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茉穂の選択
しおりを挟む茉穂は暫く動けなかった。
彬良の熱を受け取る事3度、汚れた身体を彬良に拭いて貰い、今はリビングのソファで、彬良の膝枕で微睡んでいる。
―――排卵日、確認しねぇとな………それに合わせて式も日取り考えねぇと
茉穂の髪を漉きながら、タブレット端末で予定を確認する彬良。
仕事の調整もしなければならないのだ。
―――早い方がいいんだが……式場は絶対にホテル1択になるだろうしなぁ
「ん……」
「茉穂?」
「…………寝てたんだ、私……」
「無理させたな」
「…………本当だよ」
茉穂は身体を起こそうとするが、彬良に抑えられる。
「そのまま、まだ身体休めとけ」
「………へへ……彬良の膝枕、ゴツゴツしてる」
「痛いか?クッション敷くか?」
「いい、このままで………撫でられて気持ちいい……」
「なら、暫くこうしてろ」
「うん」
彬良が茉穂の顔の前にタブレット端末を見せる。
「なぁ、結婚式なんだが如何しても場所は1択になっちまうんだ……その代わり、茉穂が好きな様にしていいぜ」
「結婚式?挙げる暇ある?」
「暇無くても挙げなきゃならねぇな……茉穂の親父さんの立場や、俺の家の都合上……次期CEOになる俺の披露目も兼ねて、親父がホテルで挙げろとよ」
「…………私達の式なのに?」
「招待客来ても、プランは俺達の好きにさせてもらうさ……披露宴はちょっと指図されるかもだが、結婚式や二次会するならそっちは茉穂が考えていいと思ってる………得意だろ?俺達」
「…………だね」
「全部、任せない様にはするが、会社で考えてもらってもいい」
「………お金取りますよ?次期CEOが勤めるホテルに」
クスクスと楽しそうに彬良を揶揄う。
「ホテルのブライダル部門もこの際一層してぇんだよな……イベント的要素が乏しいんだよ………で、もし茉穂が会社辞めていい、て言うなら、そっち任せてもいいかな、て思ってる」
「…………え?」
「結婚式が上手くいけば、茉穂の実績や自信にもなるだろ?プランナーの知識も必要になるが、茉穂が俺の嫁さんとして認められたら、俺も嬉しい………転職するなら席作るぜ………考えといてくれないか?」
「…………やってみたい」
「即答しなくてもいいんだぞ?」
タブレット端末を彬良から奪う茉穂。丁度ブライダル部門のページを開いていたからだ。
「結婚式のプランを私が考えていいんでしょ?転職するしない別にして」
「あぁ、それは任せる」
「…………とりあえず、それを全力でやってみる!」
「…………で、だな………式をいつにするか、なんだが」
ひょい、とタブレット端末を茉穂から奪い返すと、彬良は予約空白欄を見せる。
「あんまり、先にしたくねぇんだよ……結婚を期に、各ホテルへ挨拶回りも兼ねて、新婚旅行行け、と言われてるし、そうするとおれが茉穂の妊娠させちまいそうだから、新婚旅行期間中、妊娠なんて事になった時困るかもしれない………子供出来ていい、て言ったがソレ考えてなくてよ」
「新婚旅行、てどれくらい見てるの?」
「各ホテル最低、4日か5日は偵察や監査含めて見てこい、て言われたから移動も考えて1ヶ月は………」
「………日本3つ、海外で5つ………だよね……か、かなり豪勢な新婚旅行になりそ……」
「仕事込みなのが嫌だがな………絶対にイチャつけねぇぞ?………無理矢理時間作るつもりだが」
「………私、拙い英語しか出来ないよ?」
「俺もだよ………てか危うい英語だがな」
仕事に託つけて新婚旅行に行かせてくれる辺り、彬良の父の原は考えての事だろうが、ハードそうな日程になりそうだった。
「腹、減ったな……何か食いに行くか?」
「私、作ろうか」
「結婚初日で、主婦らしい事させたくねぇぞ俺は」
「別に構わないけど、私」
「…………宅配頼もうぜ……背徳的情事しながら」
「スケベな事は却下………宅配もいいけど、冷蔵庫の料理ストックまだあるんだし、それつまみでいいじゃない………私、まだ腰痛いから、出歩きたくないもん」
「そういやストックあったな…………よし、待ってろ……レンチンしてくる」
膝枕の代わりにクッションを茉穂の頭の下に敷き、彬良はキッチンに立つ。
―――充分、背徳的なのよ……パンツ1枚のマッチョと私は全裸なんだから……今日はこのまま、ご飯食べたら寝たいわ……
だが、この後茉穂が望むものとはならなかった。食事後、再び貪られ、翌日昼頃迄、茉穂は起き上がる事が出来なかった。
彬良は仕事に元気に行ったのに、茉穂は腰を擦りながら、前日の情事の後始末をしたのである。
―――絶対に、ベッド以外でセックスなんてしないんだから!………もう!染み取れるのかしら、これ!
リビングの絨毯や窓ガラスに染み付いた、残骸を茉穂は必死に取る姿は、セレブになった人妻の最初の家事だったのが如何にも滑稽であった。
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