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しおりを挟む翌朝、一緒に朝食を、とマキシマスから誘いを受けたロゼッタ。マキシマスの服装は王宮魔道士の服装で、身分も高そうだ。しかも爵位は公爵という立場。何故そんな高位のマキシマスが、ロゼッタと知り合いになるのか、一晩考えても分からない。
「おはようございます、マキシマス様」
「…………おはよう……よく眠れたか?ロゼッタ」
「……はい……独身時代の私が使っていた部屋の様で懐かしさで落ち着きました」
「当然だ、アレはロゼッタがこの屋敷に入れた物で、君が使っていた物だからな」
「…………え……道理で屋敷の中に無かった筈だわ……記憶が無くなっている間に、処分していたとばかり………」
「………仕方ない……記憶が無くなってしまったのは調べなければならないが、ロベルトとの結婚を嫌がって、家出同然で運んだものだからな」
悲しそうな表情は全く昨日と変わらない。憂いのある静かな口調だが、内に秘めた怒りも感じるマキシマス。
「あの…………如何して私を助けてくれたんですか?」
「助けたとは思ってない………助けが必要な時に、俺は君の側に居なかった」
「助けが必要な時………?」
「……………」
「!!」
マキシマスが益々暗い表情になる。怒りがピリピリと空気で伝わってくる。
「………ふぅ……駄目だな……俺なんかより、ロゼッタの方が辛いだろうに……怖がらせるつもりは無かった、すまない」
「怖い………とかでは………私こそ、申し訳ありません……貴方の事の記憶が無くて……」
「………敬語は要らない………名前も呼び捨てでいい……3年前のロゼッタは………俺の中に居るロゼッタはそんな口調ではないからな」
「あ、あの……私達、どういう関係だったんでしょう?」
「…………結婚を誓い合った……」
「…………わ、私……3年以上前から、ロベルトと婚約して………」
「そうだな………だが、君はロベルトを嫌い、俺を選んだ………でなければ………いや、何でもない……」
「…………そうだったんですね………今すぐは無理ですが、妹に子供が産まれたら、離婚に向けて動きますから……」
ガタッ!!
「サブリナに子供だと?」
食事中、マキシマスは驚いた表情で、立ち上がる。マキシマスはサブリナを知っている様子だ。
「マキシマス様?妹をご存知何ですか?」
「サブリナは今何処に?」
「屋敷です……心の病で外出も出来なくて……私を見ても分からないみたいで………」
「…………心の病だと?………あり得ない……」
「どうしてそんなあり得ない、なんて……」
3年間、サブリナの病を治そうと、色々な医者に見せてきたロゼッタ。だが誰もが原因が分からず、心の病だと診断をした。外面上、留学としている為、頻繁に屋敷に医者を呼ぶのも憚られ、この1年ぐらいは医者を呼ばなくなったのだが、最近サブリナの生理が止まり、調べたら妊娠している、という。誤診だとは思えない。心の病が嘘であれば医者は何故嘘を付く必要があるのか、と思ってしまう。
「サブリナはそんな軟な女じゃないからだ」
「妹の何をご存知で言うんですか!?妹は、私をいつも気遣い、立ててくれた優しい妹です!」
「…………だとしたら大層な役者だな、サブリナは…………覚えてないロゼッタに言って信じるかは知らん、だがこれだけは言っておく………サブリナはロゼッタを立てていたのは、領主になりたくなかったからだ。ロゼッタがロベルトと結婚しなければ、サブリナは領主にさせられる可能性があるのだしな……ロゼッタはその時、既に俺と将来を誓い合っていた………サブリナは俺に惚れていたし、君の記憶が無い間からは知らないが、俺が君の前から居なくならなければならない状況を作ったのはサブリナとロベルトの仕業だ」
「………え………」
「………混乱するから、また話せる時に話す。俺は王都に行かなければならないからな………あと、ロゼッタ」
「は、はい………」
食事を終わらせると、マキシマスはロゼッタに魔具を手渡す。
「肌見放さず持っていろ……領主の仕事もあるだろうから、ここに居てくれ、とは言えない。だからこの魔具でロゼッタの屋敷の書斎とこの屋敷との転移魔具を作っておいた。念じるだけで使える。ロベルトに襲われそうになった時も、逃げる時に使え。この屋敷に入ればロベルトは入れない。」
「……………ありがとうございます」
ロゼッタの意思も尊重し、領主としての責務も、マキシマスは理解している様だった。ブレスレットタイプの魔具を手首に付けられ、手を握られるロゼッタ。
「気を付けてくれ………これを使う時は俺にも分かる。逃げ惑うような使い方をしていたら駆け付けるから」
「…………マキシマス様………感謝します」
「……………行ってくる」
マキシマスはまた魔法を使ったのだろう、扉を出る事なく、姿を消した。
「………私も仕事しなければ……」
ロゼッタも食事を終えたので、マキシマスの侍従達に礼を言い、使わせて貰った部屋に戻った。
「領主印以外はここに置いておいても良さそうね………印も肌見放さず持っておかなきゃ…………絶対にロベルトには渡さない」
ブレスレットに念じれば移転出来ると言ったマキシマス。ロゼッタはその通りに念じた。
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