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過去
マキシマスとの出会い
しおりを挟む王都からメイドとしてお行儀見習いに行っていたサブリナが任期満了になり帰郷する。ロゼッタも久しぶりに会える妹を迎える為に余念がない。
「サブリナの嫌いな食材はなるべく分からないようにして作ってね!あ、あとサブリナが好きな花に玄関の壺を変えてなかったわよ?間に合う?」
「はい!只今!」
2年、サブリナとあまり会えていないロゼッタ。休みを貰って帰ってきても、1日ぐらいしか屋敷に居られず頑張ってきた妹を労いたいロゼッタは朝から大忙しだ。
「朝から忙しそうだね、ロゼッタ」
「ロベルト様………サブリナが帰って来るのでその準備をしてるんです」
「手伝うよ」
「ありがとうございます……でも、お気持ちだけで」
ロベルトは、ロゼッタの婚約者として、領主である父が連れて来た男。だが、ロゼッタはロベルトをあまり気に入った様子も無い、客人扱いだ。素性もよく分からないのもある。隣街の領主の次男だという事しか父から聞いていないからだ。ロベルトもロゼッタに気に入られようと声を掛けるが、ロゼッタに避けられている気配は感じていた。それもその筈で、ロゼッタは身持ちが堅い。長女で男兄弟が居ないロゼッタは男が苦手だった。侍従であれば物事をはっきり言えるが、同じ侯爵家の立場の男では畏まってしまうのだ。しかもロベルトは兵でもないのに、がっしりとした体格で威圧的だ。屋敷にいる兵よりガタイがいい。それがロゼッタを怖がらせた。
「…………ちっ……」
「………」
その舌打ちも、ロゼッタは嫌な印象でしかない。気に入られようとしているのかも正直分からなかった。しかし、父や侍従達には気付かれてはいない様で、ロゼッタが侍従達に頼んだ事を率先的にやってくれている。
「悪い方ではないとは思うのだけど……如何しても怖いわ……」
「お嬢様は人見知りですからね……」
「………イーサン…」
「直ぐに慣れますよ……お父上様が決められたお相手ですし」
「……………そうね……」
だが、ロベルトが屋敷に来て半年、まだ慣れていないロゼッタ。いい加減に慣れていないとおかしい。
その日の午後、サブリナが見慣れない馬車に乗り帰って来た。しかも、男を連れている。
「お姉様!お久しぶりです!」
「サブリナ!!元気そうで何よりだわ!」
「私は元気よ、肌艶もいいでしょう?ふふふ……皆も変わりないみたいね……でも見慣れない方がみえるけど、お姉様何方?」
「……あ、あの方は………」
「初めまして、サブリナ嬢………ロゼッタの婚約者でロベルトと申します」
ロゼッタは言いたくなかった、婚約者だと。まだ、ロゼッタにその心の準備等出来ていない。しかし、それを聞いたサブリナは満面の笑顔を見せ、隣に居る男の腕を掴む。
「まぁ、おめでとう!お姉様!!これで私達も遠慮は要らないわね!マキシマス!!」
「サブリナ……俺達はまだ結婚話等出ていないが?」
「何を言ってるの?お付き合いしてるんだから、そのつもりでしょう?」
「俺は君が送り届けて欲しい、と言ったから連れて来たんだ。この街には別荘もあるし」
少々強引にその男は連れて来られた様でウンザリした顔をしている。マキシマスと言われた男はサブリナの腕を引き剥がし、馬車に乗り込もうとしている。
「俺は別荘に行くよ」
「何をそこで話ている。早く入りなさいサブリナ。」
「お父様!!ご紹介したい人が居るの!お姉様も婚約者が居るのなら、お姉様が結婚した後でも構わないわ!私、彼と結婚したいの!彼は王宮魔道士で、公爵の爵位を持ってらっしゃるのよ!」
「ほぉ…………」
「お父様……サブリナも長旅で疲れたでしょ?身体を休めなさい。マキシマス様だって、サブリナと長旅をしてらっしゃるのよ?お疲れの様ですし、また日を改められたら………この街に別荘を持ってらっしゃるんですから、また会えるでしょ?サブリナ……今日は家族水入らずで過ごしたいわ、私」
明らかにマキシマスの表情が嫌そうで、サブリナの我儘に付き合わされているのがはっきり分かったロゼッタは、マキシマスを返そうとした。
サブリナの性格から、ロゼッタがそう言うと従う筈だと踏んでの言葉でもある。姉を立て、いい妹、姉思いの妹をしてきたサブリナにとっては姉ロゼッタの言葉は絶対だ。そして、マキシマスにいい顔を見せたい、プライドの高さがある。
「そうね、マキシマスも疲れてるわね……また日を改めて会いましょう?この街を案内したいわ、ね?」
「あぁ、また来るよ」
「待ってるわ、マキシマス」
サブリナはマキシマスに抱き着いて、仲の良い姿を父に見せたかったのだろう。マキシマスはそれを許し、暫くしてサブリナの肩を押した。
「では、申し訳ありませんが、また日を改めてご挨拶させて頂きます」
「お待ちしておりますぞ、マキシマス殿」
だが、マキシマスが数日経っても挨拶をしに来る気配も無かった。日に日にサブリナも機嫌が悪くなってはいくが、ロゼッタはサブリナの事を気にしていられない程忙しくなっていく。次期領主としての仕事を父から引き継ぐ為に、動き回っていたからだった。
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