私を殺す人は私が大好きな人【完結】

Lynx🐈‍⬛

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プロローグ

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「はぁ………あっ……」

 呼吸も満足に出来ないまま、水音が響き、甘怠い匂いが充満する部屋で、ベッドを軋ませながら組敷かれている女。顔を枕に埋め、裸でシーツを握り締め、後ろから腰をがっちり捕まれながら、男の杭を激しく打ち付けられていた。

「瑠璃…………瑠璃っ」
(…………こ、殺さ………なきゃ……この男………を……)

 男と繋がっている中で、じゅぶ、じゅぶっ、と杭を美味しそうに咥えている秘唇は、女の中で留まらない蜜を溢れさせ、男の杭を律動される度に絡めて離さない。
 気持ち良さそうに、女の身体は啼き、男の熱に酔っているのに、頭の中は冷静で居ようと必死だった。

「くっ………出るっ!」
「!!」

 男が1番隙を見せる瞬間だ。女は枕元に隠していたナイフを取り出し、振り向きざまに男の心臓に一突きした。

「ゔっ!!」

 まだ、繋がっていて女の中に注がれている白濁を受け取っていても、女の表情は冷静だった。次第に力尽きた男は、胸から血、杭からだらし無く飛沫を出す杭。セックス中に殺された男を警察が調べれば、女の体液等で直ぐに身元は割れるのは女も分かっている。

「……………天国ヘブンに行けたかしら?………つまらないセックスだったわ……悪いけど、シャワー浴びたら火葬してあげるから待っててね」

 女は、悪びれもせずバスルームに行くが、手持ちのバックから取り出した手袋を嵌め、身体を清めると証拠隠滅するかの様に、排水溝に溜まった髪を取り除き、男の元に投げた。裸のまま、男の胸に刺さるナイフを抉る様に回し抜き、怨恨に見せ掛けた死体の男にペットボトルに入った液体を振り掛け、女は自分が着てきた服を着ると、窓を開けて逃げ場を確保する。タバコに火を着けた女は吸う事もないまま、男に弔うかの様に投げ捨てると、窓からよじ登り屋上から消えた。
 その数分後、女が居たマンションから爆発音が夜空に轟く。その音を確認した女はスマホを取り出し、メールを開いた。

『任務完了』

 ピッピッ。

『ご苦労、次の任務迄、潜伏しろ』
「…………」

 女は、ビルの壁の隙間を利用し上手く地上に降りて行くと、近くに停めてあったのか、車に乗り闇夜に消えていった。
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