37 / 37
エピローグ
しおりを挟む結婚式当日。
茉穂の準備を終えて、彬良が覗きに控室にやって来る。
「茉穂、綺麗!」
「本当!暫く見ない内にまた綺麗になったんじゃない?」
茉穂は結局、悩んだ末、転職をした。
彬良を支えるには同じ職場に居たい、というのが1番の理由だ。
前会社の友人である英美達が、スマートフォン片手に、写真撮影が始まっていた。
「茉穂」
「彬良…………どう?」
「っ!………綺麗過ぎて、襲いたいっ!」
「村雨君、肉食なんだね」
英美が、茉穂とのイチャ付きを皮肉りつつ、2人を撮っている。
「高橋は相変わらず合コン三昧か?」
「悪かったわね」
「失礼致します、支配人にご友人と申される方々の面会が」
「通してくれ」
すっかり板に着いた役職と素振りに、久々に見た元同僚達は、目を丸くしている。
「本当、もっと早く目付けとけば、今頃ウエディングドレス着て村雨君の横に居たかも……」
「本当だね………」
「あり得んな、茉穂以外の女は」
「……………あ、そ」
「よぉ、彬良おめでとうさん」
「彬良君、茉穂さんおめでとう」
航と羽美が入室して来る。羽美は産まれたばかりの息子、翔也を抱いていた。
「航に羽美……忙しいのにありがとうな」
「店は今日は臨時休業してるさ……裕司と律也ももう来るぜ」
「茉穂、茉穂!誰誰?」
「彬良の友達の航さんに、妹の羽美さん」
「合コンセッティングして!」
茉穂の元同僚達は、航に興味を示しているが、暫くしてもう3人入室来ると、また目移りした様子。
「羽美、翔也を抱いててやるから、茉穂ちゃんと写真撮りな」
「ありがとう、律也さん………茉穂さん、紗耶香さん、写真撮りましょ」
「あ、撮る撮る!」
羽美と遅れて入ってきた紗耶香。そして律也と裕司。
入室して来た男達は、パートナー付と知り、英美達は残念そうだ。
「彬良がまさかこのホテルの後継者になる決心付けたとはな」
裕司がしみじみ呟く。
「俺はかなり驚いたよ……まさかたまにパーティーで利用していたホテルが彬良の父親が経営しているホテルだとはね」
「俺も驚いたさ……まさか律也が速水物産の常務とはな」
「仕事面で世話になるかもな」
「そうだな、その時は頼むぜ」
律也とは、アダルトグッズの事で意気投合し、懇意のある会社だと知ったのだ。
「茉穂ちゃんも、転職してプランナー部門に入ったんだろ?我社のパーティーの時、茉穂ちゃんにも頼む事あるかもな」
「夫婦揃って、世話させてもらうさ……羽美には子育ての先輩としてアドバイスも貰わねぇと」
「茉穂ちゃん、おめでたなのか?」
「いや、まだ………新婚旅行後に仕込む」
「俺は新婚旅行中に仕込んだぞ」
「それが出来ればな………我慢しねぇがよ」
「めでたい場所で止めやがれ!鬼畜野郎め!」
この2人が揃うと、いつも性話になる様で、その都度航が割って入る。
「航、お前だって最近女出来たって聞いたぞ?」
「俺はお前等の様なスケベ丸出しじゃねぇよ……それ言うなら、裕司の方が先に結婚するだろ、紗耶香ちゃんも待ってるだろうし」
「俺?………まだ社長のOK出ねぇからな、もう少し先だろ」
裕司は数カ月後に紗耶香との結婚が決まるのだが、この時点ではまだ誰も知らない。
一方の茉穂サイドは、卑猥な言葉が飛び交う彬良と律也の会話で、茉穂と羽美も困り顔だ。
「相変わらずだわ、律也さん」
「羽美さんも大変ね」
「彬良君がまた変な物をくれたみたいだから……」
「………あぁ、アレ………私は貰ってくれて助かっちゃった」
アレとはアダルトグッズの事だ。
同じ様に鬼畜な夫を持つ妻達としては、少々遠慮をしてもらいたいと思っている同じ見解の茉穂と羽美。
「大変よね……彬良さん迄、律也さんの趣味と気が合うとは」
「紗耶香さん、知ってたの?律也さんの趣味」
茉穂が、紗耶香に聞いた。
「裕司が面白そうに言ってたのよ」
「なるほど」
紗耶香は隠し通す事に決めているのだ。本当は、調べて律也の趣味を知ったのだが、彬良がアダルトグッズを律也に譲った事で、茉穂も羽美もその会話が出来るから、裕司を介して聞いたと言えば納得する。
「紗耶香さんはそういう事はないの?」
「…………私達、プラトニックな関係が長かったから、あんまりそういう事に踏み込めてないの………本当に最近……」
「プラトニックだったんだ、裕司さんと紗耶香さん」
茉穂は意外そうに紗耶香を見ていた。
「でも、私達はそれでいいの……大事にしてもらってるのよく分かるから」
納得している紗耶香の顔を見たら、本当にそれぞれの恋愛の形があるのだと茉穂は思う。
コンコン。
「式のお時間になりますので、ご準備お願い致します」
スタッフが知らせに来る。
控室に集まっていた友人達が、宴場へと向かう中、茉穂と彬良は入場時間迄待機だ。
2人きりになり、お互い何故か照れている。
「茉穂………めっちゃ似合ってる……綺麗だ」
「彬良も素敵」
お互いに見つめ合っていると、同時に口を開いた。
「「愛してる………!」」
同じ言葉を紡ぎ、同じタイミングで笑い合ったのは、2人だけが知る。
˖*꒰ .. 𝐻𝒶𝓅𝓅𝓎 𝐸𝓃𝒹.. ꒱*˖
※この後、【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開していきます
10
お気に入りに追加
117
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】プラトニックの恋が突然実ったら
Lynx🐈⬛
恋愛
白河 紗耶香は老舗酒造会社の跡取りとして、育てられた深層の令嬢だった。
だが、闇の中で育てられた、悲しく寂しい女。
跡取りとして、両親に育てられたのではなく、祖父に厳しく育てられ、両親からの愛情を感じた事がなかったのだ。
ある日突然、祖父が『ある男と結婚しろ』と言い出し、男を知らない紗耶香は戸惑いながら、近付く。
陰ながら、紗耶香の傍で紗耶香のお目付け役だった小松 裕司への思いを心の気持ちに鍵を厳重に締め、紗耶香は『ある男』森本 律也を好きな態度を取るのだが……
※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】
と、【惚れた男は陰気で根暗な同僚でした】のキャラが登場します。
少し話は重なる所がありますが、主人公が違うので視点も変わります。【Mにされた〜】の完結後がメインストーリーとなりまして、序盤が重なります。
※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
※プラトニックの話なのでHシーンは少ないですが、♡がある話はHシーンです。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
うちの弟がかわいすぎてヤバい無理!
はちみつ電車
恋愛
3歳の時、弟ができた。
大学生に成長した今も弟はめっちゃくちゃかわいい。
未だに思春期を引きずって対応は超塩。
それでも、弟が世界で一番かわいい。
彼氏より弟。
そんな私が会社の人気者の年上男性とわずかに接点を持ったのをきっかけに、どんどん惹かれてしまう。
けれど、彼はかわいがってくれる年下の先輩が好きな人。好きになってはいけない.......。
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる