロベルトが乱入したんだよ………それからはハチャメチャだ」
「…………話、まとまらなさそう……」
「ああ、まとまらないな………だから、言いたい事だけ言って帰って来た」
マキシマスは続ける。ロゼッタの身の安全を考え、ロベルトから守る為、別荘に暫く住まわせる。ロベルトという婚約者が居るのに、マキシマスがロゼッタを口説いたのだから、それに相当する慰謝料等をロベルト側に支払う。サブリナに関しても誤解を招いた事もあるのでサブリナにも慰謝料を支払う。ロゼッタは領主となる身ではある為、領主の任はロゼッタの意思も踏まえ今後話し合っていきたい。マキシマスの妻として、公爵夫人でありながら領主での仕事が出来るかどうかを考えたい、とマキシマスは伝えたらしい。だが、ロゼッタの父はロベルトもサブリナも部屋から追い出したものの、全部その通りに出来るものか、とマキシマスの父は言い、良い顔はされず、先ずはロベルトの両親と話し合いたいと言ってきたらしい。
マキシマスが帰宅して、その後ロベルトとサブリナに何を言われるか、ロゼッタは不安ではあった。
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