領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
11 / 49
過去

マキシマスとの出会い

しおりを挟む

 王都からメイドとしてお行儀見習いに行っていたサブリナが任期満了になり帰郷する。ロゼッタも久しぶりに会える妹を迎える為に余念がない。

「サブリナの嫌いな食材はなるべく分からないようにして作ってね!あ、あとサブリナが好きな花に玄関の壺を変えてなかったわよ?間に合う?」
「はい!只今!」

 2年、サブリナとあまり会えていないロゼッタ。休みを貰って帰ってきても、1日ぐらいしか屋敷に居られず頑張ってきた妹を労いたいロゼッタは朝から大忙しだ。

「朝から忙しそうだね、ロゼッタ」
「ロベルト様………サブリナが帰って来るのでその準備をしてるんです」
「手伝うよ」
「ありがとうございます……でも、お気持ちだけで」

 ロベルトは、ロゼッタの婚約者として、領主である父が連れて来た男。だが、ロゼッタはロベルトをあまり気に入った様子も無い、扱いだ。素性もよく分からないのもある。隣街の領主の次男だという事しか父から聞いていないからだ。ロベルトもロゼッタに気に入られようと声を掛けるが、ロゼッタに避けられている気配は感じていた。それもその筈で、ロゼッタは身持ちが堅い。長女で男兄弟が居ないロゼッタは男が苦手だった。侍従であれば物事をはっきり言えるが、同じ侯爵家の立場の男では畏まってしまうのだ。しかもロベルトは兵でもないのに、がっしりとした体格で威圧的だ。屋敷にいる兵よりガタイがいい。それがロゼッタを怖がらせた。

「…………ちっ……」
「………」

 その舌打ちも、ロゼッタは嫌な印象でしかない。気に入られようとしているのかも正直分からなかった。しかし、父や侍従達には気付かれてはいない様で、ロゼッタが侍従達に頼んだ事を率先的にやってくれている。

「悪い方ではないとは思うのだけど……如何しても怖いわ……」
「お嬢様は人見知りですからね……」
「………イーサン…」
「直ぐに慣れますよ……お父上様が決められたお相手ですし」
「……………そうね……」

 だが、ロベルトが屋敷に来て半年、まだ慣れていないロゼッタ。いい加減に慣れていないとおかしい。
 その日の午後、サブリナが見慣れない馬車に乗り帰って来た。しかも、男を連れている。

「お姉様!お久しぶりです!」
「サブリナ!!元気そうで何よりだわ!」
「私は元気よ、肌艶もいいでしょう?ふふふ……皆も変わりないみたいね……でも見慣れない方がみえるけど、お姉様何方?」
「……あ、あの方は………」
「初めまして、サブリナ嬢………ロゼッタの婚約者でロベルトと申します」

 ロゼッタは言いたくなかった、だと。まだ、ロゼッタにその心の準備等出来ていない。しかし、それを聞いたサブリナは満面の笑顔を見せ、隣に居る男の腕を掴む。

「まぁ、おめでとう!お姉様!!これで私達も遠慮は要らないわね!マキシマス!!」
「サブリナ……俺達はまだ結婚話等出ていないが?」
「何を言ってるの?お付き合いしてるんだから、そのつもりでしょう?」
「俺は君が送り届けて欲しい、と言ったから連れて来たんだ。この街には別荘もあるし」

 少々強引にその男は連れて来られた様でウンザリした顔をしている。マキシマスと言われた男はサブリナの腕を引き剥がし、馬車に乗り込もうとしている。

「俺は別荘に行くよ」
「何をそこで話ている。早く入りなさいサブリナ。」
「お父様!!ご紹介したい人が居るの!お姉様も婚約者が居るのなら、お姉様が結婚した後でも構わないわ!私、彼と結婚したいの!彼は王宮魔道士で、公爵の爵位を持ってらっしゃるのよ!」
「ほぉ…………」
「お父様……サブリナも長旅で疲れたでしょ?身体を休めなさい。マキシマス様だって、サブリナと長旅をしてらっしゃるのよ?お疲れの様ですし、また日を改められたら………この街に別荘を持ってらっしゃるんですから、また会えるでしょ?サブリナ……今日は家族水入らずで過ごしたいわ、私」

 明らかにマキシマスの表情が嫌そうで、サブリナの我儘に付き合わされているのがはっきり分かったロゼッタは、マキシマスを返そうとした。
 サブリナの性格から、ロゼッタがそう言うと従う筈だと踏んでの言葉でもある。姉を立て、いい妹、姉思いの妹をしてきたサブリナにとっては姉ロゼッタの言葉は絶対だ。そして、マキシマスにいい顔を見せたい、プライドの高さがある。

「そうね、マキシマスも疲れてるわね……また日を改めて会いましょう?この街を案内したいわ、ね?」
「あぁ、また来るよ」
「待ってるわ、マキシマス」

 サブリナはマキシマスに抱き着いて、仲の良い姿を父に見せたかったのだろう。マキシマスはそれを許し、暫くしてサブリナの肩を押した。

「では、申し訳ありませんが、また日を改めてご挨拶させて頂きます」
「お待ちしておりますぞ、マキシマス殿」

 だが、マキシマスが数日経っても挨拶をしに来る気配も無かった。日に日にサブリナも機嫌が悪くなってはいくが、ロゼッタはサブリナの事を気にしていられない程忙しくなっていく。次期領主としての仕事を父から引き継ぐ為に、動き回っていたからだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バッカじゃないのとつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...