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現在
遺言状
しおりを挟む「よし、これでいいわ……不備あるかしら?」
「大丈夫かと」
書斎の机でイーサンと遺言と相続に関する書類を書き直したロゼッタ。
「ねぇ、イーサン………何故お父様は、私の婚約者にロベルトを選んだのかしら……知ってる?」
「………いえ、よく分からないのです。視察に行かれた際、賊に襲われた所を助けられたというぐらいで……」
「それで感謝してロベルトを婚約者に?馬鹿げてる!」
「そういう事でも、前領主様はロゼッタ様の行く末をご心配されたのでしょう。早く決めておこう、と」
「……………本当、馬鹿げてるわ……そんな安直な考えで、私はどれだけ暴行を受ければいいの?お父様は天国か地獄で見てるのかしら………」
「ロゼッタ様………最愛の娘に危害を加える者だと知っていれば、決してその様に考えません」
「…………そうね………そうであって欲しいわ」
ガチャ。
いきなり書斎の扉が開く。
「「!!」」
「何だ、帰ったなら帰って来た、て知らせろよ、ロゼッタ」
「ここに入ってくる権利は貴方にないわ、ロベルト……書斎をこんなに荒らして、何を探している訳?昨夜書いた離婚届も、貴方持っていったようだけど、お生憎様。まだここにあるのよ、新しい物が」
「ふん、そんな物は俺が書かなかったら済む事だ…………子供も産めない女の言い分等、裁判にしても、俺の言い分が有利だろうしな……お前を追い出して、サブリナの良き夫となってやるさ………実質、サブリナの腹ん中は俺の子供だからな」
「よくそんな悪知恵が働くわね、いいから出てってくれないかしら?貴方はこの書斎に居る権利は領主の私は与えてないの」
ロゼッタもイーサンもロベルトを信用等していない。居れば、ロゼッタの仕事が出来ないのだ。
「そういえば、お前昨夜何処に居た?」
「何処に居たって関係ないでしょ?貴方は夜帰って来ない日なんて幾らでもあったのよ?何なら、貴方と関係した娼館の女達に証明させましょうか?彼女達との間に出来た子供達の中絶手術の費用、全て私から出したのよ?情けないわね」
「………………ちっ!お前がそもそも、俺に仕事を与えないからだろ!」
「それでも、私は貴方にお小遣いは与えてましたよ?そのお金で娼館通いをしようが、私は文句を言った事等無いわ………だって、貴方との閨……苦痛だもの………お相手した女達はかわいそうね」
「………そういうお前はマキシマスとは身体の相性合ってたのかよ」
「……………は?」
「恍けるな!お前はマキシマスに抱かれたんだろう!3年振りに!」
「何を言ってるの?節操の無い貴方と一緒にしないで!」
書斎から追い出したいのに、若いロベルトの力と初老のイーサンの力では、イーサンが分が悪く、力づくで書斎から出せない。ロゼッタは、兵を呼ぶ為に鈴を探した。だが、何処にも見当たらない。ロベルトに荒らされた書斎がまだ片付けられていないのだ。目線を床に落として、鈴を探す。
「節操の無い夫にしたのはお前だろう!」
「だったら、まともに少しはなられたらいかが?暴力を振るい、盗っ人のような事をする夫なんて、私の夫に要らないの!」
「このクソ女!!」
「ロゼッタ様!!」
バキッ!!
と、肉と肉がぶつかり合う音がする。ロゼッタに掴みかかろうとしたロベルトの前に庇う様にイーサンが立ち塞がったのだ。平手打ちをされたイーサン。
「イーサン!!………大丈夫!?」
「邪魔しやがって」
「誰かっ!!ロベルトを連れ出して!!あと医者を呼んで!!」
鈴が無く、大声で叫ぶロゼッタ。その声に兵達はただならぬ事だと駆け付けた。
「ロゼッタ様!!」
「ロベルトをこの部屋から追い出して!!」
本当なら、屋敷から追い出してやりたいのだが、離婚するにもロゼッタが優位でなければならないのを我慢するしかなかった。
「ロベルト様、参りましょう」
「煩い!!誰に言ってやがる!!」
「ロベルト、いいかしら?貴方は領主ではないのよ?ただの領主の配偶者。領主の私の命令は聞くけど、ただの配偶者に従うかしら?信用されない人の事等ね。」
「ロゼッタ!絶対に離婚はしないからな!!」
兵達に引き摺られながら、ロベルトは去っていく。
「離せ!」
「ロベルト様には従う義理はありません」
「ロゼッタ様に対する暴挙、目に余ります。加えて執事のイーサン様に迄暴力とは」
「あ、あれはロゼッタがやったんだ!!」
「ロゼッタ様がイーサン様に感謝はすれど、暴力なんて振るいませんよ」
「もう少し嘘がお得意だったら、もう少しこの屋敷に留められたでしょうに」
兵によってロベルトの私室に入れられた、ロベルト。屋敷の外へ追い出す事は指示は無かった為、兵達はロゼッタの指示を待つ。それ迄はロベルトが屋敷から出ないように、扉の前で待機をする。鍛えてある兵達が束になれば、ロベルトでも倒されてしまう。ロベルトはロゼッタが領主として治める領土の隣街の領主の次男。大した力量もなく才もなく、剣に関しては少し齧った程度。だが、筋肉は鍛えていた。それは自分が強い男と誇示したいが為に。それをロゼッタに暴力を振るうという行為に発展していったのだ。多勢に無勢で呆気なく捕まるのは、戦いに慣れた戦法を知らないだけで全て力任せで済ます男だった。
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